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ヤガミケ!? 第五話『考える八神家』

 最近、文庫本を買いにBOOK-OFFへ行きました。
 目的の本は、田中啓文さん著作の『蠅の王』です。
 以前からずっと読みたかった本なので意気揚々と買いにいったのですが……

 なかったさ。ドタドタε=ε=ε=(#ノ~ω~)ノ。+゚えーん

 ショックでした。それはもうショックでした。その場に崩れ落ちてしまったほどに。
 なので、恒川光太郎さん著作の『夜市』を衝動買いしちゃいましたよ。
 いや、自分でもなにを言ってるのかわからないんですが。
 ともかく購入しました。
 そして読みました。続いてビックリしました。想像以上に奥が深かったからです。
 とくに文章の読みやすさが秀逸でした。手本にしたいくらい丁寧で瞠目しました。
 もう少し早くに出会っていれば、まず間違いなく私淑したと思う。
 そんなわけでオススメですよ。

 と、ここで話を変えます。
 来週の土曜日(26日)に、いよいよ二ヶ月計画(笑)の第二弾を掲載します。
 ジャンルはクロスオーバー。大好きな『魔法少女リリカルなのは』の世界に、『fate/stay night』からセイバーを、『アルプスの少女ハイジ』からクララを登場させます。
 タイトルは『招かれざる者の秘録~騎士王の遍歴~』です。
 二ヶ月計画(笑)の第一弾『久遠の秘録』とは違い、いろんな人たちが戦いまくる予定です。とくにセイバーには過酷な試練が待ち受けています。……たぶんね。(苦笑)

 では引き続き短編SSをお楽しみください。


 新暦65年。海鳴市を舞台に繰り広げられた『闇の書事件』が終結。
 その後に管理局から保護観察を受けた『八神はやて』と『ヴォルケンリッター』たち。
 多くの罪を犯してしまった彼女たちは、その償いのために『あること』を決意する。
 それは世のため人のため、社会に対して『無償奉公』をすることであった。
 そして今ここに――八神家の面々による粉骨砕身のボランティア活動がはじまる。

