イヒダリの魔導書
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魔法少女リリカルなのはEine Familie 第五話 『闇の正体』(2)
魔法少女リリカルなのはEine Familie 第五話 『闇の正体』(2)を更新。
突然ですが、ガンダム00がおもしろい。
特に見せ方、話の盛り上げ方が上手すぎる。
なんだよ、あのクルジスの唄。
ちょっと泣きそうになったじゃねぇか。
「なるほど、そんなことがあったのか。たしかに迂闊に話せることではないな」
事件の概要を聞き終えたグレアムが、納得したように頷く。だがその相槌は、自分が去った後も変わらぬ管理局の淀みに
グレアムは憂い顔になって窓の外に視線を移す。丹精を込めて造り上げた静穏な箱庭を眺めるグレアムの横顔は、はやての目には実年齢よりも老けこんで見えた。
沈鬱な思いに、はやては
グレアムの悲しげな横顔を見つめながら、はやてはそのことを早くも後悔する。
だがそのとき、はやての方に視線を戻したグレアムが、彼女の意表を衝く提案をしてきた。
「はやてくん、私たちも協力する。一連の事件の真犯人を捕まえて、君の無実を証明しよう」
「えっ? ちょ、ちょっと待ってください!」
グレアムの発言に驚き、はやては大きく瞳を見開く。さっきまで頭の中を渦巻いていた後悔も煩悶も、さながら空気のようにあらぬところへと抜けていってしまった。
「お気持ちは嬉しいです。でも……でもそれだと、グレアムおじさんたちに迷惑がかかります。わたしはこれ以上、誰にも犠牲になってほしくないんです!」
はやての叫びは哀願めいて悲痛だった。身を乗り出してグレアムを見つめる両眼には恐怖すら滲んでいる。グレアムをも失ったら自分は立ち直れない。そんな予感が彼女にはあった。
一方、対面に座するグレアムは、泣く子をあやすような優しい笑顔で、はやての不安を一蹴する。それから娘のわがままを一喝する父親のような語調で
「でもね、はやてくん。厳しいことを言うようだが、管理局の追っ手から逃げ回りつつ真犯人を探して捕まえるというのは、君一人ではどう考えても無理がある。魔力の強弱はともかく、管理局に所属する魔導師たちは間違いなく優秀だ。そしてその魔導師たちに指示を出す幹部たちも、その階級と地位にふさわしい実績と経験を積んでいる。
君の魔導師としての才能は、確かにずば抜けて高いとは思う。だがやはり一人の人間である以上、個人だけでできることには限界がある。君だって、ほんとうは判っているんだろう?」
はやては反論を試みようとする。が、とっさに言葉は出てこなかった。
反対意見など出ようはずもない。ほんとうは助けてほしくてたまらないのだから。
黙秘するように口を噤んでしまうはやて。そんな彼女を穏やかな眼差しで見つめながら、グレアムは詰問するような口調を、もとの柔らかい声音に戻して主張を重ねる。
「君は、もっと他人に頼ることを覚えたほうがいい。君がまわりの友人や知人たちを大切に思っているのと同じように、その友人や知人たちも、きっと君のことを大切に思っている。
もちろん、私も君を大切に思っている友人の一人だ。だから私も君に犠牲になってほしくない。傷ついてほしくない。苦しんでほしくない。だったらどうすればいいのか? 簡単だ。助け合えばいい。互いに不足しているものを、互いで補い合っていけばいい。
……それとも私には、君の手助けはできないのかな? 信頼には値しないのかな?
はやては猛然とかぶりを振った。言葉ではなく動作で意思を伝えようとしたのは、そうして自分を律しないと「違う!」と大声で喚いてしまいそうだったからだ。
はやては、グレアムを他の誰よりも尊敬している。他の誰よりも心服している。
そんな彼が力不足であるはずがない。信頼に足らないなどとは、欠片も思っていない。
ならグレアムに助力を頼むことに、いったい何を憚ることがあるのか。
リンディにも、諭されたはずだ。はやてが辛い思いをすれば、それを嘆いて悲しむ友達がいると。はやてを大切に思う大勢の仲間たちが、あなたのまわりにはいるんだと。
他者の手を拒んでしまう自己犠牲的な考え方には、そろそろ見切りをつけるべきだろう。
はやては決然とした表情でソファーから立ち上がる。そしておもむろに右手を差し伸べた。
「さきほどの発言を撤回します。グレアムおじさん……いえ、ギル・グレアム元提督殿。
あらためて民間協力者として、わたしの捜査にご協力をお願いします」
はやては握手を求める。小さな手だった。しかし、これが彼女の誠意と覚悟の証だ。
グレアムが、その手を固く握りしめた。まるで力を込めて握り返せば、そのぶんだけ自分の気持ちも相手により強く、より深く伝わると信じているかのように。
「是非もない。ロッテとアリアが帰ってきたら、さっそく今後の方針を考えよう」
「はい。……ありがとう、ございます」
グレアムの手を握りしめたまま、はやては頭を下げた。自分の無力さを噛みしめつつ、それでも限りない謝意と歓喜を込めて、はやては深く頭を下げたのだった。
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イヒダリ彰人
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趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
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