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魔法少女リリカルなのは False Cross 第五章(2)

 3日遅れですが、連載SSの更新です。
 次回の更新は9月9日(日曜日)を予定しております。
 よろしくお願いします。


「どうです? これが禁断の魔法『アクセラレーター』の力です。武装隊の戦技教導官をしている君なら、名前くらい聞いたことがあるでしょう?」

 盲目も同然の闇の中から、どこからともなく、レイン・レンの哄笑が響く。
 アクセラレーターは、術者の身体能力を飛躍的に向上させる、いわゆる強化の魔法だ。
 ただし実験的に生み出されたプロトタイプである。
 はじめから人間の使用を前提に作られた代物ではない。また普通の補助魔法のようにリミッターもない。未熟な者でも魔力があれば簡単に使えてしまう。
 かててくわえて強化の威力は人間の限界を度外視していた。
 術者の制限を超えた魔法は、たちまち術者を破滅させる。
 まさしく命を代償に力を得る修羅の業だった。
 そんな自爆も同然の危険な技術を、むろん奨励するわけにはいかない。
 そのため管理局は、このアクセラレーターという魔法を封印し、使用を禁じたのだ。
 使用されないものは、当然、時間とともに廃れる。
 現在では知る者のほうが少ない、化石のような魔法になっていた。
 もっともレイン・レンが禁術を使ったことが、なのはにとって青天の霹靂だったわけではない。

「……あなたが」

 ふらふらと立ちあがりながら、エースオブエースは口を開いた。
 体のあちこちが痛くてたまらない。喋るのも億劫なはずだった。
 なのに質問したいという衝動が抑えきれない。

「あなたが……戦闘機人?」
「少し違いますね。厳密に言えば僕は戦闘機人じゃない。戦闘機人のなりそこないです。出来が悪くて捨てられた粗悪品ですよ」

 気楽な口調で答えるレイン・レン。
 自分の素性を語っているはずなのに、まるで他人事のような言い方だった。
 ぞっとする。
 彼が胸の内に抱いている虚無は、なのはが思っていた以上に暗い。
 うっかりすると呑みこまれそうだった。

「ま、ちょうどいい機会です。お話してあげますよ」

 レイン・レンが興じるように告げた。
 直後にレイジングハートが、魔力反応・熱反応・空気の振動・音の動きから、敵の接近を即座に感知する。
 なのはの視力は闇に無力だったが、手の中の相棒を信じ、目の前にシールド魔法を展開した。
 桜色の魔力光が周囲を明るく照らす。
 レイン・レンは笑っていた。
 にんまりと笑いながら、白衣の右肘を繰りだす。
 巨大なコンクリート塊も粉微塵にできそうな凄まじい肘打ち。
 それを受け止めた円形状の障壁は、みしみしと嫌な音をたてて軋んだ。

「僕は戦闘機人だった。その事実を知ったのは、もう十年以上も昔です」

 とある次元世界に生まれた彼は、いわゆる天涯孤独の身の上だった。
 彼のレイン・レンという名前は、養護施設の職員がつけたものだ。
 施設の生活に不自由はなく、両親がいないという点を除けばレイン・レンは普通の子供のように育ったが、その幸福は不意に終わった。
 内乱である。
 彼は戦争で施設を追われ、反乱軍に捕まってしまう。
 そのまま彼は少年兵として戦闘に従事させられた。
 自分が人ではなく『戦闘機人』と知ったのは、殺人が日常茶飯事になっていた頃の話である。
 反乱軍の中に彼を「制作した」という科学者のひとりがいたのだ。
 かつての実験体と再会して興奮したらしい。科学者は必要以上に饒舌に語った。
 新暦五十年。
 スカリエッティによって人体と機械の融合技術は多大なる発展を遂げた。
 その画期的な技術を実践して造られた戦闘機人の素体がレイン・レンだ。
 もっとも当時は旧い技術から新しい技術へ移り変わる過渡期の時代だった。
 そのため新技術の導入は、常に成功と失敗が隣り合わせ。
 そして彼は運が悪いことに、融合できない失敗作だった。
 本来の用途に使えない欠陥品の末路は決まっている。
 彼は生きたまま野に棄てられてしまう。
 まるでゴミのように……

「まだ自分を人間と思っていた僕は、たぶんショックを受けたんでしょう。じつは当時のことは、よく覚えていません。ただ我に返ったときには、その話をしてくれた科学者を、すでに殺していましたよ」

 レイン・レンの瞳に愉悦の色が滲む。その表情には悲哀も絶望も窺えない。
 異常、だった。
 おのれの不幸をここまで愉しそうに語れることが異常だった。

「それから僕は復讐を誓いました。僕を造った連中全員に。ですが困ったことに僕は、相手の居場所を知らない。さっきの科学者なら、なにか知っていたかもしれませんが、もはや死人に口なし。それに理由はともかく味方を殺したことに変わりありません。僕は裏切り者として処刑される前に、反乱軍を抜けるしかありませんでした」

 反乱軍を脱走したレイン・レンは、戦後、政府が管理する収容所に入れられた。
 テロリストの仲間だった彼が、その場で殺されなかったのは、ひとえに子供だったからだろう。
 レイン・レンは収容所の中で社会復帰の訓練を受けた。
 そして移住先のミッドチルダで見事に社会復帰を果たす。
 だが胸に秘めた復讐の念は消えていなかった。

「復讐は僕の生きる目的だった。なんとしても実現したかった。でも子供だった僕には限界がありました。だから僕は泣く泣く、本当に泣く泣くです。とある次元犯罪者の手を借りました。それが――」
「ジェイル・スカリエッティだった」

 レイン・レンの言葉尻を、なのはが苦々しく引き取る。
 白衣の男は感心したように喉を鳴らし、いきなり眼前の障壁に額を押しつけた。へばりつくような恰好になる。

「そういえばタイプゼロ・ファーストが今日、スカリエッティのところに行ったんでしたね。タイプゼロ・セカンドが車内で漏らしていましたよ。『お姉ちゃんが心配だ』って」

 レイン・レンが押し殺した笑い声を漏らす。たっぷりと悪意を滲ませた笑い方。

「いや~滑稽でした。他人の心配より自分の心配をしろよ、と内心で何度ツッコミを入れたことか。あんなザマだから簡単に捕まってしまう。自分の身も守れないんですよ。魔導師失格ですね」
「それ以上……」

 なのはの中に芽生えた、レイン・レンに対する同情の念は、その瞬間に消えていた。
 話が本当なら彼の境遇は凄惨きわまりない。
 性格が歪んでしまうのも当然のなりゆきだ。
 できるなら彼の心を救ってやりたいと思う。
 それでも仲間の名誉を重んじる彼女には、この男の非人間的な嘲弄は耳ざわりだった。
 今は単純に一刻も早く、その口をつぐませたい。
 エースオブエースは『バリアバースト』を発動した。

「言うなッ!」

 なのはの怒号とともに、魔法の盾が爆発を起こす。
 眼前で巻きあがる煙が、瞬くうちに視界を覆う。
 派手な見た目とは裏腹に、今の魔力の発破は、あくまで防御魔法の一種。その爆風にレイン・レンを撃退する威力はない。
 これは反撃の狼煙だった。



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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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