イヒダリの魔導書
明日の君と逢うために 感想
『明日の君と逢うために』ようやく攻略完了。
正味の感想を述べると、まさに「ギャルゲーのお手本」のようなゲームでした。
かくあれかし、って感じです。
笑いあり、苛立ちあり、感動あり、萌えあり……
天然あり、ツンデレあり、薄幸あり、ロリあり。
プレイヤーが学園生活を謳歌するために必要な要素が過不足なく揃っています。
すばらしかった。おもしろかった。ひさびさのヒットでした。(学園モノのジャンルで)
個別シナリオの感想を書いたのですが、予想より多くなってしまったため、やむをえず隠しました。
感想はネタバレを含んでいるので、それがイヤな人は見ないように。
べつにそんなの気にしないぜ! って人は遠慮せずに読んでみてください。
《個別シナリオの感想》
> 泉水 小夜
ツンデレ美少女。富豪の家に生まれ育ったお嬢様。目つきは冷酷で愛嬌の欠片もないが、友人知人を気遣う純朴な優しさはきちんと持っている。ただ普段は素直になれないだけ。人付き合いも、苦手なだけで嫌いではない模様。胸は大きくないという設定らしいが、HシーンのC Gではそこそこ大きいように見えた。髪型は……ポニーテールか?
ちなみにイヒダリの一番好きなキャラクターです。
実の姉の失踪というトラウマを抱えているせいか、はじめこそ態度も言動も冷ややかで、「おまえには関係ない」と主人公を突き放す台詞を連発します。しかし、大胆なのか不敵なのかわからない主人公と交流を深めていくにつれて、次第に心を開いていきます。
彼氏彼女の関係になるまでの顛末がおもしろいシナリオでした。極上のヒロインです。
エンディングはふたつあるのですが、どちらもハッピーエンド……なのかなぁ。
いちおう、きれいに終わってはいました。
ただ、一方のエンディングに出てくる“失踪した姉との邂逅”は、必要不可欠なシーンで感動的な演出のはずなのに、なんか微妙にしらけてしまうやりとりだった。
だって姉の失踪の動機が「……なんとなく」なんだぜ。びっくりしたよ。マジで。
完全に水をさされてしまいました。姉に、もっと切実な理由があれば完璧だったのに。
> 夕霧 瑠璃子
巨乳美少女。病気がち。おっとりした性格。主人公より、ひとつ年下。過去に主人公と遊んだ経験あり。殺人犯のような凶悪な目つきをした兄さんがいる(作中では、そんなふうに描写されてた。でも、C Gでは普通に美形です)。職業は医者。属性はシスコン。
総括すると、一番印象に残らないシナリオでした。
はじめから主人公に好意を持っていたため、あっけなく付き合いはじめたからかも。
もっとも、物語に嵐の日の海のような起伏が生まれるのは、主人公と瑠璃子が付き合いはじめてからですが。かねてより懸念されてきた瑠璃子の病気が悪化するからです。
その病気の正体は、夕霧家の女性にのみ発病するという呪い。何代か前のご先祖さまが“島の神様”に奇跡を願い、それを叶えるために支払うことになった代償が原因らしい。
ぶっちゃけ、ただのとばっちり。
なにも悪いことをしていないのに、生まれたときから早期に死ぬことを約束されている、ただひたすらにかわいそうな女の子です。でもシナリオは盛りあがらなかった。
彼女にもエンディングがふたつ用意されています。どちらのエンディングでも、とりあえず瑠璃子は死んだりしません。“島の神様”の不思議パワーで奇跡が起こります。
イヒダリは奇跡の力でヒロインが生き返ったりする類の話が嫌いなので、瑠璃子シナリオにのめりこめなかったのも、あるいはそれが原因なのかもしれません。もったいない。
> 藤崎 あさひ
先輩。ちびっ子。毒気が抜けるような間延びした口調。勉強は苦手。演劇部の部長。その演技力は驚嘆すべきもので、舞台の上では、まるで別人のようになる。
容姿は好みじゃなかったが、シナリオは極上だった。ひさしぶりにエロゲー泣きました。
真意を窺わせない奇抜な言動とあざとい仕草で主人公を翻弄する、愛くるしさとわずらわしさが同居した小動物めいたキャラクター。転校してきたばかりで、どこの部活にも属していない主人公を演劇部に勧誘しにやってくる。それがふたりのファーストコンタクトです。
