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 招かれざる者の秘録~騎士王の遍歴~ プロローグ『~剣の遍歴~』(4)

 中編クロスオーバーSS――『魔法少女リリカルなのは』と『fate/stay night』と『アルプスの少女ハイジ』を混ぜた二次創作――のプロローグ(4)を更新です。
 この回でプロローグは終わりです。
 次回の更新は23日(土曜日)か24(日曜日)を予定しています。
 気長におまちください。

 では『セイバーさん唖然呆然。八神家全員集合!』をお楽しみください。
 


「――紫電一閃」

 かぎりなく鋭く、かぎりなく速い紅蓮の閃きが、ガジェットⅠ型を薪のごとく縦に剪断(せんだん)した。左右に割れながら倒れていく機体が炎に侵食される。灰燼と化すのは一瞬だった。
 燃え殻となったガジェットⅠ型の背後に、ひと振りの長剣を提げた女性の姿が見える。

「時空管理局の者です。さきほどの部隊の応援に来ました。お怪我はありませんか?」

 ガジェットの残骸を踏み越えながら、女剣士が心配そうな口調で尋ねてくる。
 精悍な容姿の麗人だった。凛と研ぎ澄まされた雰囲気は怜悧な刃物を思わせる。艶やかな長い髪を後頭部の高い位置で尻尾にしており、敏捷そうな肢体は軽装だが強固な甲冑に守られていた。中華風のドレスから垣間見える白い肌は硝子細工の薔薇(ばら)さながら凄艶だ。
 この女性は強い。直感というよりは肌に触れる空気でわかった。ガジェットを一刀に伏した手管から判断すれば円卓の騎士にも劣らない。しかも魔力は『魔法使い』にも並ぶ。

「ええ、おかげで命拾いしました。あなたのご助力に感謝を」
「お気になさらないでください。これも仕事のひとつですから。――立てますか?」

 礼を言ったセイバーに、女剣士が手を差し伸べる。その淡々としつつも温かな応答に英霊は親近感を覚えた。アルファベットや祈祷を覚えるのと同様に礼節を重んじる女剣士は、セイバーが自らの時代において知るとおりの『騎士』だったからだ。自然と心が弛む。

「ありがとうございます。しかし私よりもマスターを、あそこにいる少女を先に――」

 女剣士の手を借りつつ起きあがり、背後を振り返ろうとしたときだった。
 セイバーの翠玉の瞳が唐突に大きく見開かれる。一階と二階をへだてる天井に大きな穴が空き、そこから一機のガジェットが落ちてきたのだ。瓦礫と一緒に重々しく着地する。

「危ない! 背後にガジェットがッ!」

 とっさに身構えたセイバーが血相を変えて叫ぶ。いまにも飛びだしそうな態勢である。
 だが女剣士は悠揚迫らぬ。まるで後ろの脅威を理解していないかのように平静だった。

「二階のガジェットは自分に任せろと言っていたな。あれは嘘だったのか? ヴィータ」
「うっせぇよシグナム。たまたま床に穴が空いただけだ。いちいち揚げ足をとんなよ!」

 正面を向いたまま声を発した女剣士――シグナムの皮肉に、ガジェットと同じ穴から落下してきた小柄な人影が答える。セイバーは火の玉が飛んできたかのような錯覚を覚えた。三つ編みの髪も、着ているドレスも、まるで真っ赤に燃える炎のごとき色だったのだ。

