イヒダリの魔導書
ヤガミケ!? 第八話『最大の敵は、おのれの中に』
『魔法少女リリカルなのはA's』の短編SSを掲載。
ひさしぶりの二次創作SSです。というかイヒダリ自身がひさしぶりにSSを書きました。
それが原因じゃないけれど、今回の話、やや下品になってしまった。
しかもキャラ崩壊を起こしています。
若干、ですが。
なので読む前はお気をつけて。あくまでコメディとしてお楽しみください。
ちなみに今日の短編SSが、今年最後の更新となります。
みなさま、よいお年を。
とある日の早朝。八神家のしんとした廊下に、突如、はやての悲鳴がこだまする。
「シャ、シャマルぅぅぅ! まだか。まだなんか!」
「ごめんなさ~い。最近便秘気味だったから、まだまだかかりそうで~す」
トイレの中からシャマルが返事をした。
ドアの前で内股になっている主の差し迫った声とは相反する気楽な口調だった。
まるで死期を知らされた者のように、はやての顔から血の気が引いていく。
事故で両親を亡くして以来、たった一人で生活してきた彼女は、家族というものに憧れていた。
そんな天涯孤独の少女にとって、ヴォルケンリッターと家族になれたことは、まさに願ったり叶ったりだった。
無残に奪われた幸福が、形は変わったものの、ふたたび戻ってきたのだ。嬉しくないわけがない。
だがトイレの前で渋滞するなんていう日常は望んでいなかった。
これが現実の厳しさだろうか。
一緒に暮らす家族が増えるのも、決していいことばかりではない。
便意の苦痛に耐えながら、はやては目の前のドアを高速で、しかも何度も何度も叩く。
「シャ、シャマル! 早く、早くして! このままじゃ小学校に遅刻する――いや、わたし自身が手遅れになる!」
「それは運が悪かったですね。後始末はちゃんとしてくださいよ」
「こ、この人でなしィィィィッ!」
進退、ここに窮まる。
もう我慢の限界だった。
早急に別の手段を講じなければならない。
でなければ八神はやての人生に致命的な汚点が残るだろう。
そんな展開は断じて阻止しなければならない。
抜きがたい悪夢の恐怖に、なかば発狂しながら、はやては周囲に目を馳せる。
窮地に陥った少女を救済する奇跡は、背後のリビングルームに転がっていた。
それはザフィーラのために用意したペット用のトイレだった。
はやては生唾を飲みこんだ。
シグナムは近所の道場に剣の稽古に。ヴィータとリインフォースⅡはザフィーラと朝の散歩に出かけている。
つまり家にいるのは、はやてとシャマルだけ。
しかもシャマルのほうはトイレに入ったままだ。
はやての所行を見とがめる者は今ひとりもいない。
考える暇はなかった。選択する余裕もなかった。
覚悟を――決めろ。
そして一時間目の授業後の休み時間。
はやては今朝の騒動を、いつもの面子に話した。
「わたしのが長かったせいで、ペット用のトイレで用を足すしかなかったシャマルには、ほんまに悪いことをしたわ。いずれお詫びしないと」
と嘘を吐きながら彼女は心の中で、ひそかに復讐の計画を練っていた。
この屈辱、必ず返す。
覚えていろ、シャマルめ!
終わり。
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
もちろん無断転載は厳禁。
《連絡先》
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