イヒダリの魔導書
小説の二次創作サイト。
魔法少女リリカルなのはを中心に更新していきます。
『ウーノの疑問』
なんか良いタイトルが思い浮かばなかった。
まあそれは棚上げします。
いわく『逃げるが勝ち』ですな。
ハハハ……
それとぜんぜん関係ないんですが昨日、
友人の家で『しゅごキャラ!』を観てきました。
名前だけは知ってたのですが、放送の時間帯が早朝ということもあり、
一度も視聴したことがなかったアニメです。
で、感想はというと。
けっこうおもしろくてビックリしました。
声優も何気に豪華だったし。
とにかく、なんか創作意欲をかきたてる物語でした。
おもにエロ方面で。
しゅごキャラと融合して精力絶倫になったどっかの誰かが、
物語に出てくるヒロインたちを犯しまくるSSとか。
まあ……書きませんけど。
若干、調整に手間取ったものの、ようやくナンバーズも十二人が揃った。
これで聖王のゆりかごを起動するための鍵――聖王の器を奪還することができるだろう。
「……そういえば、ドクター」
そんな、とある日。公開陳述会および機動六課襲撃の計画を見直していたウーノが、ふと自分の創造主に向かって尋ねた。コンソールを操る指を止め、半身になって背後を振り向く。
ウーノに声をかけられた人物――ジェイル・スカリエッティは、目路の端から端まである巨大なモニターの画面から視線をもぎ離すと、白衣の裾を傲然と翻してウーノと向かい合う。
「どうしたんだね、私の可愛いウーノ。珍しいじゃないか、君が仕事中に私語だなんて」
「ええ、まあそうなのですが……少々気になることができてしまいまして」
「それはたいへんだ。命よりも大切な私の愛娘を悩ませる懸念など、決してあってはならないことだからね。それは地獄の炎より、永遠の責め苦よりもなお度しがたい悪辣だよ」
あざといほどに大げさな仕種と口調で
「ああ、ウーノ。かわいそうなウーノ。愛しい我が娘よ。その身を焦がす業火のすべてを、今から私が引き受けよう。だから話してごらんなさい。何もかもを。包み隠さず
スカリエッティの言動と挙措は、常人の目から見れば狂っているとしか思えない。それが普通の人間の、至極まともな見解だ。百人に問いかければ、九十九人は同じ答えを返すだろう。
だがウーノは違う。彼女はその百人のうちの、唯一にして絶対の例外。妄信的にスカリエッティの
ウーノは、スカリエッティの歪んだ愛情を当然のように受け止め、生真面目に頷いた。
「では
「私のコピーを体内に仕込むのに便利だったから、という理由だけじゃ足りないかい?」
「それは承知しています。ですが、ただ駒として用いるだけならば、より強靭な肉体を持つ男性型のほうが、戦力としては充実していると思ったもので」
「なるほど、至言だね」
勤勉な生徒を誉める教師のような風情で頷くスカリエッティ。それから遠い過去の記憶に思いを馳せるかのように目を眇めた。ひどく陰気な瞳孔が、爬虫類のそれのように縦に細まる。
「私がまだ、戦闘機人計画ではなく、Fプロジェクトに着手していた頃の話だ。戦闘機人の利便と有用性を見定めるつもりで、男性型の戦闘機人を何体か造ったことがあってね」
「Fプロジェクト……ですか。まさかそんな昔にまで遡るとは」
歴史の深遠さに感じ入ったように、ウーノは恭しく相槌を打った。が、対するスカリエッティはというと、一言一言発するたびに憂いの色を深くしていく。
「当時は人体と機械の融合という、戦闘機人を生み出すうえで重要な技術が未発達だったからね。それなりに苦労はしたよ。でもそれは研究を進めていくうちに自然と改善されていった。私が男性型の戦闘機人の開発を遺棄したのは、もっとデリケートで逼迫した理由からだ」
「男性型の戦闘機人には、なにか重大な欠陥があったのですか? たとえば騎士ゼストのように能力発揮が不十分で、人体の構造も健常ではなく不安定だったとか?」
「いいや、そんなことはなかったよ。みんな元気で優秀だった。破棄するのを躊躇うほどに」
「では、なぜ?」
作り物めいて整った美貌に疑問を滲ませるウーノ。小首を傾げて問いかけてくるウーノに、スカリエッティはしばし無言のままだった。それは自分の失敗を話したくないという子供じみた癇癪ではなく、身も凍る恐怖体験を語り出す前の重苦しい逡巡の間に似ていた。
「朝起きて目が覚めると、そこに厳めしい男の顔がある……それが堪らなく苦痛だったんだ」
「……は?」
歯のあいだから押し出すように呟いたスカリエッティの言葉に、ウーノは唖然となった。何も喋らず、ただ銅像のように佇んでさえいれば、充分に美形の部類に入るだろう長身
「筋骨隆々な大男たちに、毎日毎日『お父さま』と呼ばれるおぞましさ! マウンテンゴリラもかくやという容貌に見合わぬ紳士さで、いつもいつでも甲斐甲斐しく世話を焼いてくる圧倒的な違和感! 夢の中にまで彼らの顔が出てきたときには、さすがの私も死を覚悟したよ」
胸のつかえを吐き出すように、一気呵成に
「そんな男性型の戦闘機人とは違い、女性型の戦闘機人は、ありとあらゆる点で私を満足させてくれたよ。声は水晶のように透明だし、容姿も美人だったり愛らしかったりして飽きないし、なんといってもむさ苦しくないところが素晴らしい。まるで砂漠の中のオアシスだった」
女性型の戦闘機人を賞賛しながら、スカリエッティは陶酔の眼差しでモニターを凝視する。
そこにはウーノを除く十一人のナンバーズたちの姿があった。どうやら彼女たちの私生活を覗き見ているらしい。彼女たちの一挙手一投足をやにさがった表情で見守り、彼女たちが笑ったり喜んだりはにかんだりするたびに、それ以上の激情をもって
――はっきりいって変態だった。
「……なるほど。男性型の戦闘機人がいないのは、単にドクターの嗜好の問題でしたか」
愉悦に身をよじるスカリエッティの背中を見つめながら、ウーノは得心がいったように呟いた。それから自身も仕事に戻るため、ふたたびコンソールに向き直る。が、まずはじめに彼女が取りかかったのは仕事の続きではなく、姉妹たちに焦眉の急を告げることだった。
『姉妹たちに警告。ドクターがおまえたちの行動をストーキングしている。以後の行動には充分に注意されたし。――ウーノより』
そんな感じの文言を送ったとたん、柳眉を逆立てて乗りこんできた数名の姉妹たちにスカリエッティは袋叩きにされたが、ウーノは素知らぬ風情で仕事を続けていたという。
親しき仲にも礼儀あり。何事にも節度を心がけて接しよう。
それは行き過ぎたスカリエッティの行動に対する、ウーノからのささやかな訓戒だった。
PR
この記事にコメントする
この記事へのトラックバック
- この記事にトラックバックする
カレンダー
Web拍手
プロフィール
HN:
イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
もちろん無断転載は厳禁。
《連絡先》
aki_ihidari☆yahoo.co.jp
なにかあれば上記まで。
☆を@にしてお願いします。