イヒダリの魔導書
『Dies irae ~Acta est Fabula~』の感想
『Dies irae ~Acta est Fabula~』をプレイしました。
これは2009年の12月にlightから発売されたPCゲームです。
ジャンルは“伝奇バトル”モノ。
同じジャンルの最高峰『Fate stay/night』と、よく比べられていますが、比較したくなる気持ちもなんとなくわかります。
ひいき目なしに、とてもよく出来ていたので。
攻略対象キャラは『綾瀬 香純』、『櫻井 螢』、『マリィ』、『氷室 玲愛』の4人。
攻略にかかった時間は約40時間ほどでした。
長かったです。
このゲームのテーマは『永劫回帰からの脱却』という小難しいもの。
砕いて言うなら、ループから抜け出して新しいルートに進もうぜ、という感じですね。
広げた風呂敷をちゃんと畳めるのか不安になるテーマですが、完成に時間をかけただけあって、全ルート納得(説明過多でテンポが悪いのが玉に瑕だったが)の出来でした。
前座的なポジションだと思っていた『香純ルート』や『螢ルート』が、プレイ開始直前までの不躾きわまる予想に反して楽しめたのも大きい。
どうせ全体の補足みたいな話になるんでしょ、と侮っていたので、これは良い意味で期待を裏切られる結果だった。
ただシナリオライターが心から書きたかったのは、『マリィルート』と『玲愛ルート』だと感じました。
話が核心の部分に触れていたし、うまく言葉にできませんが、なんかパワーが圧倒的だったので。
あと一方のルートが“主人公とその仲間”にスポットを当てているのに対して、もう一方のルートが“敵側”の動機や確執にスポットを当てていると思ったから。
身も蓋もなく言うと上記の2ルートだけで、この『Dies irae』という物語は完結します。
つまり“永劫回帰から脱却”していない『香純ルート』と『螢ルート』は、やはり『マリィルート』(裏設定によればマリィルートも永劫回帰から脱却していないらしいが)と『玲愛ルート』のオマケでしかなかったわけです。
あるいはファンサービスというべきだろうか?
このゲームは『燃えゲー』と思わせつつ、実際は『キャラゲー』の要素が濃いので、好みのキャラがいないと楽しめないと思う。
あと驚嘆したのは声優さんの演技です。
みんなすごかった。
おそらく声優さんたちの尽力がなかったら、このゲームのおもしろさは半減だったと思う。
それくらい見事な演技でした。
あらためて「声優さんってスゲー!」と感じました。
続いては。
このゲームの全ルート中、もっとも評判が良い(?)らしいマリィルートを、かいつまんで紹介します。
ただしネタバレを含む(というかネタバレばかり)ので、ゲームをクリアした方、またはネタバレが気にならない方以外は、いったん考える間をおいてからお進みください。
第一章。
ゲームの主人公『藤井 蓮』と彼の親友『遊佐 司狼』は、とある理由で殺し合いじみた喧嘩をして街の病院に入院。
それから二ヶ月後。
無事に退院した主人公は、ヒロインのひとり『綾瀬 香純』とともに行った刀剣博物館で、不思議な体験する。
それが主人公の日常を破壊する発端だった。
第二章。
市内では無差別連続通り魔事件が起こりはじめる。
犯人の手口は斬首。
それは主人公が最近になってよく見る“断頭台の悪夢”と同じ殺害方法だった。
その奇妙な共通点に、確たる理由がないにもかかわらず、主人公は不安を覚える。
そしてついに主人公は、平凡な日常の終わりを告げる、とびきりの凶事と出遭う。
これが宿敵『聖槍十三騎士団』とのファーストコンタクトであった。
第三章。
半死半生にされたものの、かろうじて命を拾った主人公。
しかし悪夢は終わっていなかった。
