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魔法少女リリカルなのはEine Familie 第五話 『闇の正体』(4)

魔法少女リリカルなのはEine Familie 第五話 『闇の正体』(4)を更新。

(5)は明日、(6)は21日。予定どおりに更新していきます。
よろしくお願いいたします。

それと。
鋼殻のレギオス 第一話を観ました。
アニメーションならではの迫力ある戦闘シーンに、
ぼくは鳥肌が立ちました。
原作とはちょっと違う始まり方だったけど、
べつにたいして気にならなかったし。いたって上々の滑り出しかと。

まあ僕としては、生徒会長のカリアンの声をあててる声優が、
子安さんってだけで大満足だけど。なにせ僕は生粋の子安ファンですから。



 はやてを陥れた一連の事件の真犯人――ローブ姿の魔導師の登場は、まさに青天の霹靂だった。焦燥と憤怒に白熱していたはやての想念を、ただの一瞬で自失させてしまうほどに。

「八神ハヤテ。私ノ声ガ聞コエテイルカ? 私ノ姿ガ見エテイルカ?」

 無気味な韻律(いんりつ)を刻む声に名を呼ばれ、停滞していたはやての思考がふたたび動き出す。
 確かに、この展開は慮外だった。しかし同時に降って湧いたような幸運でもある。
 なにせ相手の犯意を直接問い質せる、またとない機会だ。答えの出ない自問や類推で時間を無駄に空費するよりも、この奇襲を逆手にとって積極的に情報を引き出すべきだろう。
 はやては大きく深呼吸すると、性根を据えて応答した。

「そんなに何度も連呼しなくてええよ。ちゃんと見えてるし、ちゃんと聞こえてるから」

 ローブ姿の魔導師の問いかけが止んだ。はやての声を聞き届けたらしい。
 すると今度は、耳が痛くなるような沈黙が、場に(わだかま)る。
 はやては苛立ち混じりの嘆息を吐く。ただこうして黙っていても、ローブ姿の魔導師の真意は図れない。声音に険が混じるのを自覚しつつ、はやては目つきを鋭くして詰問する。

「で、あんたはいったい何者や? どうして管理局の魔導師ばかりを……いや、わたしの仲間たちばかりを襲っているんや? わたしに恨みがあるなら、わたしだけを狙えばええのに」

 ローブ姿の魔導師の、目深に被ったローブの陰から見える口元に、そのとき情動が浮かぶ。
 ローブ姿の魔導師は不服そうに、まるで拗ねた子供のように唇を尖らせたのだ。その表情は無垢ですらあった。およそ凶悪な次元犯罪者には似つかわしくない表情である。
 予期せぬ反応に面食らったはやてに、ローブ姿の魔導師は憮然とした口調で嘆く。

「憶エテイナイノデスカ、私ノコトヲ? 私ハ、アナタヲ忘レタ日ナドナカッタノニ!」

 はやての当惑は深まる一方である。ローブ姿の魔導師の正体に、彼女はまるで心当たりがない。さきほどグレアムに説明したとおり、彼女の記憶の中に、こんな人物はいなかった。
 眉根を寄せて考えるはやての耳に、何かを閃いたようなローブ姿の魔導師の呟きが響く。

「……ソウダ。私ノ顔ヲ見レバ、キット思イ出スニ違イナイ」

 ガラスを引っ掻くような耳障りな声音で結論づけると、ローブ姿の魔導師は迷いのない挙措で、顔の半分以上を覆い隠すフードを脱ぎ払う。ローブ姿の魔導師の素顔が、あっけなく白日の元に晒される。その瞬間、はやては心臓が止まったかと思った。

「どう、して……ありえない、絶対にありえない! どうして、そんなッ!」

 はやては瞳を零れんばかりに(みは)って、狂ったように頭を振り乱しながら後ずさりする。
 おぼつかない足取りだったため、はやては足を滑らせてしまう。仰向けに倒れそうになった彼女を、間一髪グレアムが後ろから抱きとめた。だが彼女は何も言わない、何も反応しない。
 危ういところをグレアムに助けられたのは判っていた。しかし今のはやてには、それがどこか他人事のような感覚だったのだ。自分の身に起きた出来事を、自分のものと認識できない。
 ローブ姿の魔導師の正体――それは二年前、巨大な魔獣の形を成して現出した闇の書の闇の、それの(いただき)にあたかも角のように生えていた女性体だった。いや、その外見をもっと正確に、より客観的な視点で観察すれば、骨のように白い肌をしたリインフォースを想像させる。
 もっとも似ているのは容姿だけで、闇の書の闇がまとう空気は怪物のそれだったが。
 慄然となるはやてを余所に、闇の書の闇は弾んだ声で、浮かれた調子で再会を祝う。

「逢イニ来マシタ、八神ハヤテ。私ハ、アナタダケニ逢イニ来タ」

 続いて闇の書の闇が、口元に凄愴な笑みを刻む。正気と狂気の狭間めいた艶やかな微笑を。

「八神ハヤテ、アナタヲ待ッテル。海鳴市デ待ッテル。来ナイナンテイウ選択肢ハ認メナイ。 今スグニ、今スグニ来テホシイ。デナイト――」

 灰色のベルカ式の魔法陣を展開しつつ、闇の書の闇は背後を振り向く。その視線の先にいるのは、小学校の屋上に倒れたまま呻吟(しんぎん)する管理局の魔導師たち。闇の書の闇がなにをしようとしているのか、それを瞬時に悟ったはやての顔から血の気が引いた。

「やめてッ!」

 制止など叶わないとは知りながら、それでもはやては叫ばずにいられなかった。
 彼我の距離を縫い結ぶ閃光。弱々しい悲鳴をあげて石化する一人の武装局員。それら悪夢の光景は、まるで長い時間をかけて進行した出来事のように、はやてたちの脳裏に焼きついた。

「……惨いことを」

 自分が石化したように体を硬直させるはやてを抱きしめながら、グレアムが暗鬱に呻いた。
 浅薄(せんぱく)な脅迫を済ませ、正面を向き直った闇の書の闇が、さも満足げに小鼻をうごめかす。

「コウシテ一人ズツ、石ニ変エテイク。全員分ノ石像ガデキアガルマデ、後ドノグライ時間ガカカルデショウ」

 締めくくりに凶悪な微笑を見せると、闇の書の闇はすげなく通信を切った。


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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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