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魔法少女リリカルなのは False Cross 第四章(3)

 連載SSを更新。
 とりあえず書けた分だけ掲載します。
 次回の更新は1週間後の7月29日(日曜日)を予定しております。
 よろしくお願いします。


 チンクが宣言した次の瞬間、『機械仕掛けの聖王』(デウス・エクス・マキナ)のまわりの虚空に、無数のスティンガーが出現。佇立する黒い甲冑姿を八方から取り囲んだ。
 大量のスティンガーで対象に集中射撃を仕掛ける『オーバーデトネイション』である。
 ナイフの形をした無数の殺気は、その鈍色の切っ先で、『機械仕掛けの聖王』を指さす。
 おびただしい量のスティンガーは一斉に、呵責も容赦もなく標的めがけて殺到した。
 チンクは金属にエネルギーを付与することで、それを爆発物に変える特殊能力を持っている。
 すなわち『機械仕掛けの聖王』に襲いかかるスティンガーのことごとくが爆弾だった。
 空間シミュレータに再現された偽物の街路を、爆心地を中心に拡がる灰色の煙が覆い尽くす。
 手榴弾と化したナイフを、雨のように浴びせられた敵の姿は、たちまち見えなくなった。
 一連の絨毯爆撃が『機械仕掛けの聖王』にダメージを与えたかどうかはわからない。
 希望的観測を挟む余地がないほど、相手の『聖王の鎧』は鉄壁なのだ。
 それでもチンクの胸中に焦りはない。彼女の目的は予定どおりに達せられていた。
 これで『機械仕掛けの聖王』の視野は塞いだ。
 煙の中で身じろぎする黒い甲冑姿は、やはり健在だったが、煙幕のせいで四姉妹を見失っていた。まるで途方に暮れたように立ちつくしている。
 そんな戦闘機人の頭上に、そのとき忽然と穴が空いた。煙の天蓋を突き破って人影が落ちてくる。
 ディエチだった。
 彼女はエアライナーで宙へ駆けあがると、五階に届くほどの高みから飛び降りたのだ。
 ノーヴェは空中でプロペラのように猛烈な縦回転をする。
 そして遠心力と落下の速度を加えた右の踵を、『機械仕掛けの聖王』の脳天に振り下ろした。

「どおりゃあああッ!」

 致命的な威力を秘めたチンクの渾身の踵を、『機械仕掛けの聖王』は左腕を掲げて防いだ。
 轟音とともに放射状に拡がる衝撃波。それが強風のように周囲の煙を吹き飛ばす。
 薄暮の下にふたたび姿を現した『機械仕掛けの聖王』に、今度はウェンディのライディングボードが突進してきた。落陽の赤い光に照らされたボードは火矢を彷彿とさせる。
 とっさにノーヴェを振り払った『機械仕掛けの聖王』が、飛んでくるライディングボードを避けるために身構えた。
 ところが肝心の両脚は動かない。
 見ると左右の足首がリングバインドに拘束されていた。
 ノーヴェの仕業である。振り払われる直前に抜け目なく仕掛けていたのだ。
 バインド自体は即座に破壊されたが、すでにボードは目前まで迫っている。もう回避は間に合わない。
 窮地の『機械仕掛けの聖王』は、両手でボードの先端を受け止めた。踏ん張った足の裏が摩擦で白い煙をあげる。
 ライディングボードは黒い甲冑姿を五メートルほど後退させて停止した。
 奇襲は失敗である。もはやN2Rに有利な条件は何もない。
 だが状況を見守るチンクは勝利を確信した。
 ボードから伸びた長大な筒の先が次の瞬間、『機械仕掛けの聖王』の胸に押し当てられる。
 筒の正体はイノーメスカノンの砲身だった。それを逆に辿っていくとディエチの姿を確認できる。
 煙幕が敵の視野を塞いでいるあいだに、ひそかにウェンディと入れ替わったのだ。
 遠くから砲撃しても致命傷を与えられない。それどころか捕捉も満足にできない。ならば回避も防御も不可能な距離から撃てばいい。
 これがチンクの考えだした一撃必殺の作戦――イノーメスカノンによる零距離射撃だった。
 ついに捉えた『機械仕掛けの聖王』を凝視しながら、ディエチが冷徹にイノーメスカノンのトリガーを引く。

「逃げられないよ」

 横幅の狭いボードの上では、イノーメスカノンに場所を取られて、無理な態勢を強いられていた。まともに踏ん張ることができない。そのためディエチは砲撃の反動を抑えきれず、ライディングボードから投げ出されてしまう。
 彼女は路面に落下して転げまわる。それでも愛用の武器だけは抱きしめたまま放さない。
 一方で宣告とともに発射された砲撃は、決して抗えぬエネルギーの暴虐だった。
 その圧倒的な光の奔流を前に『機械仕掛けの聖王』は為す術がない。まるで彗星のような一撃を受けて何メートルも吹き飛んでいく。
 やがて破滅の閃光が通りすぎたあとには、仰臥したままの黒い甲冑姿が転がっていた。
 激闘の場に真空のような静寂が訪れる。
 心配して駆け寄ったチンクは、ディエチを優しく助け起こした。

「大丈夫か? よくやったな。完璧だったぞ」

 ねぎらいの言葉をかけるチンク。
 すると姉の手を借りて立ったディエチが、はにかむような微笑を口の端に浮かべた。

「まあね。あれくらいは当然だよ。でも復活されると面倒だ。今のうちにバインドで拘束しておいたほうがいい」
「ずいぶん用心深いっスね。ま、あたしもそう思うっスけど」

 答えたのはウェンディだった。彼女は回収したライディングボードを大事そうに抱えている。

「というわけでバインドをかけてきますかね。さっき何もしていなかったから後ろめたかったんスよ。これで勝利に貢献っス」
「ちょっと待て、ウェンディ。そうは問屋が卸さないみたいだぜ」

 気楽な調子で請け負ったウェンディを、後ろからやってきたノーヴェが制止した。その表情は緊張にこわばっている。
 いつのまにか向かい風が吹いていた。否、それは向かい風ではない。膨大なエネルギーの噴出だった。
 路面に倒れていた『機械仕掛けの聖王』が亡者のごとく立ちあがる。
 全身を取り巻く『カイゼル・ファルベ』の虹色の光は旋風さながら。
 四姉妹を絶えず打擲する風圧は、それ自体が一種の暴力であった。
 ディエチの顔から一気に血の気が引く。

「そんな、馬鹿な。直撃だったはず。こんなに早く回復するわけが……」

 ディエチの言葉尻を、猛烈な風が吹き飛ばす。『機械仕掛けの聖王』が突撃を敢行したのだ。



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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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