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魔法少女リリカルなのはEine Familie 第九話 『絶望よ希望となれ』(1)

魔法少女リリカルなのはEine Familie 第九話 『絶望よ希望となれ』(1)を更新。

さてアイネファミーリエも、いよいよ終わりが近づいてきました。
現在、急ピッチでエピローグを執筆中であります。
てなわけで、これからエピローグを含めた、長編最後の更新予定日を発表します。

(2)は明日、(3)は4月1日(水曜日)、(4)は4月2日(木曜日)、
(5)は4月3日(金曜日)、エピローグは4月4日(土曜日)を予定しております。
ではでは、どうぞ最後までお楽しみください。



 ありったけの魔力を注ぎこんだラグナロクの一撃は、はやての体力を著しく消耗させた。それこそ、たかが一呼吸を難儀だと思わせるほどに。酸欠と疲労で、頭が朦朧となる。はやてはかぶりを振って、ともすれば一瞬で破断しそうになる細い意識を繋ぎとめた。
 まわりの守護騎士たちに気遣われながら、はやては弱々しい瞳を眼下へと向ける。
 はたして、はやてと守護騎士たちの努力は見事に報われたらしい。茫漠(ぼうばく)と霞んで見える視線の先には、繁華街の路面に転がったままぴくりとも動かない闇の書の闇がいた。
 ローブから白い手足を伸ばして伏臥(ふくが)する闇の書の闇。その無惨な姿に、もはや先刻までの脅威は感じれらない。まるで襤褸(ぼろ)を被せた白骨死体を思わせる、陰々滅々たる風情だった。

『……ようやく沈黙したようですね』

 リインフォースが思念通話を介して呟く。間違っても勝ち鬨とは思えない醒めた口調で。
 はやては頷いて応じるが、やはりその表情に宿る色は、勝利の高揚感とは程遠い。

「……せやね。でも、あれを見てほしい。まだ闇の書の闇は動けるみたいや」

 はたして闇の書の闇は、意識を失っていなかった。弱々しく痙攣しながらも、ゆっくりと上体を起こしにかかっている。まるで赤ん坊が四つん這いから二足で立ち上がろうとするかのように、闇の書の闇は衰弱して力が入らない四肢を懸命に動かしていた。
 はやてと守護騎士の魔力を合わせたラグナロクは、誇張でもなんでもなく地殻変動に等しいパワーがあった。どのような存在であろうと一万回は殺せて余りある必滅の砲撃だ。
 闇の書の闇は、その直撃を受けたのである。非殺傷設定だろうとなかろうと関係ない。甚大な魔力ダメージによるリンカーコアへの蹂躙だけで間違いなく致命傷であろう。
 にも拘わらず、闇の書の闇は動いている。しかも立ち上がろうとすらしているのだ。
 もともと人間とは体の構造もリンカーコアの質も異なるがゆえか、それとも無限に限りなく近い膨大な魔力のおかげか。どちらにせよ、げに恐ろしき魔法抵抗力であった。
 はたとヴィータの殺気が鋭く収斂(しゅうれん)される。その眼光も、まるで猛獣のごとく剣呑になる。

「ちっ、しぶとい奴だ。いくぞアイゼン、ここで一気にとどめを刺す!」
「ま、待った! ちょっと待って、ヴィータ!」

 舌打ちするやいなや、闇の書の闇に向かって突進しようとするヴィータを、はやては慌てて引き止めた。当然、ヴィータは納得がいかない様子。気性の荒い猫のように目を細める。

「なんで止めんだよ! 今度こそ闇の書の闇に引導を渡す、いまが絶好のチャンスだろ!」

 いつでも突進できる態勢のまま、ヴィータが憤然と主である少女――はやてを睨みつけた。ヴィータの赤い髪が、こころなしかその怒りを反映して燃えているように見える。

「……主はやて、いったいなにを考えているのですか?」

 激昂するヴィータの隣から、シグナムが胡乱そうに眉をひそめて問いかけてきた。
 苛立ちと猜疑(さいぎ)。そんなヴィータとシグナムの眼差しを、はやては気圧されることなく受け止める。こういった反論や非難は、もちろん事前に覚悟していたことだ。
 はやては前振りもなにもなく、その身勝手な我を通すため、わがままを口にする。

「わたしは、闇の書の闇に訊きたいことがある。いや、訊きたいことができた。せやから話をしてみようと思う。あの子の、闇の書の闇の気持ちを、少しでも理解したいから」

 ――闇の書の闇と対話がしたい。冗談にしては性質が悪いその台詞に、シグナムとヴィータが絶句した。そのとき、愕然と色を失ったふたりに代わり、シャマルが意を唱える。

「そんなの……そんなの絶対にダメです! 危険すぎるわ。わたしは反対です!」

 シャマルが怒声をあげた。その剣幕で我に返ったらしい、ヴィータが目の色を変える。

「あたしだって反対だ! そんな危なっかしいこと、誰が賛成できっかよ!」

 激昂しているのか、懇願しているのか、あるいは両方か。まるですがるような目で訴えかけてくるシャマルとヴィータに対し、はやては芝居がかった安気な挙措で肩を竦める。

「大丈夫。あれ見たら判るやろ? もう闇の書の闇に戦う力なんて残ってへん。それに話をするって言っても、ほんとうにちょっとだけやから。せやから心配なことなんてない」

 路上に倒れ伏した闇の書の闇を注視しながら、はやては陽気な風情で笑ってみせる。
 そのはやての笑顔は、心配げな守護騎士たちを説得するためのおためごかしではなく、どちらかといえば兄弟姉妹を安心させるために思わずこぼれたような自然な微笑だった。
 ふと守護騎士たちの表情から毒気が抜ける。――が、それは一瞬の放心でしかなかった。

「ですが、主はやて。せめて確実に安全が保証できるまでは、もう少し様子を窺うべきです。もしかするとあの瀕死の姿自体が、闇の書の闇の三味線という可能性もあるのですから」

 危機感の薄い主を咎めるかのように、シグナムが醒めた口調で忠告する。
 ――叱られてしまった。だがそれでも、はやては口元を嬉しそうに弛ませてしまう。
 孤独では決して実感できない、自分以外の誰かに大切だと思われる幸せ。胸の内をたまらなく熱くさせるこの激情は、卑賤も差別もなく、きっと誰もが得られるはずの幸福なのだ。
 だから伝えたい。闇の書の闇にも。いま自分が感じているこの熱を、彼女にも同じように。

「……心配してくれてありがとう、みんな。でも、わたしはどうしても闇の書の闇と話がしたいんや。せやから、お願いします。いまだけは、このわがままを許してほしい」

 はやては勢いよく頭を下げながら言い放った。断固として揺るがぬ決意をこめて。
 守護騎士たちが当惑げに眉をひそめた。心から敬慕する主が、頭を下げて頼んだのである。もはや冷たく反駁することも、無碍(むげ)にあしらうこともできない。ぐうの音も出なかった。
 守護騎士たちは一様に顔を見合わせると、深い深い溜息をついて頷いたのであった。


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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
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