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Northern Lightsを読みました。

言わずと知れたケインさんの、なのは長編SSです。
去年の冬コミで頒布された『Northern Cross』の前日譚らしいので、
さっそく読んでみました。

ネタバレを気にせず書いていきたいので、これから先は隠しておきます。
ネタバレを気にしない方、あるいはすでに読了された方は、お進みください。
少しでもためらった人は……止めておいたほうが無難かもしれない。

では、どうぞ。


ケイン・ディルフォードという作家さんはスゴイ。
この評価は文章力や描写力のことを言っているわけではありません。
ケインさんの耐久力のことを言っています。

どういう意味かと言うと――

掌編や短編と違って、長編は書き続けるのに凄まじい労力を必要とします。
あ、べつに掌編や短編をバカにしているわけじゃありません。
ただ掌編や短編は勢いのままに、それこそ鉄を熱いうちに叩くことができます。
これはいわゆる情熱とかいうヤツです。
二次創作は、たぶん一次創作もそうだと思うのですが、
書きはじめて間もないうちは、結構スラスラ書けるものです。
でもしばらくすると、とたんに熱が醒めていきます。
原作が好きであることに変わりはない。でも書けない。書く気が起こらない。
悲しいことに……情熱は醒めます。最初の意気込みが、まるで嘘のように。
二ヶ月とか三ヶ月、いやもしかすると一ヶ月後には、書くのが苦痛になっています。

これが長編の壁です。掌編や短編にはない、前触れもなく現れる氷壁です。

これを乗り越えるために、作者は自分の中に巣食いはじめる飽きや怠惰、
あるいは過酷な現実と戦わなければなりません。
戦いは困難を極めます。特に二次創作は完全に趣味の世界なので、
途中で投げてしまう人が大勢います。でも、これは仕方がないことです。
プロの作家さんたちとは違い、どれだけがんばって書き続けても、
二次創作はしょせん趣味の世界。お金にはならないんですから。

だから二次創作で長編を書くために必要なのは原作への情熱ではなく、
むしろ気力と根性と努力という、作家自身の克己と自律に他なりません。
それと報われない労力を重ねる自虐的精神か、
あるいは自分を追いつめることに快感を感じる変態か……言いすぎですね、はい。

結局なにが言いたいのかというと、長編を完結させるのは、
それだけ作家自身の精神力が大きく明暗を分けるということです。
だから僕は、ケインさんの耐久力に瞠目しています。
自分自身との戦いに打ち勝ち、筆を走らせ続けた気力を尊敬しています。

……まあ、ケインさん本人に対する賛嘆は、このへんにしておいて。

実際のところ、読了とともに沸きあがった感情はひとつやふたつではありません。
とくにケインさんとは『魔法少女リリカルなのは』の二次創作を書いているという共通点があるので、かえって作品の雰囲気や文章を冷徹に評価していたりします。
でも二次創作は楽しんで読むものなので、
ここでは感情のままに、軽い調子で書き殴っていこうと思う。

ケインさんの実力は、SCを読んだので知っていた。
だというのに、読み進めるほどに「ああ、うまいなぁ」と何度も羨望の溜息をついた。
ケインさんのSSには、結構オリジナルの設定が多い。
へたにオリジナルの要素をもりこんでも、かえって世界観は破綻してしまいます。
ですがケインさんは、それを違和感なく『リリカルなのは』の世界に組みこんでいます。
これはケインさんが『リリカルなのは』の世界観を使いこなしている証拠だと思います。
はっきり言って〝見事〟の一言につきます。安心して読めすぎです。

それにケインさんの文章には勢いがあります。
本文中、ところどころに誤字があったのですが、それを気にさせないパワーがありました。
読みやすい。それも一役買っているのかもしれません。

僕がNorthern Lightsを読んで印象に残ったシーンは二つあります。
ひとつはゲバルト・バルト・ムスベルヘイムに追いつめられたときに、
シグナムが言い放った台詞です。

「主がそうまでして守る価値があるのか、あの二人に」
「ええ、あり、ますね……。我が命は八神はやてと共にありますが……!」
「今の主か」
「最後の主で、す……」

以上、八話から抜粋。

掛け値なしにカッコイイ。シグナムが。
いつか僕も使ってみたい台詞です。ケインさん、許可出してくれないかな?

もうひとつは、なのはとフェイトが『ブラストカラミティ』を使うところです。
ブラストカラミティだぜ。漫画でしか出てこなかった、公式では一度も出てこなかった、
そしてそのまま忘れさられていった幻のコンビネーションだぜ。
これはある意味で、なのはとフェイトが編み出した、究極の絆じゃないですか。
だからこのチョイスは、ほんとにもうサイコー。
こういう演出、僕は大好きです。

ともかくこれだけのものを読まされた僕は、自分もがんばろうと思った。
いつかシグナムに「最後の主です」と言わせる日まで。
 

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奉霊の時来たりて此へ集う、鴆の眷属、幾千が放つ漆黒の炎
  • NONAME
  • 2012/02/11(Sat)22:27:28
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でも執筆速度はカメのように遅い。
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目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

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