主人公が通っている学校に聖槍十三騎士団の『櫻井 螢』と『ルサルカ・シュヴェーゲリン』が転入してきたのだ。
自分に関係があるかもしれない連続通り魔事件。
オカルトじみた超能力を行使する騎士団の登場。
その非現実的な出来事を前に、主人公は極限まで疲弊していく。
そんな過酷な状況の中で彼は、通り魔事件の犯人と、自分の呪われた運命と対峙する。
第四章。
聖槍十三騎士団と戦う力――『聖遺物』を得た主人公。
しかし手に入れた力は、まったく随意にならない。
その扱いに彼は悪戦苦闘する。
そんなとき騎士団のひとり『ロート・シュピーネ』が主人公に襲いかかる。
香純を誘拐したシュピーネに激昂する主人公。殺す気まんまんで戦地へと向かう。
はじめは聖遺物を操るシュピーネに苦戦する主人公だったが、戦いの中で自身の聖遺物『罪姫・正義の柱(マルグリット・ボワ・ジャスティス)』を形成。
シュピーネの打倒に成功する。
だが一連の出来事の裏では、聖槍十三騎士団の副首領『ヴァレリア・トリファ』が、怪しく不気味に暗躍していた。
第五章。
メインヒロイン『マリィ』が登場する話。戦闘はない。
奇蹟みたいな平穏が主人公に訪れる。
結局は嵐の前の静けさだったが……
第六章。
謎の少女『本城 恵梨依』に導かれた主人公は、袂を分けたはずの親友『遊佐 司狼』と再会する。
話によると二人も聖槍十三騎士団と揉めているらしい。共闘を申しこんでくる。
いくら絶交したとはいえ、仮にも司狼は友人だった。そんな彼を死地に立たせるなど言語道断である。主人公は努めて冷淡に、この申し出を拒否する。
その夜。
主人公は聖槍十三騎士団の『ヴィルヘルム・エーレンブルグ』と『櫻井 螢』に襲撃される。
2対1の状況。当然ながら主人公はピンチに陥る。
そのとき突如として司狼が介入してくる。主人公は不承不承ながらも共闘することに。
が、戦況は良くなるどころか、逆に最悪の展開を迎える。
第七章。
聖槍十三騎士団の首領『ラインハルト・ハイドリヒ』に聖遺物を砕かれた主人公。
そのせいで人事不省に陥った彼は、気がつくと敵の拠点に囚われていた。
聖遺物を破壊されて文字どおり無力となった主人公は、ヴァレリア・トリファに導かれるがまま、教会の地下の黒円卓でふたたびラインハルトと対峙する。
そこで主人公は宣戦布告と、奪われたマリィの返還を要求。マリィを取り戻す。
しかし戻ってきたマリィは以前の、情緒の乏しい人形めいた少女ではなく、わずかながら人間らしくなっていた。
その変化に戸惑いながらも、主人公はマリィを、はじめて女の子として意識する。
第八章。
見逃される形で敵の拠点から抜け出した主人公とマリィ。
ふたりは香純の安否を心配し、いったん自宅のアパートに戻る。
ちょうどそのとき恵梨依から、香純を保護した、という旨の電話がかかってくる。
香純の無事を確認した主人公とマリィは、敵の儀式の要衝であるらしい学校に向かう。
が、学校を襲撃してくると予想した主人公の考えは外れてしまう。
敵が現れたのは司狼と恵梨依が拠点にしているクラブだったのだ。
大胆かつ不敵である司狼と恵梨依だが、残念ながら、聖槍十三騎士団と戦う力は持っていない。
そのため襲撃者であるルサルカの聖遺物に為す術なく“喰われて”しまう。
第九章。
主人公は市内の病院にいた。
大量虐殺の現場で発見された香純が運びこまれたからだ。
彼女は外傷こそないものの意識不明。
同じ場所にいたはずの司狼と恵梨依に至っては生死すら定かではない。
その事実が主人公の胸中に、澱のようにわだかまっていた。
けれど彼に自分の迂闊を悔やんでいる暇はなかった。
騎士団の『リザ・ブレンナー』が、櫻井をお供に従えてやってきたのだ。
そのふたりを迎え撃つ主人公。
しかし本気を出した櫻井に苦戦して、リザの侵攻を止めることができない。
