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魔法少女リリカルなのは False Cross 第五章(4)

 連載SSを更新。
 次回の更新は23日(日曜日)を予定しています。
 よろしくお願いします。


「また僕に吹き飛ばされましたね。これで何度目ですか? 無様、無様、無様ですねえ」

 なのはを仕留める絶好機だが、レイン・レンは追撃しなかった。
 アクセラレーターは身体能力を劇的に向上させる魔法だ。
 当然ながら知覚力も大幅に強化されているはず。
 この暗闇の中でも生物と無生物の区別はついているだろう。
 なのはの位置がわからないという可能性は低い。
 おそらくレイン・レンが決着を急がないのは、彼女を徹底的に痛めつける考えだからだろう。
 彼は現状を心の底から楽しんでいた。
 その嗜虐的な趣向には、どす黒い、復讐の念が感じられる。
 なのはの脳裏に、ふと疑問が湧いた。

「……あなたは言ったよね。復讐が生きる目的だって。じゃあ管理局に入ったのも復讐のため? 管理局の内部に復讐する相手がいたの?」

 のろのろと立ちあがりながら、エースオブエースは問いかけた。
 おぼつかない立ち姿。まるで砂山に突き立てた棒だ。軽く押すだけで倒れそうだった。
 レイン・レンが笑い声を噛み殺す。

「これは十三年前の話です。僕は復讐相手のひとりを殺して、とあるデータを手に入れました。『戦闘機人』の研究データです」

 十三年前と言えばクイント・ナカジマが、違法な戦闘機人の摘発中に、奇しくもスバルとギンガを保護した時期だ。
 そして同じ日には殺人事件が起きていた。
 スカリエッティから得た情報を思いだす。
 彼の話が正しいなら事件の被害者は、スバルとギンガの製作に関わっていた。
 点と点が繋がっていく。

「しかし当時の僕に戦闘機人を造る技術力はありませんでした。当然そのデータは宝の持ち腐れです。ですから僕は管理局に入りました。学校では教えてもらえない知識と技術を得るために」

 時空管理局には『無限書庫』と呼ばれる超巨大なデータベースがあった。
 必要な知識を獲得するのに、これ以上の場所は他にない。
 しかも技術官として働いていれば、自然と実際的な技術が培われていく。
 くわえて管理局の職員になれば身分も保証された。
 世間一般に認められている立派な職業は、レイン・レンの内実を糊塗する役に立つ。
 内に秘めた残虐な思想は、誰の目にも見えなくなる。
 邪悪な男が雌伏して力を溜めるのに、時空管理局は一石三鳥の拠点だった。

「そして長い長い年月をかけて造ったのが、あの『機械仕掛けの聖王』というわけです。つまり復讐が目的で管理局に入ったわけではないんですよ。――もう僕の復讐は終わっていましたからね」

 何気なく付け足された言葉は、なのはを絶句させるものだった。
 一瞬「からかっているのか?」と思ったが、あいにく彼の声に茶化すような調子はない。
 少なくとも嘘はついてないようだった。
 だからこそ彼女は、ますます混乱する。
 レイン・レンは精神異常者かもしれないが、彼には平穏な日常を継続する能力があった。
 管理局に何年も勤めていた事実が、その見解に説得力をあたえている。
 レイン・レンという男は、断じて単なる狂人ではない。
 その気になれば一介の技術者として、平穏無事に生きていけたことだろう。
 もし本当に復讐が完了しているなら、なおさら現状に至る理由がわからない。

「だったらどうして管理局を裏切ったの? あなたには今回の事件を起こす動機がない。なのにスバルを拉致して、私を誘き寄せた理由は何?」

 なのはが詰問すると、レイン・レンの下品な笑い声が再度、暗闇の中に反響した。

「動機? 理由? そんなものはありませんよ。これは――必然だ!」

 黒の中で黒が光る。
 レイン・レンの魔力光だった。
 左手に持った聖書型のデバイス『テンコマンドメンツ』が魔法を実行している。
 戦闘魔導師ではないレイン・レンが、なのはに勝つ方法は限りなく少ない。否、ひとつしかない。
 実行中の魔法はアクセラレーターだ。しかも彼は魔法の制御を完全に放棄していた。
 まるで餓えた狼に血をすすられるように、レイン・レンの魔力が急速に減っていく。
 かわりに彼は秒単位で強くなる。
 おのれの血と肉と魂を対価にして、人間ではない、超自然的な生き物に変わっていく。
 黒い魔力光が照らす男の笑顔は狂気に満ちていた。

