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出撃! ベルカトロ~ン!?

さてさて。昨日約束したとおり、短編SSを更新します。
ちなみにタイトルに意味はありません。
最近、実写版のトランスフォーマー(映画)を見たため、それに影響されただけです。

コンチェルトノートもフルコンプしたし、ようやくオトメスマイルに取りかかれます。
楽しみ楽しみです。


 地球は存亡の危機を迎えていた。
 動物や植物を抱擁する雄大なる大地も、生命を育む母なる海も、無窮に拡がる碧い空も、宇宙船地球号に乗艦している霊長の王たる人類も。
 例外は一切ない。それらすべてが桁外れの窮地を迎えていた。
 だから我々は敢然と立ち向かわなければならない。この美しい惑星を滅ぼさないために。自分たちの居場所を失くさないために。なによりも大切な人たちを護るために……


「あ~はっはっはっは! いい気味だ、虫けらども! 泣け、喚け、逃げ惑え!
 この世にもう神はいない。いるのはこの私、破壊大帝ナノハ・タカマチだけだ!
 恐れ慄け跪け! 私に逆らう者は容赦しない。残らず頭を冷してくれるわ!」

 ――海鳴市。
 萌えたつ翠巒の緑と、鮮やかな海洋の蒼に縁取られた風光明媚な地方都市。そんな美しい景観を天使の羽衣のようにまとう地方都市も、しかし今はその原型を留めないほどに、これ以上ないというほど徹底的に破壊しつくされてしまっていた。
 惑星ミッドチルダからはるばるやってきた残忍狂気の支配者、不羈傲慢の破壊大帝ナノハ・タカマチの猛威によって。おとぎ話の世界でしかありえなかった魔法という超常現象を、さも当たり前のように行使する白い魔王のせいで。
 かつて海鳴市と呼ばれていた平和な街は……もうそこにはない。
 炭を頭からかぶったかのように全身煤だらけの人々がアホみたいに狂乱し、馬鹿の一つ覚えのように轟々と燃えまくる火炎が建物を軒並み灰へと変えていく。
 その光景は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。思わず目を背けたくなような有様だった。
 人々は求めた。アンパン○ンのごとき心のクリーンな正義の味方を。多額の金品を要求するブリブリざ○もんでは決してない、純粋な信念を持った救いのヒーローを。
 そして壊れた街を復興する際、はたして保険がおりるのかどうかを真剣に考えながら。
 しかし、そんな人々の切実な願いを、ナノハ・タカマチは鼻を鳴らして一蹴する。

「おまえたちのくだらない祈りに耳を傾ける者などいはしない。国も保険など出しはしない。他にもやることがいっぱいあるからだ! おまえたちは見捨てられたんだよ!」

 上空から眼下を睥睨しつつ呵々冷笑すると、ナノハ・タカマチはレイジングハートに俯角をつけて構える。照準は壊滅寸前の海鳴市。超ド級の必殺魔法でとどめを刺すつもりだ。

「でも安心して。おまえたちの絶望もこれで終わり。永久にお休みなさい……あの世でね!」

 満面に嗜虐の笑みを浮かべるや、ナノハ・タカマチはなんだか凄いビームを躊躇いなく撃つ。ナノハ・タカマチが九歳の愛くるしい普通の魔法少女だった時代に、たしかディバインバスターと呼称されていた魔力砲が、廃墟も同然の海鳴市に突き刺さる――その刹那。

「待てッ! あんたの悪事もそこまでや!」

 横合いから飛び出した人影が、海鳴市に直撃するはずだった魔力砲の一撃を代わりに受ける。
 瞬間、とにかく凄まじい爆発と轟音が虚空に反響した。
 哀れ魔力砲の餌食となったその人影は、まるで焦げた木の葉のようにひらひらと地表に落下し……だがダメージをまったく感じさせない見事な姿勢で着地を決めた。
 水際立った着地をみせたその人影が、上空にいるナノハ・タカマチを振り仰ぐ。
 ナノハ・タカマチは忌々しげに顔を歪めると、敵意のこもった声音で一喝した。

「やはり来たか、八神はやて!」

 八神はやてと呼ばれた九歳くらいの少女は、乗っている車椅子の向きを一八〇度回転させると、あらためてナノハ・タカマチを仰ぎ見た。

「……ナノハ・タカマチ。いや、なのはちゃん。これ以上、罪を重ねるのは止めるんや。こんなことしたって、アリシアちゃんに誘惑されたフェイトちゃんは戻ってなんてこない!」

