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魔法少女リリカルなのはEine Familie 第三話 『四面楚歌』(3)

魔法少女リリカルなのはEine Familie 第三話 『四面楚歌』(3)を更新。
今年も、もう一ヶ月を切りましたね。
月日が経つのなんて本当にあっというまだ。

まあそんな感傷はともかく。
最近、伯爵と妖精とかいうアニメにハマっています。
声優には緑川光さんがいるし、水樹奈々嬢もいるし、さらに子安さんまでいやがるし。
これはもう視聴するしかないでしょう?



 薄暗い闇の(わだかま)るそこには、陰湿な我執(がしゅう)(おり)のように沈殿していた。
 八神はやてと別れたその翌日。
 クロノ・ハラオウンが訪れたのは、大きなドーナツ状の円卓が配された会議室――時空管理局本局の中央センターに設けられた部屋の中で、もっとも荘厳かつ暗鬱な場所だった。

「席は空いている。適当なところに掛けたまえ」
「はい。失礼します」

 低いが、すぐ耳元で告げられたかのように明瞭な声に促され、クロノは小さく一揖(いちゆう)してから席についた。その座り方はややぎこちない。まるで何かを警戒するように慎重である。
 それもそのはず。ここはクロノにとって敵地も同然であった。
 クロノは円卓に座る二十人ほどの議員たちを、さながら敵勢力を分析する軍師のように醒めた眼差しで見渡していく。ふと、その中の一人――おそらく女性――の影に不思議と目を惹かれたが、距離も遠かったうえに周囲の闇も濃く、結局正体は判らずじまいだった。

「これで全員が揃ったようだな」

 端然とした声が響くや、クロノの前方の薄闇――さきほどクロノに声をかけた人物の周囲――が仄かに明るくなっていく。間接照明によって水底のように浮かび上がるその場所に、クロノは壮年の男性の姿を見出した。

「私はパサード・フォルクスワーゲン。普段の役職は監察官で、ここ数年前から、この手の会議を取り仕切る議長の役も拝命している」

 パサード・フォルクスワーゲンと名乗った男は、人間的な喜怒哀楽を逸脱して余りある、塑性(そせい)などありえないとばかりの超然たる容貌をクロノに向けた。

「おそらく君とは初対面だろう」

 パサードは管理局の内憂を取り締まる監察官たちの実質的なリーダーとして知られており、静かで柔和な物腰からは想像もつかない峻厳(しゅんげん)さをあわせ持つ傑物(けつぶつ)としても有名だった。
 白髪が一本もない黒髪は四十代後半とは思えない艶と若々しさを保ち、長身痩躯の体格には糊付けしたばかりのような小奇麗な制服をまとっている。一見、痩せすぎなようにも見えるが、その制服の下に隠された筋肉は捜査官時代に鍛えあげた強靭さが今も健在だった。
 仮にクロノが魔法を用いない決闘を挑んでも、百回やって百回とも負けるに違いない。
 そしてフォルクスワーゲンの姓でも判るとおり、彼は先日、はやてとクロノの前に現れたルナリス・フォルクスワーゲンの実父でもあった。
 クロノはさりげなくパサードを観察しながらも、そつなく淀みなく返答する。

「はい。こちらこそ初めまして。クロノ・ハラオウン執務官です。こたびは大変に卒爾(そつじ)ながらも、自分のような若輩のわがままを聞いていただき、感謝しています」

 丁寧だが、必要以上に(へりくだ)ることのないクロノの口上に、パサードはいくらか感心したらしい。彼は掴みどころのない微笑を口元に刻みつつ、ふむ、と感慨深げに息をつく。

「クロノ・ハラオウン……たしかリンディ・ハラオウン総務総括官の嫡男(ちゃくなん)だったな。しかもその彼女のあとを引き継いで、現在はあのアースラの艦長まで兼任しているという。なるほど、その若さでたいした器量だ。君の赫々(かっかく)たる武勲の数々も、どうやら虚栄(きょえい)ではないらしい」

 パサードはそこで言葉を切ると、異質なプレッシャーめいた強烈な眼光でクロノを見据えた。

「そんな君から、なにか我々に注進したいことがあるという話を数時間前に聞いた。
 それが気になったからこそ、この会議の場に招いたわけなのだが……で、いったいどんな話かね? 直言を許す。遠慮なく話してみるといい」

 パサードの語調は、卑賤(ひせん)や格の違いを意識していない丁重で穏やかなものだった。だがその寛容さはクロノに対して関心がない、興味がないといった類いの冷淡さである。おそらくパサードの認識からすれば、しょせんクロノは塵芥のような存在にすぎないのだろう。
 パサードは異常なほどに落ち着いていた。まるでこれから何を言っても、どれだけ言葉をつくしても、そのすべてが無駄に終わるだけだと痛感してしまうほどに。
 クロノは溜息をついた。ここで弱気になっていても仕方がない。意味がない。もしここで逃げたりしたら、それこそ強引な手段に訴えてまでこの会議に出席できるようにしてもらった意義がなくなる。ここまで来たら不利は承知で立ち向かうしか他に選択肢はないのだ。
 クロノは軟弱な自分の性根に活を入れると、腹に力を溜めて戦闘を開始した。

昨日(さくじつ)、管理局の魔導師が連続して襲撃されるという事件が発生し、その難をからくも逃れた八神捜査官が、その事件の事情聴取を受けるという理由でルナリス・フォルクスワーゲン執務官に引き取られました。
 そしてその三時間後。実は八神捜査官に行われていたのは事情聴取でもなんでもなく、ただ彼女を事件の重要参考人とした、無期限の予防検束であるという報告を受けました。
 僕がそのことを独自に調べてみた結果、その指示を出したのがパサード・フォルクスワーゲン監察官、あなただと判りました。どういうことか説明してもらえますか?」

 クロノが語り終えるやいなや、会議に列席する議員たちの何人かがざわめいた。
 無理もない。クロノの語った内容は、進言とは名ばかりの明らかな糾弾だったからである。それもあの名にし負うパサード・フォルクスワーゲンに対しての不遜(ふそん)だ。

「ハラオウン執務官。言葉が過ぎるぞ。訂正したまえッ」

 かくて癇癖(かんぺき)の強い議員たちの顰蹙(ひんしゅく)を買っても、それは無理からぬことであろう。
 だがクロノは少しも動じない。こういった譴責(けんせき)の声は前もって予想していたし覚悟もしていた。だから気にならない。むしろ勝手に挑発された議員たちを憐れむ余裕さえあった。
 しかし、さんざんに喚き散らす議員たちの直中にあって、やはりパサード・フォルクスワーゲンだけは鶏群(けいぐん)一鶴(いっかく)だった。パサードが右手をすっと挙げる。たったそれだけの挙措で、騒然としていた会議室は静まり返ってしまった。まるで鶴の一声のような効果だ。

「構わない。直言を許すと言ったのは私のほうだ。
 ではハラオウン執務官、君の質問に答えよう。私はね、この事件の首謀者を、八神はやて捜査官ではないかと疑っているのだよ」



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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

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魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
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