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月荊紅蓮‐時遡‐ 第十四話

 連載中の中編SS『月荊紅蓮‐時遡‐』の第十四話を更新しました。
 次回の更新は来週の日曜日(31日)を予定しております。

 今回は「アリサ・バニングス」と「高町なのは」のターンです。
 そして最後の戦闘パートでもあります。
 張り切っていきまっしょい。

《余談》

 3Dエロゲ「SexyビーチZERO」は「男の潮吹き」まで搭載!
 ――らしい。
 さすがはイリュージョン先生。
 おれたちには考えつかないことを平然とやってくれる!
 あとは操作性が安定していれば完璧なんだけど……
 たぶん期待はできないな。
 


 すずかとフェイトが協力して【停滞(スタグネイト)】を撃退したその一方で――
 なのはとアリサの側も反撃を開始していた。
 もちろん彼女たちの標的は、一角獣に似た姿の【加速(アクセル)】だ。
 まずは白いバリアジャケットを着た魔導師――高町なのはが杖状のデバイス『レイジングハート』を片手に、濛々たる湯気の中から颯爽と姿を見せた。
 飛行魔法を行使して宙に浮かび、それからデバイスを俯角(ふかく)に構える。

「ここが勝負の分かれ目。いつも以上に集中していくよ。――アクセルシューター」

 なのはが毅然とした声音で低く呟いた。
 両手で持ったデバイスが即座に『Accel Shooter』と応じる。
 すると彼女の足元にミッドチルダ式の桜色の魔法陣が顕現した。
 間髪を入れず周囲の空間に同色の魔弾が続々と生まれる。
 なのはが得意とする誘導制御型の射撃魔法。
 いまの彼女が同時に制御できる限界ギリギリの数。
 その十二個の宝石の(つぶて)が、白い帳に燦然と綺羅(きら)を飾る。
 なのはが発射の合図を叫んだ。

「シュートッ!」

 そして十二発の魔弾が一斉に撃ち出された。
 まるで流星雨さながら【加速】の頭上に降りそそぐ。
 術者の思念で精密に操られる魔弾は、まさに訓練を修了した猟犬そのものだ。
 狙った獲物をどこまでも執拗に追いかけていく。
 こうなったら全弾を撃ち落とすか、あるいは防御に徹するしか他にない。
 しかし【加速】は常識の埒外にある存在だ。
 通常では考えられない破天荒も容易にやってのける。
 敵は八方から飛来してくる魔弾をかわしながら、なのはをめがけて猛スピードで突進してきたのだ。
 雨あられと降りそそぐ魔弾の群れも、能力を使えばマッハの領域で活動できる【加速】からみれば、静止した物体と変わらないのだろう。
 そのわずかな間隙を縫うように走り抜け、彼我の距離をみるみるうちに圧縮していく。
 そんな敵の左の脇腹に、ふいに一発の魔弾が炸裂したのは、次の瞬間の出来事だった。
 その衝撃に妖馬が、白く輝く魔力光を虚空に撒き散らしながら、ふらふらと後退する。
 そこへ狙いすましたように飛んでくる二発目の魔弾。
 まさかの被弾に驚いたのは、ほんの束の間でしかなかった。
 すぐに調子を取り戻した【加速】が、ふたたび能力を行使して魔弾をかわす……
 が、なぜか回避したその先で、別の魔弾の直撃を受ける。
 一度や二度だけなら、ただの偶然、で終わるかもしれない。
 しかし先刻と同じことは、そのあとも連続して起きた。
 あらかじめ待ち伏せしていたとしてもこうはいかない。
 まるで未来を予知していたかのような的確すぎる奇襲だった。
 ほどなくして……
 周囲を飛び交っていたアクセルシューターの風切り音が消える。
 終わってみれば全弾が【加速】に命中していた。
 もはや相手は立っているのもおぼつかない様子。
 文字どおり満身創痍の態だった。

「……当たった。言われたとおりにアクセルシューターの弾道を操作したら本当に。いったいどうやって、あの敏捷なユニコーンの動きを、先読みしたんですか?」

 なのはが驚いた口調で言いながら、もの問いたげな視線を足元に落とす。
 すると彼女の真下に広がる蒸気がざわついた。
 濃霧のごとき白一色の世界から人影が滲み出てくる。

「手品の種は簡単よ。このカードに封印された能力を使ったの。これであいつの思考を事前に投影して、その行動パターンを予測したってわけ。ぶっちゃけ反則技ね。でも私たちは絶対に負けられないから」

 アリサが自慢するでもなく淡々と答えた。
 右手には抜き身のデバイス――妖刀『緋炎』を、左手には一枚のシルエットカードを持っている。
 自分の意思を持ち、ゆえに自律して活動することができる、【(ミラー)】のカードだ。

