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久遠の秘録 幕間『霊剣の担い手とキラメキ青年の場合』

 久遠の秘録 幕間『霊剣の担い手とキラメキ青年の場合』を更新。
 明日はいよいよ最終章。久遠の秘録もついに終幕となります。
 ああ、やっとここまで来たなぁ……

 TBS系のドラマ「オルトロスの犬」が昨日、最終回でしたね。
 このドラマはストーリーよりも、タッキーかっこいい、とか思いながら視聴していた番組でした。だってイヒダリは滝沢秀明さんの隠れファンだから。
 あ、でも佐々木蔵之介さんの演技は凄まじかったな。
 最後のほうの狂いぶりは、地力を感じさせてもらいました。
 あと、このドラマのノベライズ本があるらしいので、書店で見かけたらちょっと読んでみようかな。登場人物たちの心理描写に興味があるし。
 


 子狐の姿に戻った久遠が歩み去っていく。八束神社の境内を取り囲む木立の奥深くに。
 夏目は気絶したままのヴィヴィオを背負う。それから疲れた歩調で石段をおりていく。
 そんな彼の足元に寄り添うニャンコ先生が、ときおり野次を飛ばして少年をからかう。
 異なる叙情を漂わせる三者の後ろ姿を、神咲薫はひとり境内に佇んで見守っていた。
 しばらくのあいだ薫は、その三者の足音に油断のない目つきで耳を傾けていたが、やがてそれが完全に消えたことを確かめると――途端に背後を振り向いて社殿を睨み据えた。

「盗み見に盗み聞きか。卑怯者の常套手段だな。なにか申し開きがあるなら聞いてやる」

 有無を言わさぬ威圧をこめた呼びかけに、白々しいほどの沈黙の間を置いたあと、雑草を踏み鳴らす軽い足音が響いた。さも嘆かわしいと言わんばかりの声音を涼風にのせて。

「卑怯よばわりは心外だね。私としては空気を読んだつもりだったんだけど」
「やはりおまえか、名取周一(なとりしゅういち)。いつからそこに隠れていた?」

 薫の口調には愛想など欠片もなかった。昨日はじめて会った男だが、なぜかいろいろな仕草が鼻につくのだ。しいて挙げれば、さざなみ寮の三代目管理人だった槙村耕介(まきむらこうすけ)の誠実さとは対照的な、妙に紗に構えた態度と自棄を気取った翳のある笑い方が気に入らない。
 名取は肩をすくめて苦笑していた。薫に嫌悪されていることを自覚はしていたらしい。

「じつは最初から見ていたんだ……」そのとき名取の虚飾に満ちた笑顔がこわばる。
「おいおい、そんな親の仇でも見るような目で睨まないでくれ。怖くて話ができない」
「この目つきの鋭さは生まれつきだ。それよりも早く話を進めろ。うちは気が短いんだ」

 薫が凄味を利かせて容赦なく切りかえす。ここまで虫が好かない相手も珍しかった。
 ぱくんと口を閉じた名取は、気難しい上司の癇癪を警戒するサラリーマンの風情で、

「そのようだね。じゃあさっそく話をはじめよう」

 と、あらたまった語調で先を続けた。

「私がここに来たのは、夏目たちよりも前だよ。すぐに声をかけようと思ったんだけど夏目が例の妖――久遠だっけ? と一緒にいたからビックリしてね。それでどうしようか迷っていたら君まで登場してさ。しかも出会い頭に修羅場をおっぱじめるもんだから……」
「なるほど。つまるところ、出るに出られない状況だったと、そう言いたいわけだな?」
「そう言いたいんじゃなくて、まさにそういう状況だったんだよ。まったく見ているこっちのほうが生きた心地がしなかったじゃないか。なんだってあんな真似をしたんだい?」

 ずれた伊達メガネを押しあげる名取に、薫はあさっての方角に目を向けて答えた。

「あの少年が、おまえの言っていた同行者の夏目貴志というのは、一目見てすぐにわかった。常人にしてはえらく妖力が強かったからな。もっとも本人は無自覚のようだったが」

 夏目と邂逅したときのことを反芻する薫。そして生意気そうな顔と口調を思い出した。
 身の程をわきまえない少年だった。にもかかわらず言うことだけは誠実で真面目で……

「妖と共存するのは大変だ。寿命も価値観も違うからな。しかし夏目は、人だけでなく妖に対しても真摯であろうとした。だから見てみたくなったのさ。あいつの覚悟と底力を」

 すると名取の口の端が弛んだ。それは、にやり、という表現が適切すぎる含み笑い。

「で、妖狩りのプロフェッショナルの目から見て、夏目はどう映った?」
「子供だ。ただの向こう見ずな子供だよ。が、あのひたむきさは認めてやってもいい」

 薫が皮肉を混じえて即答した。そんな彼女の表情に驚きが浮いたのは次の瞬間である。
 作り笑いしか見せなかった名取の顔から、あざとさが消えて素直な感情が表れたのだ。

「……ずいぶんと嬉しそうだな。自分が褒められたわけでもないのに」

 そう言いながら薫は、先入観を排した鋭敏な観察眼で、あらためて名取を値踏みする。
 男の笑顔は純粋だった。他人のよしなしごとに関心がある性質(たち)とは思えなかったのに。
 名取は伊達メガネの奥に見える瞳をなごませた。胡乱そうな薫に応じる声も柔らかい。

「そうだね。でも友人に贈られる賛辞は、自分に対するそれよりも嬉しいものだよ」
「……友人?」

 またまた意外な発言である。他者に対して心を開かない人物だと認識していただけに。
 首をかしげて無遠慮に見つめてくる薫に、対面の名取は相好を崩して穏やかに告げる。

「夏目は私の友人だよ。同じ風景が視える、ただひとりの友人だ」

 薫は相槌を打てなかった。かすかに口元をほころばせる名取の微笑が朗らかすぎて。
 真面目な言葉には真面目に答えなければならない。薫は眉根に皺を寄せて黙考する。

「その気持ち……少しだけわかる。うちにもいるからな。お人好しの友人たちが」

 ややあって呟いた薫は、はや回れ右をして名取に背を向けた。長い髪がドレスの裾のように拡がる。それから彼女は背筋をまっすぐに伸ばしたまま黙々と石段をおりていく。
 薫が移動する直前、名取が「私たちは幸せなのかもしれないね」と言ったが無視した。
 嫌いな相手の意見に同調するのは一度だけでいい。ゆえに彼女は黙秘を行使したのだ。
 ……が、石段を半分ほど消化したところで、薫は足を止めて桜台の方角を遠望した。

「久遠のことも気にかかるし……あと二、三日だけ泊まらせてもらうか」

 さざなみ寮で暮らす友人たちが無性に恋しくなった。


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イヒダリ彰人
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趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

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魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
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