イヒダリの魔導書
Fate / Chaos Legion(フェイト / カオスレギオン)
今宵。聖杯戦争に勝つために、遠坂凛が召喚したサーヴァントは――
「俺は……墓掘りだ」
「ぬあぁぁぁんですってぇぇぇぇッ!」
まったく戦力になりえない、野暮な墓掘りであった。
圧倒的な気怠さを感じながら、遠坂凛はベットから上体を起こした。それから幸せが百万回くらい逃げ出しそうな溜息を深々と吐く。とにかく気分は最高に最悪だった。
――夢を見たのだ。生涯を通じて一番だと断言できる、なんともおぞましい悪夢を。
「確か、聖杯戦争を戦うためのサーヴァントを召喚したのよね」
起き抜けで自慢の脳細胞が働かないが、それでも少しずつ悪夢の内容を反芻していく。
七つある
最強のサーヴァントを引き当てたと確信した。必勝は我が物と歓喜した。
だというのに――
肝心のサーヴァントが召喚陣から出てこない。
夢の中の凛が訝ったのも束の間、上階のリビングから鳴り響く轟音、そして衝撃。
慌ててリビングに駆けこんだ凛を待っていたのは、やたらと大きい銀のシャベルを担いだ赤髪の墓掘りだったという、そんな愚にもつかない狂気の夢だ。
「ホント、夢でよかった。……それにしても、なによ墓掘りって? 聖杯戦争で負けて死ぬってことを予見した、新手の皮肉かしら? なんか綺礼あたりが言いそうな冗談だったわね」
凛は、また深く深く溜息をついた。朝から縁起でもない夢だった。早く忘れよう。
凛はパジャマ姿のまま、リビングへと向かった。暢気に「お腹減った」などと考えながら。
そしてこれが、凛の平穏な日常の終わりだった。
「遅かったな……ん? なにを呆けている?」
「うがぁぁぁぁぁ! なんでここに墓掘りがいるのよ!」
そう吼えた瞬間、凛は驚きと憤りのあまり現実逃避――つまり気絶――してしまう。
昨夜の悪夢は現実だったのだ。
こうして遠坂凛と、墓掘りのサーヴァント――ジーク・ヴァールハイトは邂逅した。
《あとがき》
名は体を表す。とある作品のクロスオーバーです。
ちなみに『リリカルなのは』のSSではないので続かないです……たぶん。
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かつて妄想しました
- 翠々
- 2010/06/16(Wed)21:40:04
- 編集
Re:かつて妄想しました
>ジークはアーチャーと士郎に似ているけど明確に違うので(剣を捨てることを望んだり明確な理想や正義がある)対比キャラとして美味しいですよね。
ジークは主役のくせに寡黙すぎるのが難点ですが、かわりに自分の理想や正義を押しつけるタイプではないので、我が強い「Fate」とクロスさせてもうまくいくんじゃないか? と勝手に思っています。
だから士郎やセイバーの話を聞いても、眉くらいはひそめるかもしれませんが、とくに何も言わないんじゃないだろうか。もちろん見て見ぬふりはしないと思いますが。
>ノヴィアも投影と幻視で面白いですよね。
ノヴィアの能力は、ある意味「空想具現化」なので、凛が見たら卒倒しますね(笑)。
>個人的には続き希望
続きを希望していただけるのは大変うれしいです。作家冥利につきます。
しかしイヒダリは「魔法少女リリカルなのは」が好きなので、それに登場するキャラが出てこないSSは基本的に書きません。期待に応えられなくて申しわけありません……
ですが、仮に書くとしたらジークの「レギオンの能力」で、間桐桜の魔術回路に寄生する蟲野郎(臓硯)の魂を無理やり招きだして、堕気で滅殺するシーンは必ず入れますね。
そしてジークに惚れてしまう桜とライダーの様子を描写するんだ(爆)。
ではコメントありがとうございました。
- 2010/06/17 00:49
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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