 第五話(?)『考える八神家』

 突然だが、ヴィータは上機嫌だった。
 永久に消えることはないと思われていた眉間の皺も拭ったように消失している。
 平日の煩瑣(はんさ)な務めを終えた解放感に快哉をあげたい気分だった。
 くわえて言うなら次の日も休みなのが嬉しい。
 あれやこれやと一日を浪費してもまだ、楽しい休日は終わりではないのだ。
 今日はどこへ行こう? なにを食べよう? なにをして遊ぼう?
 そんな快い悩みに耽溺することができる。噛みしめても構わないのである。
 ヴィータにとって土曜日の気だるい午前は、まさにその体現たる至福の時間であった。
 だが――
「我々に足りないもの。それはいったいなんだと思う?」
 急に発せられた声に余韻を侵害されて、ヴィータの表情に不機嫌の色が浮かんだ。
 意図のわからない質問をしたザフィーラ(人間形態)を辛辣な眼光で睨みつける。
「どうでもいいけどさ。あたしの安らぎの時間を、おまえの野太い声で邪魔するんじゃねえよ。しかもなんだ、そのわけわかんない質問は? ほんとに返事を期待してんのか?」
 いつにも増して立腹するヴィータを見て、ザフィーラは「ふむ」と真顔で得心する。
「なるほど。ヴィータ、おまえに足りないのは自制心だな。心を強く持つことを学べ」
「……なんかむかつくな。しかも獣に図星を指されたことがなおさら屈辱感をあおる」
 危険な微笑を浮かべたヴィータは、おもむろにグラーフアイゼンをセットアップする。
 そして間を置かずグラーフアイゼンの形状を変えた。
 デバイスの設定をギガントフォルムに変更したのだ。
 むろん、その意図するところは推し量るまでもない。
 つまり、殺る気、である。
 さあ、もぐら叩きの時間だ……
「わたしたちに足りないもの、か。そういえばちゃんと考えたことなかったなぁ」
 憤怒で修羅と化したヴィータを尻目に、はやてが眉をひそめてぼそぼそと呟く。
 彼女はダイニングテーブルの椅子に腰かけていた。温かいココアを飲んでいる。
「シグナムとシャマルはどう思う? なにか心当たりがあったりするか?」
 はやての視線がリビングのソファーへと向けられる。
 応答したのは、世界の武器・防具というタイトルの本を読んでいたシグナムだった。
「物資が圧倒的に足りていませんね。とくに剣とか刀とか刃物とか」
「ぜんぶ光り物じゃねえか。しかもおまえの趣味全開。あたしらにぜんぜん関係ねぇし」
 怒りを理性で抑えて武装を解除したヴィータが口を挟んだ。
 もはや細胞の一片にまで沁みついたツッコミの技術である。
 そのタイミングは絶妙だった。堂に入ったものさえ感じる。
 ……微妙に納得がいかないヴィータの気持ちとは対照的に。
「もう少しまともな意見はないのかよ。ここにいる全員の役に立ちそうな助言がさ」
「はいは~い。シャマルさんに提案がありま~す」
 ふざけた調子で手を挙げたのはシャマルだ。
 呆れた表情で溜息をつくヴィータに、ほくほくと笑いかけて言葉を続ける。
「わたしたち全員のバリアジャケットを水着にすればいいと思いま~す」
「お色気アップで次元犯罪者を悩殺というわけか。じつにクリーンな力だ。それ採用!」
 がばっと身を乗りだしたザフィーラが、シャマルの戯言に真っ先に食いついた。
 飢えた状態で檻から解放された肉食獣さながらの超反応である。
 その露骨で大げさな変態ぶりを見て、ヴィータは我知らずに顔をしかめた。
「採用だと? なに言ってやがる。んなもんダメに決まってるだろ。却下だよ却下!」
 ヴィータはハエでも払うような動作で手を振った。冷ややかで愛想がない態度である。
 ところがザフィーラは意に介したふうもない。それどころか逆にヴィータを嘲笑する。
「おまえは気が気ではないだろうな。ま、当然か。そんな少年もかくやという体型では」
 おくやみを申しあげるように両手を重ねるザフィーラ。合掌して嘆いているのだ。
 その刹那、ヴィータの頭の中で、なにかが千切れた。目の色が紅蓮の炎に染まる。
 これ以上の屈辱は許されない。この獣は今すぐ殺す。次元の彼方に吹き飛ばしてやる。
 ここでヴィータはあらためて、ザフィーラの殺害を心に決めた。それから胸を焼き焦がす憤怒を具現化するつもりで、ふたたびグラーフアイゼンをセットアップしようとする。
 ――そのとき。
「みなさん大変です。ついさきほど海鳴駅の近くにある銀行に強盗が押し入りました。犯人は複数いる模様。全員が武装しており、銀行員さんたちは人質にとられたらしいです」
 慌てふためきながらリビングに飛びこんできたのはリインフォースⅡだった。
 身長三〇センチほどの妖精めいた少女は、手と足をばたつかせて早口に報告する。
 その言葉を受けたヴィータの顔つきが瞬時に変化していく。憤怒から驚愕の表情に。
 たしかにザフィーラの狼藉は許しがたい。だが今はそれを言っている場合ではない。
 ヴィータは即座に気持ちを切り替えた。セットアップの態勢のまま主に呼びかける。
「おい、はやて!」
「みなまで言わんでもわかってる。警察よりも先に強盗事件を解決して、町内の人々の信頼を取り戻そうっていう腹やろ? さすがわたしの守護騎士。考えることは同じやね」
「……は?」
 はやての口から返ってきた言葉に、ヴィータは目を丸くして唖然となる。
 なぜだ? なぜそういう見解になった? そもそもどこからそんな発想が沸いたんだ?
 ヴィータは当惑して立ちすくんでしまう。だが彼女の仲間たちは気にしたふうもない。
 なにやら忙しなく準備を押し進める。それはヴィータの理解の埒外にある光景だった。
「おし。いまから銀行強盗を殴りにいくよ。みんな準備はええか?」
「主はやて、ちょっと待ってください。私にひとつ提案があるのですが」
 言いながら視線をめぐらせる夜天の主に、そのときシグナムがおもむろに進言する。
「犯人を威圧するためにバリアジャケットのデザインを新調してはどうですか? たとえばこの本のページに載っているような、西洋の騎士をイメージした重厚なデザインに」
 さきほどまで読んでいた本の見開きを、これみよがしに掲げてみせるシグナム。
 そこには物々しい装備で全身を守護する、鎧姿の騎士の絵が威風堂々と載っていた。
 そんな殺伐とした恰好で街中を歩くなど、それこそカオス以外のなにものでもない。
 たまらずヴィータは異を唱えた。はやてとシグナムのあいだに気色ばんで割りこむ。
「ふざけんなシグナムッ! はやても、こんな奴の言うことなんか間に受けんな――」
「おお、かっこいいデザインやないか。うん、採用や」
 が、はやては聞いていない。ヴィータの抗議を黙殺してバリアジャケットを改造する。
 ほどなくして一同(ヴィータを除く)が、新型のバリアジャケットを見にまとう。
 まるで騎士(ナイト)ガ○ダム物語だった。子供にも大人にも奇異の目で見られるに違いない。
「よっしゃ。今度こそ本当に準備完了や。今こそベルカの騎士の底力を見せつけるよ!」
『おおー!』
 はやての号令に続き、ヴィータ以外のメンバー全員が声をそろえて気炎をあげる。
 裂帛の気合とともに家を飛び出していく仲間を見ながらヴィータは気が滅入った。
「く、くそったれ。こうなったらヤケだ。――グラーフアイゼン!」
 ヴィータもまた、しかたなくデバイスをセットアップしてバリアジャケット姿になる。
 がしゃがしゃと音が鳴る甲冑に身を包んだ彼女は仲間のあとを泣きながら追いかけた。

 ちなみに。
 そのあとの顛末はというと……

「あんな物騒な恰好で街中を歩いてたら、当然のごとく警察のお世話になるわな」
 案の定、八神家の面々は警察に捕まってしまう。
 罪状は、銃刀法違反と変態罪(なんだそりゃ?)である。
「でも銀行強盗は退治できたから、まあいいか。これで一件落着ってね。あっはははは」
「さすがはやてちゃん。どこまでいってもポジティブなんですね。尊敬しますですよ~」
 顎と胸をのけぞらせて笑う八神はやてを、リインフォースⅡが憧憬(どうけい)のまなざしで見る。
 そのやりとりを醒めた目で眺めていたヴィータは、とある結論に行きついて嘆息した。
「おまえたちに足りないのは常識だよ……」

 第五話(?)『愚昧で矮小な八神家』
 終わり。
 

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イヒダリ彰人
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男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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