イヒダリの魔導書
魔法少女リリカルなのはEine Familie 第二話 『凶鳥の羽搏き』(3)
(4)の更新は21日の金曜日。
微妙に間があるのは、予想よりも話が長くなってしまったからです。
でもきちんと更新予定日は厳守します。
気長にお待ちください。
忽然と発生した異変に動揺し、なのはとフェイトは忙しなく視線を巡らしてしまう。
だが、浮き足立っていたのは一瞬でしかなかった。
なのはとフェイトはすぐさま気をとりなおすと、周囲の状況を観察しはじめる。その冷静沈着な対処は、まるで歴戦の勇者のごとし。ここ二年間のあいだに、期待の新人から管理局のトップエースと囁かれるほどに成長しただけのことはあった。
「……広域結界? いや、違う。これはベルカ式の封鎖領域っ」
さすがに見ただけでは判らず、術式の特定にも数秒を有したものの、なのははそれがミットチルダ式の広域結界とは似て非なるベルカ式の封鎖領域であることを確認して愕然となった。
「念話も通じなくなってる。これじゃエイミィはおろかアースラへも連絡できない。
いったい誰がこんなことを……」
苦々しく呟きながら、フェイトが何気ない素振りで虚空を見上げる。そしてフェイトは、まるで縫い止められたかのように視線を硬直させた。
目を大きく見開いたまま動かないフェイトを訝しみ、なのはは何があったのか問いかけようとする。が、そのとき――彼女は刃の温度に等しい酷薄な凝視に貫かれたのを感じとった。
そのおぞましい感覚を振り払うように中空を仰ぎ見たなのはは、そこに飛行魔法を用いて浮遊している奇妙な人物を見咎めた。
おそらくかの人物が、封鎖領域を展開した魔導師で間違いないだろう。
かろうじてローブに見えなくはないものの、その魔導師がまとっている衣装は、まるで何百年も前に墓泥棒が掘り当てた副葬品のような麻布仕立ての
ローブ姿の魔導師の眼差しが、にわかに氷点下の気配を帯びる。
その
なのはの直感めいた生存本能がとめどなく恐怖を訴え、けたたましい警鐘を鳴らす。その抜きがたい悪寒に、なのはは骨髄液まで凍りつくような錯覚を懐いた。
ほんらい、見えないし聞こえないはずのその音は血液に伝播し、まるで不整脈のような一定して安定しない心拍となって、なのはの体を内側から突き破ろうと暴走していた。
なのはは一歩も動けない。
あまりにも不自然なフェイトの硬直の理由に、なのははようやく合点がいった。
突きつけられたのだ。死の予感を。かつてないほど鮮烈に。
中空に浮かぶローブ姿の魔導師の殺気は、血の通った人間のものだとは思えない。
「……なのは。ここじゃ戦闘になったときに学校や民家に被害が出る可能性がある。ひとまず市街地から離れよう」
金縛りにあったように動けないなのはを、勇気を滾らせたフェイトの声が救済した。
体を凍らせていた恐怖が、真夏の太陽にあぶられた氷のように溶けていく。
身体の自由を取り戻したなのはは、大きく深呼吸をする。
自分の隣にいるのがフェイトでよかったと、なのはは心の底から感謝した。
「判った。広くて気兼ねなく戦えるところっていえば……海の上あたりが妥当かな?」
持ち前の正義感に闘志を混ぜ合わせた口調で、なのははフェイトに提案した。
強敵に挑む戦士のような顔になったフェイトが、眉根を寄せながら黙考した後、なのはだけに判るように小さく頷く。
ローブ姿の魔導師には難敵の予感がある。どういう了見かも窺い知れない。だがなのはとフェイトの、
なのはとフェイトは飛行魔法を行使して宙に浮き、そのまま一気に屋上から飛び出した。
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
もちろん無断転載は厳禁。
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