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魔法少女リリカルなのはEine Familie 第二話 『凶鳥の羽搏き』(2)

魔法少女リリカルなのはEine Familie 第二話 『凶鳥の羽搏き』(2)を更新。
今日も順調に更新できました。

最近、冲方丁先生のカオスレギオンに影響を受けてきた。
ジークとかノヴィアとか出てきたらヤバイな……。



 海鳴市に吹く風は、もうすぐ訪れる冬の気配を孕んで少し冷たい。
 そんな外気の肌寒さを、しかしなのはとフェイトはものともしない。いや、たんに意中になかっただけである。彼女らは学校の屋上に着くやいなや、忙しなくエイミィに念話を繋げた。

「エイミィさん、いますぐ転送ポートを開いてください! わたしたちはこのまま本局に向かいます!」

 普段から肌身離さず携帯している待機状態のデバイスを片手に、なのははじれったそうにセットアップを開始しようとする。なのなの隣にいるフェイトも同じように続く。
 なのはとフェイトの表情は、なにかに追われているように余裕がなかった。だが息を切らせて肩を上下させている原因は、なにも全力疾走したあとの倦怠感ばかりではないらしい。

「転送ポートの展開場所はいつもと同じ、すずかの家の庭でいいんだよね? 急がないと――バルディッシュ!」
「レイジングハートもいくよ。セットア――」
『ちょっと待ったぁ!』

 今すぐデバイスをセットアップしなければ、まるで世界が滅ぶとばかりに事を急ぐなのはとフェイトを、念話を繋げたエイミィの一喝が静止させた。

『なのはちゃんもフェイトちゃんも、ちょっと焦りすぎ。はやてちゃんが本局に護送されたのはついさっきだってクロノ君から連絡があったばかりだし、今はいろいろと検査で忙しいらしいから、そんなに急いで行っても、はやてちゃんにはまだ会えないよ』

 現在、はやては本局の医療施設で体に異常がないかどうかを調べてもらっている最中らしい。たしかにエイミィの言うとおり、今から本局に出向いてもしばらくは会えないだろう。
 しかし本局所属の救護隊に救出されたはやては、襲撃事件の〝唯一話せる状態の被害者〟として、検査のあとすぐに事情聴取を受けることになっているのだ。そうなったらさらに待たされてしまうのは明らかである。悠長に構えている時間はなかった。

「でもエイミィさん。守護騎士たちのみんなが石化魔法をかけられたんですよね? はやてちゃんのことだから、みんなを守れなかったことにすごく責任を感じていると思う。だから一分一秒でも長く、はやてちゃんと会って話がしたいんです」

 エイミィに窘められても、はやての窮状を憂えるなのはの心中は落ち着かない。反発したなのはの声音には、不満の翳りが色濃く刷かれていた。
 そのとき念話越しからでもはっきりと、エイミィの溜息が聞えてきた。

『だ、か、ら! 少しだけ待って、落ち着いて、冷静になって。
 そんな必死でなりふり構わないような顔を見せたりしたら、それこそはやてちゃんに余計な気を遣わせちゃうでしょ? はやてちゃんの性格を考えれば、きっと無理して明るく振る舞うに決まってるんだから』

 エイミィの意見は正論だ。八神はやてを知る者が彼女の性格を(かえり)みれば、さしたる苦労もなく導き出せる解答である。小学一年生で習う算数よりも簡単な理屈だろう。
 むろんエイミィに諭されなくても、それくらいなのはとて弁えていた。
 仮になのはが、はやてと同じ境遇に立たされた場合でも、友達に心配をかけてしまったことを悔むだろう。懸念を隠しもせずにさらして、しかも学校を無断で抜け出しての逢瀬(おうせ)ともなればなおさらだ。友達を安心させようと考え、強引にでも笑おうとするに違いない。
 だが、そんなものは関係なかった。
 傷ついた友達を助けたいと思う気持ちは理屈では動かない。
 はやてと再会してどんな言葉をかけようかと懊悩(おうのう)しても意味がない。
 誰でも癒せる秘密の宝石めいた慰撫(いぶ)に心当たりがなくても構わない。
 断言できる。親友が苦しんで泣いているときに、ただ指を咥えて見ているだけ……そんな無力で無慈悲な友達こそ必要なんてない、と。
 理屈も理性も倫理も関係ない。その衝動を邪魔するなら全部まとめて敵だった。

「でも……でもだからこそ、今はやてちゃんの傍にいてあげたいんです! 同じ職場の同僚なんかじゃなく、他でも誰でもない、友達として」

 なのはは決然と言い放った。この言葉を撤回するつもりは、なのはには毛頭ない。

「はやては私たちの大事な親友。その親友が落ちこんでいるときに傍にいてあげられないなんて、それこそ親友失格だよ。だからお願いエイミィ。はやてのところへ行かせてほしい」

 凛とした声で続いたフェイトが、水晶のように澄んだ決意の眼差しを虚空に据えた。彼女のその視線は、まるで目の前にエイミィがいるかのように真剣そのものだ。
 ひたむきで純粋な二人の熱意に、しかしエイミィからの返答は感情の読めない沈黙。
 そんな重苦しい空気がしばらく続く。
 ややあって口を開いたエイミィは、心外そうな歎声をむすっと漏らした。

『あたしは別に、はやてちゃんのところに行かせない、なんて一言もいっていないよ。二人が一度決めたら梃子(てこ)でも動かないのは、付き合いも長いから承知してるし。
 ……それになんだかんだ言っても、あたしも結構動揺してたみたい。リンディさんみたいな大人の余裕を身につけたつもりだったんだけど、まだまだ修行が足りないなぁ』

 感情的になって暴走する後輩を言い含める常ならぬ厳しい語調から一転、エイミィは持ち前の天真爛漫さを前面に押し出した声音でごちた。
 不安に顔を曇らせていたなのはの表情がパッと明るくなる。

「それじゃあ……」
『転送ポートはいつものところに開けておくから。はやてちゃんのこと、お願いね』
「ありがとう、エイミィ。それじゃ、あらためて」

 なのはと同じように愁眉(しゅうび)を開いたフェイトが、おのれの金髪よりも優美に輝く笑顔を見せる。その微笑みにつられたかのように、なのはも満面を笑み崩して頷く。

「うん。レイジングハート」
『Standby ready』
「バルディッシュ」
『Get set』
「「セットアップ!」」

 なのはとフェイトが同時に叫んだ。すると彼女たちのデバイスがそれぞれにセットアップを承認し、まるでその声に呼応したように二人の体が眩い光に包まれる。
 次の瞬間、なのはとフェイトの全身を覆う光が飛沫のように弾け飛んだ。次に姿を見せた二人は、小学校の制服からバリアジャケット姿へと変わっていた。

「よし。急ごう、フェイトちゃん」
「判ってる」

 セットアップを終えて魔導師の装束をまとったなのはとフェイトは、転送ポートの展開場所である月村家へと向かうため、飛行魔法を行使する。
 小学校からすずかの家までは車でも三〇分以上はかかる距離だ。しかし魔法で飛んでいけば一〇分とかからない。唯一の懸念は飛行している姿を民間人に見られてしまうことだが、それは人間の視力では捕捉できない高所を飛んでいれば問題ないだろう。
 なのはとフェイトが飛行魔法を用い、あたかも鳥のように屋上から翔け出そうとしたそのとき――
 出し抜けに展開した結界魔法が、小学校だけでなく海鳴市全体を覆っていった。


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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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