かててくわえてラインハルトの近衛兵である三騎士のひとり『エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ』まで登場して絶体絶命の窮地に。
だが何を思ったのか、急にリザが反旗を翻す。
主人公と意識不明のままの香純を逃がそうとしたのだ。
その背信行為にエレオノーレが激怒。容赦なくリザを処刑する。
第十章。
夜の礼拝堂に玲愛、ルサルカ、ヴィルヘルムが集まる。
すると殺気立ったヴィルヘルムが、謎めいた言動でルサルカを挑発する。
それを敵対行動と見なすルサルカ。すぐさま戦闘態勢に移行する。
そのとき異変が起きる。
ルサルカの聖遺物に喰われた『遊佐 司狼』が、彼女の聖遺物の支配権を奪って復活を遂げたのだ。
ルサルカの力の大半を奪い取った彼は、なし崩し的にヴィルヘルムと戦闘を開始。
司狼は格上の相手に対し、うまく機転を利かせながら、互角の戦いを繰り広げる。
やがて二人とも満身創痍になる。
そこに三騎士のひとり『ウォルフガング・シュライバー』が介入。
完全に不意を衝かれたヴィルヘルムは、シュライバーにとどめを刺されてしまう。
そして聖遺物を失ったルサルカも死亡する。
第十一章。
司狼が聖遺物を手に入れて戻ってきた。
仔細はわからない。が、ともかく友人の帰還を素直に喜ぶ主人公。
だが彼は意識の深淵で、騎士団の副首領『メルクリウス』から自分の出生とアイデンティティを告げられ、失意の底に落とされる。
しかしマリィの献身と慰撫によって、主人公は“確固たる自分”を見いだす。
一方。
奇蹟に奇跡を重ねて生き残った櫻井は、トリファとの会話で、おのれの願望が叶えられないことを悟る。
さらに唯一の心の支えだった『トバルカイン』をエレオノーレに焼却されてしまう。
時を同じくしてトリファも反逆者と見なされる。
そして三騎士のひとり『ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン』に処刑されてしまう。
かくしてありとあらゆる希望が失われ、とうとうラインハルトが現世に舞い戻る。
第十二章。
ついに世界を侵しはじめたラインハルトの軍勢。
その脅威に対抗するべく、主人公は櫻井を仲間に引き入れ、勝ち目のない決戦に臨む。
主人公、司狼、櫻井の三人は懸命に戦う。だがラインハルトには傷ひとつ負わせられない。ただ理不尽なまでの戦力差を思い知らされるだけに終始する。
ほどなく騎士団の儀式が完成し、ラインハルトと三騎士が完全に実体化する。
第十三章。
死闘は場所と相手を変えて進行する。
主人公 対 ベルリッヒンゲン。
司狼 対 シュライバー。
螢 対 ザミエル。
その中で主人公は、おのれの渇望に目覚める。
静止する世界――『新世界へ語れ超越の物語(アルゾ・シュプラーハ・ツァラトゥストラ)』の流出だ。
そのおかげで司狼と螢は、ほとんど相討ちみたいな形だが、それぞれの相手を撃破する。
ただひとり主人公だけが実力で、目の前の相手を打ち倒してみせる。
そして戦いは最終局面に推移。
主人公とラインハルトの拮抗が世界に穴を穿ち、本来なら入ることのできない特異点を露出させる。
そこで主人公とラインハルトは、“同じことを生まれて死ぬまで永遠に繰り返す”という法則を作った、世界の神と言うべき存在を認める。
てな感じです。
まだ話は途中ですが、この先はうまく書けなかったので、ここで終わりにします。
マリィルートの結末を知りたい方は、できればゲームを買って、ご自分の目で確認なさってください。
それでは。
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
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