 はやての口から『アリシアとフェイト』の名が出たとたん、ナノハ・タカマチの双眸が怒りに燃える。ナノハ・タカマチにとって、それは他人に踏み入られたくない領域の事情だった。しかも訳知り顔で諭されたとあっては、そうそう自制が効くものではない。

「うるさい! これ以上、無意味な戯言をほざくなら、おまえも海鳴市も全部まとめて吹き飛ばす! 私を怒らせたことを、私を裏切ったことを、死をもって償わせてやる!」

 癇癪を爆発させたナノハ・タカマチを見上げながら、はやては悔しげに唇を噛んだ。

「もう……ダメなんか? わたしたちはもう、あの頃のようには戻れへんのか?」
「くどい! 私はもう過去なんて棄てた。悪魔と蔑まれてもかまわない。だったらその悪魔らしいやり方で、きっと世界を変えてみせる。ここにいる私は……欲望を憎む断罪者だ!」
「……なのはちゃん」
「その名で呼ぶな!」

 悲憤慷慨するナノハ・タカマチ。
 はやてはしばらくのあいだ、悲しげな瞳でナノハ・タカマチを見つめていた。が、やがて毅然とした光を両眼に灯す。それは決意の眼差しだった。嫉妬に狂うナノハ・タカマチを、もとの優しくて友達想いの高町なのはへと戻すことを決めた、確固たる意志のカタチ。

「だったら力ずくででも、なのはちゃんを止める。同じ惑星の人間として、仲間として、親友として。どんなことをしてでも、なのはちゃんを救い出してみせる!」

 はやてはネックレスのように首に巻きつけていた剣十字の待機デバイスを右手に持ちかえる。そしてその手を上空に向かって差し伸ばした。

「リインフォース――セットアップ!」

 はやての雄々しい叫び声に次ぎ、彼女を乗せた車椅子が光り輝きながら宙に浮く。さらに物理的にも形而下的にもありえない工程を経て、その車椅子は剣十字の杖と、さらにはやての体を鎧のように覆うバリアジャケットへとトランスフォームを遂げていた。
 続いて、はやては畳みかけるように守護騎士システムを起動。彼女に付き従う四人の守護騎士たちを召喚する。

「いくよ、わたしの騎士たち。なのはちゃんを元の優しい女の子に戻すんや!
 出撃! ベルカトロン!」

 先陣を切るはやての号令一下、飛行魔法で鳥のように翔け出し、ナノハ・タカマチへと迫るヴォルケンリッター。鬨の声を張りあげて肉薄する五人の勇姿は、まるで怒涛のようだった。
 しかし、そんな気迫を目の前にしても、ナノハ・タカマチの不敵な笑みは崩れない。

「ちょこざいな。みんなまとめて次元の藻屑にしてくれる! レイジングハート!」

 周囲の空間に散逸する魔力が、まるでレイジングハートの杖先に引き寄せられるように集っていく。さながら流星のごとく集束する魔力の光景を、はやては知っていた。その圧倒的な集束魔法は、依然はスターライトブレイカーと名づけられていたそれに間違いない。
 そうと判断を下すやいなや、はやてもそれに対抗するべく、ラグナロクの発射態勢に移行。スターライトブレイカーを迎撃するために身構える。

「ファイナルビックバン――」
「響け終焉の笛――」

 緩慢になる時間。刹那が永劫かと思えるほどに感覚が間遠になっていく。
 そして次の瞬間、その遅滞を打ち破る二つの咆哮が轟然と迸った。

「アタァァァッッッック!!」
「ラグナァァァロクゥゥ!!」


 「っていう劇を思いついたんやけど、どうかな? 老人ホームのおじいさんたちにウケるかな?」

 期待に目を輝かせるはやてを見つめながら、なのはは残念そうにかぶりを振った。

「ウケないと思うよ。だって意味判らないし、どうして十九歳なのかも判らないし、それになにより、ファイナルビックバンアタックってなに?」
「そんなっ、馬鹿な! この話のどこに抜かりがあるっていうんや!」

 はやてが頭を掻きむしりながら気色ばむ。
 そんなはやての反応に、なのはは憂鬱そうに溜息をついた。
 一方、はやてとなのはの後ろにいるフェイトやヴォルケンリッターの面々は、見ているだけで憐れみを誘う暗澹たる表情で沈みこんでいた。

「……誘惑。私、アリシアと誘惑される役なんだ……。しかも物語に登場してないし」
「私たちなんて登場してもセリフなしだったぞ。しかもなんだ? ベルカトロンって?」

 フェイトとシグナムはお互いに顔を見合わせると、深々と嘆息したのであった。


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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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