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招かれざる者の秘録~騎士王の遍歴~ プロローグ『~剣の遍歴~』(3)

 中編クロスオーバーSS――『魔法少女リリカルなのは』と『fate/stay night』と『アルプスの少女ハイジ』を混ぜた二次創作――のプロローグ(3)を更新です。
 なんか中途半端に長くなったので二分割しました。
 なので妙なところで話の流れが途切れています。
 次回の更新は1月13日(水曜日)を予定しています。
 次の話でようやくプロローグが終わります。
 ふぅ。

 では『セイバーさん無双!? でも世の中は都合よく回らない』をお楽しみください。
 


 ガジェットⅠ型までの距離は目算でおよそ七歩。
 サーヴァント本来の脚力を発揮できれば無いも同然の間隔である。
 だが絶不調のセイバーには那由他(なゆた)よりも遠い道のりに感じられた。
 実際問題として戦況は(かんば)しくない。
 蒼いドレスの裾をひるがえして走るセイバーの動きは、あたかも泥沼沢(どろしょうたく)の海を泳いでいるかのごとく鈍重だった。しかも右手に提げているのは刀剣ではなく魔導師の杖である。
 往年の彼女の精彩を知る者が見れば卒倒する光景に違いない。
 にもかかわらずセイバーの闘志は糸ほども萎えていなかった。
 それどころか彼女の眼は、挑戦的な気概に燃えている。
 この程度の逆境に挫ける騎士王ではない。すぐに思い知らせてやると言わんばかりに。
 戦うと決めた。敵を倒すと決めた。マスターを守ると決めた。
 その瞬間からセイバーの心は鋭利に研がれた(つるぎ)になったのだ。
 もはやいかなる誘惑にも、いかなる迷いにも、彼女の覚悟は揺るがない。
 この場にゆくりなくも召喚されてから今まで、思わぬ不条理の連続に翻弄され続けてきたセイバーの心は、ようやく戦場へと還ってきたのである。
 とはいえ懸念がないわけではない。
 セイバーは右手のデバイスの柄を強く握りしめた。

「マスターにデバイスの仕様を教授してもらったのはいいが……」

 聖杯に招かれたサーヴァントは概して、現代の文化に如才なく対応できるよう、その時代の一般的な常識を下賜(かし)される。くわえてセイバーには幻獣や神獣を除く乗り物を駆使できる騎乗スキルがあった。なんとなれば車やバイクといった文明の利器も扱えるだろう。
 だというのに現在のセイバーには、なんの情報も与えられていなかった。
 ゆえに彼女はデバイスの使用方法を、マスターに質問するしかなかったのだ。
 もっともセイバーが得られたのは曖昧な心証ばかりで肝心の内容は半分もわからない。
 それに根本的な問題があった。
 騎士王はデバイスに保存できる魔術を修めていない。

「余計なことは考えるな。いまはデバイスが勝利の呼び水になるのを信じるしかない」

 ガジェットⅠ型までの距離が三歩ほどになったとき、セイバーは祈るような胸中で右手を横に一閃させた。
 むろんデバイスに魔術は保存していない。
 そのかわり彼女は『魔力放出』と『風王結界(インヴィジブル・エア)』の感覚を描写してデバイスに送った。
 直感を信じた行動である。

「う、うそ――」

 マスターが驚愕の声をもらす。当然だった。岩のように佇んでいたガジェットⅠ型が、人間とは比較にならない自重を備えた鋼の体が、やおら虚空に跳ね飛ばされたのだから。
 しかもそれを成就させたのはセイバーの細腕である。もはや目を疑うしかないだろう。
 宙に弧を描きながら落下するガジェットⅠ型を、そのときセイバーは満足と歓喜の眼で見ていた。あたかも強敵を退けたような高揚感が胸に浮かぶ。彼女は賭けに勝ったのだ。

「体の調子が――元に戻った!」

 とは言うものの完全に治ったわけではない。回復したのは全開の三分の一程度だろう。
 だが魔力放出の秘儀は息を吹き返した。総身を拍動しつつ駆けめぐる熱量は血潮ではなく膨大な魔力の循環だし、右手のデバイスは不可視になり風王結界の発動を示している。
 なにより体重を支える四肢の感覚が違った。まるで強靭な肉体に入れ替わったようだ。
 これなら――

「いける!」

 ようやく掴んだ勝利の(きざはし)にセイバーは奮起する。
 それから機体を軋ませつつ起きあがるガジェットⅠ型に向けて駆けだした。
 十歩はあるだろう距離を刹那のうちに圧縮していく。
 すると敵対者の接近に反応したガジェットⅠ型がカメラアイから熱光線を乱れ撃つ。
 当たればコンクリートの壁を蜂の巣にできるほどの弾幕。
 それをセイバーは風王結界をまとうデバイスでことごとく弾き返した。
 常人には不可能な離れ業である。しかし矢玉が驟雨(しゅうう)のごとく降り注ぐ戦場を生きてきたセイバーにとっては違う。その神がかり的な芸当も『できて当たり前』の作業だった。

「……すごい」

 背後のマスターが瞠目して呟いたときにはもう、セイバーはガジェットⅠ型を一刀両断していた。
 円筒型の機体が左右に割れて床に倒れていく。同時に破断面から火を噴いて相手は爆発した。そのときに生じた炎と煙は風王結界を構成する竜巻が一瞬で吹き消している。
 セイバーが突撃してからここまで三秒と経っていない。まさに電光石火の早業だった。
 だが彼女に自分の功績を褒め称える気持ちは微塵もない。
 なぜならガジェットⅠ型は、まだ屋敷の内にも外にも無数にいるのだ。
 それらを殲滅するまでは決して油断できない。
 セイバーは風王結界を軽く一振りすると、次の標的を強襲するべく猛然と疾走した。

