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魔法少女リリカルなのはEine Familie 第八話 『響け終焉の笛』(1)

筆が思ったように進まず、難渋しております。
昨日は2時間で1行(40字)しか書けなかった。
結構深刻な事態かもしれない。
でもまあ何とかなるか。
楽観パワーでいきます。

そんなわけで――。

魔法少女リリカルなのはEine Familie 第八話 『響け終焉の笛』(1)を更新。
続きの更新は、(2)が明日、(3)が3月11日、
(4)が3月12日、(5)が3月14日、(6)が3月15日。
を予定しております。

魔法少女リリカルなのはEine Familie(アイネファミーリエ)も終盤戦です。
八神家のみんなが精一杯にがんばってくれるので、ぜひ見てやってください。
よろしくお願いします。



 さまざまな色の絵の具が混交したような、吐き気をもよおす穢れた空模様。
 封鎖領域の影響でまだらに染まった虚空に、凄烈な金属音が立て続けに鳴り響く。
 シグナムと黒騎士。ふたりの魔剣士の鍔迫り合いは、激化の一途を辿っていた。
 互いに必殺の一撃を交錯させていくたびに、火花が瀑布の飛沫のごとく振りまかれる。対立する両者から放射される闘気と殺気が、その火花をより凄惨に煌き躍らせる。
 命の駆け引きをしているとは思えない、あまりにも華麗にすぎる剣戟の情景……それはさながら完成度の高い殺陣か、あるいは一種の芸術作品にも等しい幻想さがあった。

「……なるほど。まさかここまで匹儔(ひっちゅう)しているとは思わなかった」

 乱れ迸る剣風の轟きのなか、シグナムは声音にわずかな感心をのせて呟いていた。
 シグナムと、彼女と同じ容姿をした黒騎士の動きには一切の無駄がない。まるで精密さを競うために作られた機械のように正確無比である。つけ入る隙がまったく見当たらない。
 だがシグナムの賞賛の言葉は、敵の剣術を褒め称えたものではなかった。

「体捌きから技の冴え、さらにはレヴァンティンの性能まで完璧に模倣している。やれやれ、ここまで見事に真似されると、屈辱よりも賛嘆に値する。なかなか困ったものだ」

 シグナムは溜息をつきながら、剣戟を挟んだ向こう側にいる黒騎士に目をやる。
 肌と甲冑の色こそ違うものの、対峙する黒騎士は鏡に映った自分自身を見るようだった。
 手に執るレヴァンティンも、刀身が闇色であるという以外に相違点はない。
 刻々と変転する黒い剣光の軌跡に既知感を覚えつつ、シグナムはそれらすべてを相手とまったく同じ太刀筋で迎撃していく。やがて、ひときわ大きな金音が鏘々(しょうしょう)と鳴り響き……次の瞬間には、シグナムと黒騎士は後ろに跳び退いていた。やはり同じタイミングである。

「おのれの敵は、おのれ自身か。まさに二人といない強敵というわけだ」

 そう言ったあとで、シグナムは自嘲してしまう。くだらない冗談を呟いてしまった。
 が、シグナムはすぐに気を取りなおす。殺伐とした戦場の空気で肺胞を満たすと、シグナムは剣の構えをあらためる。両手で握るレヴァンティンの柄を顔の横で静止させ、曇りなき白刃の切っ先は前方の黒騎士に。さながら鋭い角で威嚇する牡牛のごとき構えである。
 一方、そのシグナムの挙措に連動するかのように、黒騎士も同様の構えをとった。
 無表情にして無感情。相手にも自分にも冷徹で、ただおのれに課せられた使命だけを忠実に貫徹する無謬(むびゅう)のプログラム。いまでは断片的にしか思い出せない、はやてに出会う前の自分の姿を、シグナムは相対する黒騎士に見出してしまう。苦々しい思いに顔をしかめる。
 ――と、なんの予備動作もなく、黒騎士が漆黒の迅雷と化して襲いかかってきた。
 ふたたび激突する実像と虚像。振り下ろされた暗色の魔剣を、シグナムは渾身の力で受け止める。強烈な斬撃の圧力に、レヴァンティンを持つ烈火の将の両腕がたわむ。