「機械のくせに往生際が悪いんだよ。――ブッ潰れろ!」

 ヴィータと呼ばれた矮躯(わいく)の少女が荒々しく吼えながら、両手で持った長柄の鉄槌をガジェットⅠ型に叩きこんだ。垂直に振り下ろされた一撃を受けて、円筒型の機体がこなごなに爆散する。驚異的な破壊力だった。とても子供の細腕によって為されたとは思えない。
 ガジェットⅠ型を易々と粉砕したヴィータが鳥のごとく着地する。魔術に詳しくないセイバーが見てもわかるほど熟達した質量操作だった。あるいは浮遊の魔術かもしれない。
 どちらにせよ見事な手練だ。最初にやってきた管理局の魔導師とは明らかに格が違う。
 おそらくシグナムとヴィータは、この時代における最強の戦士だ。時空管理局とかいう組織が選び抜いた精鋭に違いない。彼女たちになら安心して戦場の舵とりを任せられる。
 セイバーは愁眉を開いた。そして偽りのない敬意をこめてシグナムとヴィータを見る。

「先に来てた部隊は全員やられてたよ。いまはシャマルの治療を受けている」

 ヴィータが淡々と注進した。右手の鉄槌は構えをといて、柄の部分を肩に預けている。
 その報告を受けたシグナムは小さく頷き、それから片刃の直剣を左手の鞘におさめた。

「そうか。とにかく無事でよかった。彼らが時間を稼いでくれていなかったら、たぶん私たちは間に合わなかっただろう。あとでねぎらいの言葉をかけてやらないといけないな」

 おしくも力が及ばなかった仲間たちの奮闘を讃えながらシグナムが呟く。屋内のあちこちに転がるガジェットの残骸から類推して出た台詞だろう。むろん本当はセイバーがやりとげた光景である。だが実際を眼にしていないシグナムには想像もつかない顛末だった。

「それにしても解せない。レリックどころかロストロギアの反応すらない場所に、いったいなんの目的があってガジェットは現れたんだ? まさか特定の個人を狙ったのか?」

 はたとシグナムが訝しげに眉をひそめた。今回の襲撃の理由が見当もつかないようだ。
 なまじロストロギア『レリック』を優先的に狙うガジェットの特性を知っていたから。

「あの陰険な博士が造った機械兵器なんだぜ? どうせろくでもない行動原理に決まってるよ。それよりもこいつらの身元を先に確認しようぜ。――おい、おまえの名前は?」

 シグナムの思索を一蹴したヴィータが、ぶっきらぼうに言いながらセイバーを見やる。
 そのひともなげな態度に、剣の英霊は目を白黒させた。ヴィータの無礼な態度に鼻白んだわけではない。誰にも懐かない孤高の猫を思わせるさまに微笑ましさ覚えたのである。
 衛宮切嗣の徹底的な無関心と冷遇を経験したセイバーならではの感想だった。

「……セイバーです。もっともこれは便宜上のものであり真名は他にありますが」

 聖杯戦争の規範に則った英霊の名乗りに、ヴィータは唖然として眼をしばたたかせる。

「なんでそんなまわりくどい言い方してんだよ。変な奴だな。で、そっちの子供は……」

 部屋の一隅に座ったままの少女を見た途端、ヴィータの言葉が不自然なところで止まった。遠い記憶を思い出そうとするかのように、小顔をぐっと前に突きだして目を細める。

「なんか見覚えがある顔だな。それに名前も知っているような気がする。たしか――」
「クララ・ゼーゼマン。一年前のテロ事件のときに、わたしたちが救出した女の子や」

 だしぬけに第三者の声が反響した。その場にいた全員の視線が同じところへ絞られる。
 ガジェットⅠ型に壊されてドアがなくなったリビングの出入り口に四つの影が見えた。

「みんな来てたのか。すると怪我をした魔導師たちの治療は終わったのか? シャマル」
「もちろん。いまは失った体力を回復させるために休ませているところよ」

 あくまで平静なシグナムの質問に、シャマルが自信満々の笑顔で応じる。
 まるで慎ましく咲く雪白の花を思わせる女性だった。露出が極端に少ない若草色の衣と同色の頭巾を着けている。その重厚な服装の印象も手伝って敬虔な尼前(あまぜ)のように見えなくもない。外側にふわりと膨らむ髪の長さは肩口ほど。色は淡い輝きを発する蜂蜜(はちみつ)だった。

