イヒダリの魔導書
魔法少女リリカルなのはEine Familie 第三話 『四面楚歌』(6)
第三話はこれで終了。
第四話の更新は12月20日を予定しています。
時空管理局通信15に参加したいので、ちょっと間が空きます。
完全に私用です。ほんとうに申し訳ない……
〈追記〉
地味にカテゴリーにあるINDEXのほうも書き足したりしています。
はじめて来られた方で僕のSSに興味をもってくれた人は、
そこを見てもらえると判りやすいかと。
「当時の聖王教会の信徒たちは、闇の書を聖王の遺産だと妄信していた。それゆえに、ロストロギアの管理・保管を一手に引き受けていた管理局を
それよりも当時の事件について
憎々しげな歯軋りを混じえながら、パサードの
「そんな彼らの
聖王を
そうして案出された歪んだ手段こそ、聖王の名において異教徒や凡人たちの独自性に対する、人類史上もっとも惨憺たる攻撃手段を行う少数の無慈悲な集団、聖王教会によるテロルの尖兵たち……教会騎士団だ」
パサードはその名を吐き捨てるように口に出して、カリムを冷ややかに見やる。
もしかするとパサードは、はやてと闇の書にではなく、古代ベルカの
パサードの語った事件の起きた時代には、カリムはまだ生まれてもいない。あずかり知らぬ他人の罪でなじられても、彼女としては当惑するだけだろう。
クロノはカリムの反応が気になり、彼女の表情をそっと窺い見た。そして面食らった。
それは一瞬のうちに消失してしまったが、カリムの顔には悔恨のような翳りが刷かれていたのだ。自分とは関係のない過去の過ちにさえ、この年若い教会騎士は心を痛めるというのか。その見ていてやりきれなくなるような心の在りようは、どこかはやてに通ずるものがあった。
「フォルクスワーゲン監察官のいう教会騎士団の残虐性は、もうどこにも存在しません。
わたしの前の代で聖王教会は大きく
忍耐強く説明するカリム。
彫りの深い顔貌を
パサードは小さく鼻を鳴らすと、不審もあらわな口調で
「君の言うとおり聖王教会の残忍さは影を潜めたかもしれない。だが今度は戦争でも始める気か、教会騎士団の武力は年々拡充しているし、カートリッジシステムの汎用化も
……なにより私が知らないとでも思っているのかね? 君たちがなにやら水面下でコソコソと動き回り、八神捜査官を聖王教会の庇護下に置こうともくろんでいることを」
はやては、数少ない古代ベルカ式のレアスキル保持者。それを鑑みると、彼女はどちらかといえば聖王教会よりの魔導騎士だ。いつか教会の人間が接触してくると思ってはいた。が、もうすでに暗躍していたとは……クロノには初耳だった。
パサードはそれに気づいていた。おそるべき目敏さだ。さすが管理局の内部の不穏に目を光らせているだけはある。たとえそれが外部からの干渉であろうとも、のちのち内部にとって脅威となるのなら、彼の監視能力は決してそれを見逃さないらしい。
まさに
だが、ずばりと指摘されたカリムの表情に動揺はない。彼女は薄く苦笑するばかりだ。
「水際立ったご慧眼ですね。でも安心してください。わたしたちは、あなた方の考えているような理由で八神捜査官を引き抜こうとは考えていませんし、そのつもりもありません。
ただわたしは……いえ、わたしたちは、〝はやてさんと友達〟になりたいだけなんです」
まさか友達などという単語が飛び出してくるとは思わなかったのだろう。パサードの眉根が深い縦皺を刻んでひそめられる。それは失笑すればいいのか、それとも無視すればいいのかで迷っているような、どちらとも見分けのつかない曖昧な表情だった。
「友達……それを額面どおりに受け取れと? 馬鹿馬鹿しい。そのような世迷い言、いったい誰が信じるとお思いか。何か腹に黒いものがあると疑うのが自然だろう」
呆れたように吐き捨てるパサードに、カリムは彼の頑迷さを嘆くように言い返す。
「信じる信じないは個人の思想の問題でしょう。それについてとやかく言うつもりは毛頭ありません。ただ、わたしたちの話し合いの内容は、かの三提督も存じ上げています。それでもなお、わたしたちの潔白をお疑いになられるのなら、それこそ何をか言わんやですが」
パサードとカリムに続く言葉はない。だが交錯する視線は、絶えず熾烈な火花を散らしているはずだった。まるで刀を構えた剣豪同士が、互いに奥義を繰り出して、激しく斬り結んでいるかのごとくに。二人の壮絶な睨み合いは、永遠に続くかのように思われた。
会議室の扉が開き、そこから人影がまろぶように入ってくるまでは。
「騎士カリム、みなさん、逃げてくださいッ! 侵入者が――」
カリムに
「シャッハ!」
カリムが悲鳴のような声をあげながら立ち上がる。
「これはいったい何事だ!」
その怒鳴り声で我に返り、まるで蜂の巣をつついたように浮き足立つ議員たち。
めいめいが色を失って取り乱す中、ただ一人、クロノだけは違う行動を起こした。名状しがたい悪寒に慄きながらも、彼はスタンバイモードのデュランダルを取り出す。
「騎士カリム、フォルクスワーゲン監察官。伏せてくださいっ!」
それは侵入者を警戒しての言葉だった。しかしそれがクロノの挙動をわずかに鈍らせ、デュランダルをセットアップして戦闘態勢に移行するまでの刹那を致命的なものへと変えた。
迸る閃光。それは無数に枝分かれした
クロノがおのれの失態を自覚したときにはもう遅い。もはや防御も反撃もすること叶わず、彼の意識は
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
もちろん無断転載は厳禁。
《連絡先》
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