一見して、ただの小さな女の子。だがその正体は、昔は多く存在すると言われていた“島の神様”のひとり。
信仰がなくなり、次第に忘れ去られ、それに孤独を覚えた神様。
人に懐き、人の生活に憧れ、自分とは別の“島の神様”に「人間になりたい」と嘆願し、その奇跡を成就させた『元』神様の女の子。それが彼女である。
物語を進めていくうちに、あさひ先輩は、自分が他の人とは根本的に違う異端であることに気づきはじめます。そしてそれが原因で、付き合いはじめた主人公と距離をおくようになります。
主人公は励ましたり慰めたりしますが、あさひ先輩の苦悩はかなり根深い様子。にっちもさっちもいきません。なんの打開策もなく、時間だけが無為にすぎていきます。
そんなときです。あさひシナリオに予想もしなかった人物が介入してくるのは。
極上のサブヒロイン――七海美菜の登場です。
海で溺れて生死の境をさまよっていたところを主人公に助けられ、それまで異性として意識したことのなかった主人公に恋心が芽生えます。なかなか初々しいきっかけです。
そして主人公に告白します。しかし主人公の心の大半を占めているのは、あさひ先輩です。ていうか現在進行形で付き合っています。なので予定調和のごとくフラれてしまいます。
端からみれば滑稽以外のなにものでもありません。勝敗などはじめからわかりきっていたのですから。それでもイヒダリは感動しました。モニターの前で拍手喝采です。
近年のエロゲーではあまりみなくなった、女性の勇気と潔さをみせてもらいました。それだけでもう充分です。イヒダリの心は清々しさでいっぱいになりました。
――しかし本当の感動は、この先に用意されていたのだ。
自分が『元』神様であることを完全に思いだし、神様が住むといわれている別次元の世界に帰ると言いだす先輩。
自分は生粋の人間ではない。だから心の中では、いつも孤独を感じていた。
世界から「おまえの居場所はここにはない」と言われているような感覚。
決して拭えない寂寥。
それら諸々の事情が、上記の決断を先輩に規定させたらしい。
「先輩の決意は固いようだ。ならせめて笑って見送ってあげよう」ヘタレ主人公ならそう言うでしょう。だがこの作品の主人公は違いました。
「先輩が居場所を求めるなら、一緒に探す。いや……俺が先輩の居場所になりたい(作中から引用)」
最後の最後に、とうとう男をみせやがったぜ! って感じでした。
そして、そこからはもう感動の嵐です。ティッシュを三枚も消費しました。
いや~、すばらしい話に出逢えましたよ。みんなにもオススメします。
> 月野 舞
二人目のツンデレ美少女。金髪のツインテール。主人公のアルバイト先の店長の娘。ヒロインの中で彼女だけが、主人公と通う学校が違う。物語の中核を担う“島の神様”とも接点がない。正直な話、いてもいなくてもどっちでもいいキャラクター。
総じて、なんかどうでもいいシナリオだった。人物の造形はよくできているため、キャラに魅力はあるし会話も楽しい。だがいかんせん、どうしても蛇足な感じは拭えず。
よく練られた世界観の設定を生かしきれず、ただひたすらにキャラの魅力で押しきろうとした悪例。きれいなストーリーを目指したけど、逆にグダグダになってしまった感じ。
しかもメインヒロインである若宮 明日香が途中退場(死ぬわけではない)するという展開にポカ~ン。しばらく進めていくと納得のできるイベントに遭遇するのですが、それでも「なんだかぁ」という思いは消えず。終盤の描写は、なんか無駄に長い印象だったし。
攻略不可のサブヒロインだったら、もっと熱狂できるキャラクターだったかも。
> 若宮 明日香
メインヒロイン。本編より七年前に“神隠し”に遭って失踪してしまった幼なじみ。明朗快活で、いつも賑やか。その場のノリと勢いだけで喋っているようにみえるが、テストの成績は学年の中で一番という秀才。運動神経も、まるで野生児のごとく。体力は無限にあるらしい。
起承転結でいうところの、まさに「結」のシナリオ。主人公が本当の意味で、自分の過去と向き合う話です。もがき、苦しみ、決意し、選択する、シリアスなストーリーです。
