イヒダリの魔導書
Fate / Chaos Legion(2)
ちょっと立て込んでて無理でした。
来週はきちんと短編SSを更新したいと思います。
あ、それと。
格ゲーの奇妙な世界さんのところで連載していたFate ss
『Fate / the midnight saga』を読了しました。
序盤の退屈な日常描写や、世界観の説明には辟易しますが、
圧倒的な文量と度肝を抜く展開には脱帽します。
この筆者にはぜひ、リリカルなのはのSSも書いてほしいものです。
――どんなときでも余裕をもって優雅たれ。
遠坂家に代々伝えられているその家訓は、形をそのままに遠坂凛のプライドでもあった。
他でもない、誰よりも心服する父親がその体現者だったのだ。
ならば娘である自分も、つねに余裕で優雅で鮮烈でなければならない。
それが
――だというのに。
遠坂凛のアイデンティティは、いままさに崩壊の危機に瀕していた。
「なにやらソファーで呆けてる我がマスターには紅茶でいいとして。……たしかジーク・ヴァールハイトだったかね? 君はなにが飲みたい? 紅茶か、それともコーヒーか?」
「薬湯を……いや
「む。それでは腕の振るいようがないが……まあいい。少し待っていたまえ」
「ああ。頼む」
物々しい戦装束の男がふたり。
ダイニングテーブルの椅子に腰掛けているのは、墓掘りのサーヴァント。
そして、その墓掘りに話しかけているのは、真っ赤な外套をまとった白髪の青年。
「……ねえ、ちょっと」
低く地を這うような声で凛が呼びかける。すると、キッチンから手際よくティーセットと白湯の入った湯呑みを運んできた知らない男が視線を投じてきた。
「ようやく目が醒めたか。……やれやれ、ずいぶんと間の抜けたマスターに召喚されてしまったようだな」
呆れたように言いながら、白髪の男がティーセットと白湯をダイニングテーブルの上に置く。
「気がついたなら君もこっちに来たまえ。せっかく淹れた紅茶が冷めてしまう」
慇懃無礼な態度で凛を促し、その一方では墓掘りのサーヴァントに白湯を渡している。
ずいぶんと手慣れた挙措である。まるで執事かなにかのようだった。――もっとも、それを落ちついて観察できるほどの理性は、このときの凛に望むべくもなかった。
「紅茶なんてどうでもいいのよ! それよりも、もっと重要なことがあるでしょう!」
腰まで流れる黒髪を振り乱して逆上する凛。鬼面の相で吼え糾すその姿には、もはや余裕も優雅さも認められない。遠坂家の家訓は、いまここで地に堕ちた。
「答えなさい! あなたはいったい何者なの? ここにはなにをしに来たの?」
凛は矢継ぎ早に質問をする。嘘は許さないと、言外に脅しつけるような口調で。
白髪の男は溜息をついた。その不遜な態度がますます凛の逆鱗に触れたが、怒鳴り返すことはできなかった。その前に、白髪の男が口を開いたからである。
「わからないのかね? ではその右手の甲にある令呪は、もしかすると私の見間違いかな?」
「は? 令呪?」
白髪の男の小馬鹿にしたような言い方に腹を立てながらも、凛はパジャマの右袖を捲った。そこには確かに、聖杯戦争の参加資格ともいえる令呪がくっくりと浮かびあがっていた。
――ふと疑問に思う。なぜこの男は、令呪のことを知っているのだろうか。
凛の顔色から、その疑問を察したのだろう。白髪の男が口元を歪めた。苦笑したのかもしれない。
「私も、そこにいるジークと同じく、君のサーヴァントだ。
「はあぁぁぁッ! 給仕のサーヴァントォ?」
聖杯戦争のルールを根底から覆す不条理。
一人の魔術師に二体のサーヴァント。
ただし、その二体のサーヴァントは、戦闘ではとても役に立ちそうにない墓掘りと給仕。
凛の混乱は極限まで高騰し……そしてなにかの閾値を越えて弾け飛んだ。
「きよぉぉぉぉぉぉ!」
人語にならない奇声を発しながら、凛は現実逃避――つまり気絶――した。
これが遠坂凛と、給仕――のちにアーチャーとわかる――サーヴァントとの邂逅であった。
《あとがき》
今度こそ続きません。
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
もちろん無断転載は厳禁。
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