『反則技ではありません。むしろ私の能力をうまく使った立派な作戦です』

 はたとアリサの脳裏に、じかに(たしな)める声が響いた。
 左手に持った【鏡】のカードの人格であるトワだ。

『まあ、アリサお姉さまは武士みたいに実直な性格ですから、こういう搦め手に融通が利かないのは知っていますが……
 しかし今回は事情が事情です。未来を守るために、辛抱してください』
「わかってる。私だって遊びでやってるんじゃないもの。勝つためには最善を尽くすわ」

 そう毅然と応じるやいなや、アリサの眼光が凄味を増した。
 もう自分の行為を卑下する気持ちはどこにもない。
 おのれの為すべきことを見定めた、それは壮絶な決意のまなざしだった。

「このチャンスを見過ごすつもりは欠片もないわ。ここは徹底的にやらせてもらう」

 決然と言い放った彼女は、そのとき【鏡】のカードを指のあいだで滑らせて、四十五度ほど横にずらした。
 すると重ねて持っていた二枚目のシルエットカードが顔を覗かせる。
 表側に抽象的な木の絵が描かれたカードだった。

「あなたの力で【加速】の足を止めてちょうだい。頼むわよ――【(ウッド)】ッ!」

 アリサが叫びめいた大音声で嘆願する。
 すると鞘に納刀されたままのデバイスに、一発のカートリッジが力強くロードされた。
 足元に緋色の魔法陣が煌々と顕現し……靴裏の地面が舌状に盛りあがっていく。
 いや、違う。
 盛りあがっているのは地面ではない。
 膨大な量の『(つた)』が魔法陣から噴出しているのだ。
 お互いに絡み合い融合して、一本の頑丈な支柱を形成した蔦の群れは、アリサを先頭に乗せたまま、虹のごとく弧を描いて前方へ伸びていく。
 その進行方向には【加速】がいた。

「行け、行け、行けえええッ!」

 アリサは振り落とされないように片膝をつき、蔦の一本を右手に掴んで体を支えながら吼えた。
 彼女の一喝に促された魔法のアーチが、伸長の速度を卒然とあげて敵に肉薄する。
 アリサは相手と自分とのあいだに横たわる距離を正確に見計らう。
 そして、ここぞと見定めた絶好のタイミングで足場から跳躍した。
 そのまま四発のカートリッジを大盤振る舞いして攻撃力を底上げ。
 流れるような動作で左手の鞘からデバイスを抜き払う。
 途端に抜き身の刃から噴きあがる魔法の火。
 アリサは乾坤一擲の気迫をもって魔剣を振りかぶった。

「かわせるもんなら――」

 頭上から轟々と燃えながら落ちてくる人型の太陽。
 それを【加速】は超スピードで回避しようとする。
 が、その挙動は明らかに精彩を欠いていた。
 どうやら十二発のアクセルシューターを受けたときのダメージが残っていたようだ。
 その結果――
 勢いよく雪崩れこんできた蔦の集合体が【加速】の機先を制する。
 直前で幾本に枝分かれしたそれが、相手の四肢に猛然と絡みついたのだ。
 一本一本が鋼のワイヤーと同等の強度を持った拘束条である。
 これに捕まればアフリカ象ですら身動きがとれなくなるだろう。
 だが超常の存在である【加速】には、この世の物理法則など無意味に等しい。
 相手からすれば苦もなく脱出できる程度の呪縛でしかなかった。
 いちじるしく体力を消耗さえしていなければ……
 この勝機にアリサの瞳が鋭くきらめく。
 翡翠の双眸をカッと見開いて、眼下の宿敵を苛烈に睨みつけた。

「かわしてみろッ!」

 アリサは落下しながら両手でデバイスを振り下ろした。
 四発ぶんのカートリッジの魔力だけでなく、おのれの誇りをも注ぎこんだ幹竹割りの斬撃。
 文字どおり全身全霊の必殺だった。
 むろん四肢を緊縛された【加速】に逃れる術はない。
 火をほとばしらせる魔剣をまともに喰らってしまう。
 縦に両断された一角獣の体が……ゆっくりと左右に分かれていく。
 たちまち業火に呑みこまれる【加速】の総身。
 激しく燃えながら地面に、どうっと音をたてて倒れる。
 実体を構成する魔力が血飛沫のごとく宙に飛び散った。
 その目の前に着地していたアリサは、炎の残滓を残すデバイスを横に振り払い、刀身に揺曳(ようえい)している火の粉を飛ばす。
 それから視界を白く閉ざした湯気の彼方に向かって叫んだ。

「すずか、今よっ! シルエットカードの封印を!」

 


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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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