そもそも主人公の目的は、七年前に姿を消してしまった幼なじみ『あーちゃん(主人公は七年前、明日香のことをそう呼んでいた)』を探しだすことでした。でもそれは物語のプロローグであっさりと達成してしまいます。明日香は、主人公が物語の舞台である御風島に戻ってくるより一年も前に、すでにこの世界に戻ってきていたのでした。つまり探すまでもなかったというオチ。
呆気にとられる主人公。ていうか、拍子抜けしてしまいます。しかし、再会した明日香は“記憶”を失っていた! というのが物語の導入部です。
序盤から中盤にかけて、主人公は漫然と日々をすごします。究極の目的であった『あーちゃん』の捜索と発見が、思わぬ形で成就してしまったからです。なにをしていいのかわからなくなるのも頷けます、はい。
そんな主人公と明日香が惹かれあい、付き合うようになったきっかけは……まったく印象に残っていません。ゲームをやりなおしてみたのですが、やはり強く印象に残るシーンではありませんでした。すごく自然な流れで、気がついたら好きになってたって感じ。
終盤にさしかかると、物語は混沌の様相を呈してきます。
記憶を取り戻す方法がわからず苦悩したり、『あーちゃん』の意識体みたいなのが現れたり、島の神様に「過去の記憶を取り戻すためには、現在の記憶を対価として支払う必要がある」とか言われたり、明日香がたびたびヒステリーを起こしたりと、なにがなんだか。
しかも明日香は、「過去の記憶を取り戻すよ。たとえそれが今の記憶と引き換えだとしても。それがシュウくん(主人公のこと)の望みなんだもんね」みたいなニュアンスのことを言いだす始末。主人公はそんなこと毛筋ほども思っていないというのに。
当然、主人公は反論しますが、明日香はまともに聞きやしない。
主人公の気持ちを勝手に断定して、自分の中で結論づけてしまいます。ヒロインの身勝手さにムカつき、主人公の境遇に同情しました。
かえりみれば、これは結構めずらしいケースだったかもしれません。へタレヒロインに振り回される、意志薄弱でなよなよした主人公という構図は。
クライマックスは、過去の記憶の復活を願おうとした明日香を、主人公が引き止めるというシーン。そこで一枚絵のCGになるんですが、その絵と展開に既知感を覚えました。なんか泉水 小夜のクライマックスと状況が似ている……
主人公が、ヒロインを強引に抱きしめて引き止める行動がモロに。
まあ四の五の言いましたが、退屈せずに読み進めることができた良シナリオです。
もっとも、メインヒロインのシナリオにしては感動も印象もイマイチでしたが。
> 御風 里佳
歳の離れたお姉さんキャラ。主人公の従姉であり、寄宿先の家主。主人公とヒロインたちが通う高校の学園長で、現役の教師としても活躍している。よく主人公たちに年齢のことをからかわれて激怒しているが、まだまだ妙齢の美女である。
……まあ高校生からみれば、二十代なんて立派なおじさんとおばさんだが。
無駄な描写とか展開は一切なく、いちばん平穏で清々しいシナリオでした。欠点は、物語を構成する山と谷が低かったことですが、つまらなかったわけではないです。
主人公とふたりで、島の神様を見送るシーンは感動しました。涙は出ませんでしたが。
エンディングも如才ない感じ。淡々と物語を締めくくりました。後味すっきりです。
個別シナリオの感想は以上です。
しかし、パープルソフトウェアの演出はすごいの一言。まさに群を抜いています。
この演出力を戦闘描写で生かせたら……Fateを超える会心の一作になるかも。
まあ、詮無い望みですが。
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
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イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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