「おまえがどんな外見をしていようと、私には関係ないし気にもしていない。だが――」

 言いさしたシグナムの双眼(そうがん)鋭気(えいき)が満ちる。レヴァンティンを執る両腕に力を込めた。

「だがその姿で、主はやてに弓を引くことだけは断じて赦さん!」

 気勢一喝。シグナムは強引に刃を薙いで黒騎士を弾き飛ばす。
 ――ここで一気に勝負を決める。シグナムは間髪入れず飛び出し、体勢を崩した黒騎士に追撃の刃を送りこむ。下段から掬い上げたレヴァンティンの剣閃が黒騎士を強襲する。
 しかし黒騎士は、弾かれた勢いを利用したとんぼ返りで、シグナムの斬撃をなんなく避けてしまう。曲芸めいた回避に瞠目するシグナムをよそに、今度は黒騎士が突進してきた。
 怨霊の叫喚じみた唸りをあげながら、黒騎士のレヴァンティンが剣光の網目を紡ぐ。
 シグナムの視界を瞬く間に埋めつくす斬線の群れ。呑気に驚愕している場合ではない。
 荒ぶる刃の旋風(つむじ)を迎撃するため、シグナムは猛然とレヴァンティンを振るう。
 咬み合うふたつの剣戟がさんざめき、灼熱の火花が狂ったように乱れ飛ぶ。まるで時間が巻き戻ったかのような緒戦の再演である。が、すべてが同じ光景ではなかった。

「どういうことだ? 貴様、私の能力をそのままコピーした傀儡ではないのか?」

 おそらく闇の書の闇が行使した、擬似守護騎士システムの副次効果だろう。黒騎士の身体能力と魔力が、シグナムのそれを上回りはじめたのだ。不意打ちめいた現象だった。
 二撃、三撃……周到にして豪快な剣捌きでもって、黒騎士はシグナムを攻め立てる。抑えるシグナムは防戦一方だった。もはや黒騎士の攻撃力と速力は、シグナムのそれを完全に凌駕している。剣を繰る両者の技量に差がない以上、勝敗を左右するのは身体能力と魔力の備蓄だろう。が、シグナムはその両方とも負けているのだ。この劣勢は理の当然といえた。
 ――このままでは敗北は必至だ。烈火の将の額に、いつしか焦燥の汗が滲みはじめる。
 だが、俄然勢いを増す黒騎士の猛連撃を前に、シグナムの瞳に敗色を認める気配はない。絶望も諦観もない。ただなにかを信じて待っているような不断の意思の光だけが、ある。
 突如、シグナムは防御を崩してしまう。黒騎士の猛攻に応じきれなくなったのだ。
 たまらずシグナムは後ろによろめく。ついに無防備な姿を晒したシグナムの致命的な隙を、彼女と同等の技量を持つ黒騎士が見逃すはずがない。黒騎士が獣のような声で(たけ)る。
 漆黒の魔剣を大上段に掲げ上げ、黒騎士がシグナムに向けて突進してきた。その動きに呼応するかのように、黒騎士のレヴァンティンが毒々しい紫檀の炎を噴き上げる。
 魔力光に反映される炎の色こそ違うものの、黒騎士が発現させた魔法は間違いなく、シグナムがもっとも得意とし、もっとも信頼する必殺奥義――紫電一閃に他ならない。
 絶体絶命のシグナム。だがその表情は悠揚迫らぬ。彼女はこの刹那を待っていたのだ。

「レヴァンティン、鞘をッ!」

 空の左手にレヴァンティンの鞘が現出したのと、シグナムの脳天に炎熱の凶刃が振り下ろされたのは、ほとんど同時だった。神速で交錯した攻防が、場に一瞬の静寂をもたらす。

「……紫電一閃は私の魔法だ。いくら速度と威力が勝っていようとも、馴染みのある太刀筋ならば見切るのは難しくない。――私の剣技を模倣したのは失敗だったな」

 はたして黒騎士の紫電一閃は、シグナムに届いていなかった。
 鯉口を向けて突き出したシグナムの左手の鞘に、黒騎士のレヴァンティンが滑り入っていたからである。つまり黒騎士の紫電一閃を、シグナムは手に持つ鞘に納めて封殺したのだ。
 いくら斬線の軌道を見切っていたとはいえ、にわかには信じがたい絶技である。およそ人間技ではありえない。まさに至妙なる古代ベルカの神業であった。

「――レヴァンティン、カートリッジロード」
『Explosion』

 おもむろに呟いたシグナムの声に感応し、レヴァンティンの剣身が轟然と燃えさかる炎をまとう。黒騎士の禍々しい紫檀の炎とは対照的な、まるで暁光のように清澄な紅蓮の輝き。
 虚空を紅く照らす右手の(ほむら)を顔の横で水平に構えると、烈火の将は凛然と宣言する。

「これで終わりだ。我が炎に焼かれて、闇に還るがいい。――紫電一閃!」

 極限まで引き絞った矢を射るがごとく、シグナムは迅疾(じんしつ)剣尖(けんせん)を突き入れた。
 真横に迸った熱旋風が空間を切り裂き、左胸に直撃を受けた黒騎士の総身が(くれない)の炎に侵食される。甲冑が焼け溶け、骨肉が灰燼と化し、不浄の魔力が蒸発するのは一瞬だった。
 あれほどの強敵が辿る末路にしては、それは呆気ない最後であったのかもしれない。


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イヒダリ彰人
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男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
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