「ザフィーラの方も問題なかったみたいだな。外にいたガジェットは全滅させたのか?」
「いや、途中で逃げられた。数が減ったら退却するようにプログラムされていたらしい」

 状況確認をしてきたヴィータに答えたのは、ザフィーラという名で呼ばれた蒼い狼である。この場に居合わす誰よりも大きな体躯を持っていた。立ちあがれば成人男性の背丈すら越えるだろう。くわえて純白のたてがみは獅子のそれに似ていた。イヌ科に見られる尖った顔がなければ別の動物に思えたかもしれない。人間の言葉を話す驚異の魔獣である。

「もっともガジェットの数を効率よく減らせたのはリインの協力があったからだが」
「みんなのお役に立てるよう、精一杯がんばりましたです!」

 男性の声音で喋るザフィーラの言葉に、妖精めいた小さな存在が殊勝に応答する。
 豪奢な艶を煌かせて膝裏まで拡がる髪が、壁の穴から入りこんできた微風に振動する。その左側の一房に二本の髪留めが見えた。十字架を斜めにした形は聖なる(しるし)を思わせる。身につけた衣装は白を基調とした動きやすそうなデザイン。少女の可憐さを際立たせる袖のない上着と膝丈上のスカートだった。そして幻想の住人にふさわしく宙に浮いている。
 とりとめがない奇妙な一団――そんな率直な感想をセイバーが抱いていたときだった。

「そういうわけでガジェットはいなくなったわけや。だからもう安心してええよ」

 その奇妙な一団の真ん中にいた女性が穏やかに微笑んだ。ついさきほどセイバーのマスターを『クララ・ゼーゼマン』と呼んだ魔導師だった。身の丈より長い巨大なデバイスを片手に持っている。その長柄の杖の先端には、剣十字の装飾が星のごとく配されていた。
 肩の高さで切り揃えられた茶色の髪に、汚れひとつない純白の帽子を乗せている。華奢な体躯は(かささぎ)を思わせる白と黒の当世風の式服に包まれていた。背中には六枚三対の黒い翼が生えている。人を眠りに誘う夜の色。今にも翼を上下に動かして羽ばたきそうだった。
 美人である。雰囲気は鷹揚で社交界の淑女のようだった。だがセイバーの評価は違う。
 ――怪物。
 にわかには信じがたい事実だった。剣十字のデバイスを提げた女性の魔力は、人間の限界をはるかに超越していたのだ。ほとんど人外の様相を呈している。『魔法使い』の魔力量を飛び越えて『サーヴァント』にも比肩するだろう。まるで人の形をした奇蹟だった。
 そんなセイバーの驚きなど知らぬげに、くだんの女魔導師が悠然と歩きはじめた。崩れた壁や天井やガジェットの残骸を避けつつ駒を進める。やがてクララの眼前に到着した。

「こんなときになんやけど、ひさしぶりやねクララちゃん。わたしのこと覚えてるか?」
「……はやてさん、ですよね? 一年前にわたしを助けてくれた、八神はやて二等陸佐」

 おずおずと上目を遣って答えたクララに、八神はやては嬉しそうな表情でほころんだ。

「来るのが遅れてゴメン。でも恐怖に負けず、よくがんばった。えらいよクララちゃん」

 はやてが微笑しながら少女の頭を撫でる。母親が自分の子供にそうするように優しく。
 すると張りつめた緊張の糸が切れたのだろう。クララの碧眼から澎湃(ほうはい)と涙があふれた。
 はやては一言も喋らない。ただ沈黙したまま床に膝をついてクララの頭を抱き寄せた。
 その光景を上の空で見ていたセイバーは、なにがなし思い浮かんだことを口ずさんだ。

「マスターの名前はクララというのか。そういえば最初に尋ねるのを失念していた……」


 

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HN:
イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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