「邪魔な物は捨てる。『機械仕掛けの聖王』が完成した時点で、もう管理局に利用価値はなくなりました。ゴミに用はありません。いらなくなった物を処分するのは当然のなりゆきです」

 レイン・レンが立て板に水のごとく暴言を吐き散らす。
 まるで胸の内の鬱憤を晴らしているような感じだった。

「とくに高町なのは。君は時空管理局の中で、もっとも大きなゴミだ。僕は大きなゴミから処分する性質なんです。そのほうが片づけやすくなりますからね」

 かつてレイン・レンは『未完成』の烙印を捺された。そしてゴミのように捨てられた。
 そのため当人も知らないことだったが、人間に対して強い劣等感を抱いていた。
 人の姿を見るたび、声を聞くたび、自尊心を抉られる。
 そんな男が自分を慰める方法はひとつしかなかった。
 否定である。
 粗悪品しか造れない人間のほうがゴミだ、と人間の存在そのものを全否定したのだ。
 管理局を敵にまわしたのは、その歪んだ空想の延長である。
 彼は「復讐は終わった」と言ったが、厳密に言えば復讐は続いていたのだ。

「タイプゼロ・セカンドに関しては掃除機の代わりですよ。君というゴミを吸いこむのに役立ってもらいました。もともと利用されるために造られた機械人形です。きっと本望でしょう」

 アクセラレーターの影響だろうか、レイン・レンの姿は豹変していた。
 表皮が一分の隙もなく黒に染まっている。
 白衣とスーツに身を包んだ闇の住人。
 まるで実体と影が立場を入れ替えたような異形の風体だった。
 にもかかわらず今の外見に、不思議と違和感を覚えない。
 それは『黒』という色が彼の本質を雄弁に語っているからだろう。
 すなわち何色にも染まらない純粋な本能を。
 なのはの脳裏に、勃然と理解が閃く。
 エースオブエースは今はじめて、レイン・レンと対峙しているのだ。

「……それが望みですか。人を手当たり次第に殺すことが?」
「これは因果応報ですよ。人は滅ぶべくして滅びる。間違った者たちの手で、間違って造られた、間違った僕の手によって!」

 レイン・レンは破壊衝動の塊になっていた。空想の現実化に向けて邁進している。
 苦痛を恐れない。
 破滅を恐れない。
 その憑かれたような行動は、まさに理性を失った吸血鬼。
 過去に何度も犯行を重ねた彼は、とっくに戻れなくなっていたのだ。
 わかっていた。
 レイン・レンを止めるには魔法の力に物を言わせるしかないと。
 いささか遅くなったが、なのはの決意は固まった。
 これから無茶をする。

「レイン・レンさん。あなたは人間が嫌いかもしれない。でも私は人間が好きなんです。だから私は私の良心に従う。あなたが人を傷つけるなら、私は、この手で人を守ってみせる!」

 なのはが宣言した次の瞬間である。
 彼女の身を包みこんだバリアジャケットが、唐突に目も眩むような桜色の光を放つ。
 まもなく中から現れたのは意匠の異なる別のバリアジャケットだった。
 新しい防護服は白と青を基調にした重厚な拵え。ただそれだけなら先刻の『アグレッサーモード』と違わないが、よく見れば腰のミニスカートがロングスカートに変わっている。
 また左手に提げたレイジングハートも、バリアジャケットの新調と同時に変形。その鋭利なシルエットは、杖ではなく槍を思わせる。あえて喩えるならパルチザンが近いだろう。
 魔力を惜しみなく注ぎこみ、防御力を格段に向上させた、戦闘用のバリアジャケット。
 攻撃的な進化を遂げたインテリジェントデバイス。
 この『エクシードモード』が、エースオブエースとして本気で牙を剥いた、高町なのはの真の威容だった。



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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

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魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
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