「はああああッ!」

 セイバーは雄叫びをあげながら不可視のデバイスを横薙ぎに振るう。
 二機目のガジェットⅠ型の胴が上下に分断された。
 間を置かず跳躍したセイバーの眼下で爆発が起きたが、その爆風すらも利用して彼女は飛距離を稼いだ。そのまま落下して三機目のガジェットの頭上に風王結界を叩き落す。
 猛烈な勢いで渦を巻く風の圧力に潰された機体が花火のごとく四散して吹き飛んだ。
 軽やかに床に着地を決めたセイバーは、蒼い疾風と化して屋敷の中を駆け抜ける。
 その挙動は迅速かつ無駄がない。
 縦に並んだ四機目と五機目のガジェットを連続して斬り捨てた。
 断ち割られた機体が、ほぼ同時に爆散する。
 神話に伝わるとおりの強さを発揮するセイバーの奮迅を前に、もはやガジェットⅠ型は破壊されるのを待つ木偶にすぎない。
 見えざる旋風が咆哮するごとに一機また一機と破断していく。圧倒的な戦力差である。
 気がつけば屋内に残るガジェットは一機だけになっていた。
 むろんセイバーは最後まで気を抜かない。渾身の力をこめて風王結界を振り下ろした。

「――なん、だと」

 そのときセイバーは驚きの声を発した。翠玉の瞳がこぼれんばかりに見開かれている。 はたしてガジェットⅠ型は壊れていなかった。
 それどころか(くろがね)の装甲には斬撃の痕跡すらない。
 風王結界の直撃を受けたにもかかわらず、神秘を伴わない機械兵器は無傷だったのだ。
 その信じられない結果の原因はセイバーの右手にあった。管理局の魔導師から無断で借用したデバイス。風王結界の効果で不可視になっていたそれが木っ端微塵に砕けたのだ。
 同時に風を束ねていた魔力も弾け飛んでいる。それは風王結界の消失を意味していた。
 足元にわだかまる塵と化した杖の残骸を、セイバーは放心した状態で凝然と見つめる。
 この時代の知識を得られなかったのは言いわけにもならない。よく考えればわかるはずだった。『風王結界』と『魔力放出』の内圧にデバイスが強度を維持できなくなるのは。
 そもそも『貴い幻想(ノウブル・ファンタズム)』は、細かい部品で作られた機械に受け止められる威力ではない。
 初めに考慮してしかるべき問題だった。思い至らなかったのはセイバーの過失である。
 奥歯を噛みしめて内省するセイバーに、そのときガジェットⅠ型が攻撃してきた。
 右側のアームケーブルが横薙ぎに振るわれる。騎士王の胴体を上下に分割する軌道だ。
 武器を失ったセイバーに選べる対策は多くない。彼女は後ろに跳んでかわそうとした。
 ――が、案に相違して体の反応は鈍い。こころなしか重たくなったような気さえする。
 おそらくデバイスが壊れた影響だろう。サーヴァントの強大な力が再封印されたのだ。
 ゆえに彼女は常人にも可能な動きしかできない。アームケーブルを避けきれなかった。
 セイバーは大きく跳ね飛ばされた。もんどり打って落ちながら床面に叩きつけられる。
 体中の痛みをこらえて膝立ちになったが、動けるようになるには時間が必要だった。
 最前まで軽快に脈打っていた心臓も今は鉛のように重い。
 追撃されたら今度こそやられる。

「――セイバーさん、セイバーさん逃げて、早く逃げてッ!」

 南東の方角からマスターの悲痛な叫びが聞えてきた。その声にセイバーは愕然となる。

「マスター、なぜ逃げなかったのです! ここは私が引き受けると言ったはずでしょう」
「ご、ごめんなさい。セイバーさんが強かったから、わたし驚いて動けなかったの……」

 首だけ振り向いた騎士王に強く叱られて、マスターの少女はしょんぼりとうなだれた。
 つい反射的に怒ってしまったセイバーは途端に慙愧の念を覚える。
 約束を違えたのはマスターだけではない。自分もそうだ。敵を外へ誘いだすと言いながら屋内で戦っていた。
 どこかに慢心があったのだ。このままガジェットⅠ型を全滅できるかもしれない、と。
 もし力を取り戻した状態でマスターを抱えて離脱していたら……いまごろ自分たちは無事に逃げられていたかもしれない。少なくともマスターの身の安全は確保できたはずだ。
 ガジェットⅠ型が悠然と近づいてくる。とどめを刺すつもりでいるのは一目も瞭然だ。
 今度こそセイバーは極限の選択肢と向き合う。
 壊れたデバイスの代わりになるものは、騎士王の手の届く範囲には見当たらない。
 もはや二人が助かるためにはカリバーンの威力に縋るしかない状況だった。
 とはいえ気は進まない。
 それに雑念だらけの心でカリバーンの柄を執るのは抵抗があった。
 もしカリバーンに拒絶されたら、その抜き身が鞘から引き抜けなかったら、どうする?
 そう考えると怖かった。おのれの罪をあらためて思い知らされるようで恐ろしかった。
 まるで水晶の板に封じこめられたように、セイバーは怯懦と不信の(かど)で動けなくなる。
 と、次の瞬間だった。

 

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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

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