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オワタ式『魔法少女リリカルなのは』

 勢いだけで書いた短編SSです。
 当初は、十行ぐらいで終わる雑記になる予定だったんだけど、書いてるうちに長くなってしまったので、ふたつに分けることにしました。
 ジャンルは、たぶん「なのフェイ」かな?
 話の内容は、誰でも思いつくような使い古されたやつです。
 タイトルどおり、いろんな意味で終わっていますが、読んでくれると嬉しいです。
 あと小説の書き方? それとも文脈の構成? みたいなのを変えてみました。
 以前は地の文と台詞のあいだに一行、空白を入れてたんですが、今回のSSでは空白を入れずに書いてみました。そしてブログに載せてみました。
 はたしてどちらのほうが見やすいのか……
 ご意見、ご指摘などをいただけるとありがたいです。
 


 雲ひとつない上天気の空は、凍った湖のように青かった。
 向かい風は身を切るほど、とまではいかないものの、この季節にふさわしく冷たい。
 寒気に首筋をなぶられたフェイト・T・ハラオウンはコートの襟元をかきあわせた。
「もうすっかり冬だね。吐く息が白いよ」
「うん、そうだね。こんなに寒くなるのがわかってたら手ぶくろを持ってきたのに」
 なのはが唇の前で合わせた両手に白い息を吹きつける。いかにも寒そうな仕草だ。
 それを見ていたフェイトは一大決心をする。
 ――よし。
「あ、あのね。じつは私に、いい考えがあるんだけど」
「うん? いったいなにを考えついたの?」
 なのはが小首をかしげて訊いてくる。
 フェイトは左右の手をぎゅっと握りしめて気合を入れた。
 ここが勝負どころである。
 ……行け!
「えっとね。きっとこうしたら、なのはの手も暖かくなるんじゃないかなぁって」
「あ、フェイトちゃん……」
 なのはが呆然と、あるいは呆気にとられたような声をもらす。
 冬の冷たさで赤くなった彼女の両手を、フェイトのそれが上から包みこんだのである。
 なのはとフェイトは無言のまま向かい合う。一瞬が長く長く引き伸ばされていく感覚。
 耳の奥で血の逆流する音がドクドクと生々しく聞こえた。
 フェイトは緊張に顔をこわばらせたまま、親友の表情を上目遣いでおそるおそる窺う。
「どうかな? ちょっとは暖かくなったかな?」
 期待と不安を滲ませるフェイトの問いに、なのはは三秒ほど間を空けたあとで答えた。
「……フェイトちゃんのエッチ……」
「はあッ! なんでそういう結論になるの!」
 たちまちパニックにおちいるフェイト。そのルビー色の瞳に落ちつきの色は窺えない。
 それでも親友のぬくもりを手放さなかったのはフェイトの意地である。
 負けるものか、というアンビバレンツな気概に燃えていたのであった。
 そんなフェイトの内心を知ってか知らずか、なのはは、まるで子猫をからかうような悪びれない笑顔を浮かべている。そして邪気はないが厄介きわまりない言葉をつなげた。
「でも許してあげる。だってフェイトちゃんの両手、すごく柔らかくて暖かいから」
 フェイトはぐらついた。外面的にではない。心の中で想像を絶する激動が起きたのだ。
 頬の筋肉がだらしなく弛むのを感じる。もはやフェイトに辛抱する意思は皆無だった。
 こうなったら言うしかない。長いあいだ自分の胸の内だけに秘めてきた切実な想いを。
 そうだ。この機会を逃してはならない。告白するんだ。想いをたけをぶちまけるんだ。
「な、なのは! じつは私、ずっとなのはのことが――」
 ふと言いさして、フェイトは視線の向きを変えた。瞳を凝らして前方を見据える。
 さっきまで自分たちが歩いてきた道のはるか向こう側に二つの人影が現れたのだ。
 そのシルエットは砂埃を蹴立てながら猛然と駆けていた。どんどん近づいてくる。
 フェイトたちと同じ小学校に通うアリサ・バニングスと月村すずかの姿であった。
「え? ど、どうして? 二人とも通学路はここじゃなかったはず――」
 フェイトが当惑した声をあげたが、目前に迫った両者は聞いていない。
 なのはとフェイトのあいだに割りこむや、繋がれた彼女たちの両手に手刀を落とす。
『エンガチョーップ!』
 ブチッ、という音とともに、なのはとフェイトの手が無理やり引き剥がされてしまう。
 フェイトは目に見えて狼狽した。
 いったいなにが起きたのだろう……
 茫然自失のフェイトを尻目に、アリサとすずかはケタケタ笑いながら遠ざかっていく。
「あたしたちを差し置いて幸せになられてたまるか。バーカ、バーカ、バーカ!」
「これは天誅です。うふふ」
 言いたいことだけいって走り去る二人の幼なじみ。ものすごく楽しそうな様子だった。
 それを黙然と見送っていたフェイトだったが、なにをされたのかを理解して冷静になるや、胸の内にふつふつと埋み火めいたものを感じる。鷹揚な彼女には珍しい憤りだった。
 まったくもって理不尽な話である。悪ふざけも大概にしてほしいものだ。せっかく……
「せっかくフェイトちゃんと良い雰囲気になれたのに……」
 途端にフェイトはギョッとした。
 おのれが言わんとしていた台詞を先に言われたからではない。
 そう呟いたなのはの、親友の口調が、底冷えするような陰気を孕んでいたからだった。
「ふふ。アリサちゃん、すずかちゃん。わたしたちの貴重な時間を侵した罪は重いよ」
 冷ややかにそう言いながら、なのはが待機状態のレイジングハートを取りだす。
 それから彼女は、すみやかにセットアップを終えてバリアジャケット姿になる。
 フェイトは戦慄した。なのはは本気だ。本気でアリサとすずかを始末する腹づもりだ。
「フェイトちゃん、少し待っててね。すぐに悪を滅ぼしてくるから」
「いや、それはちょっとやりすぎではないかと……」
 フェイトは控えめな声で意見を述べたが、なのはに理解した様子は見受けられない。
 飛行魔法を用いて即座に幼なじみのあとを追いかける。飛行速度は全力全開だった。
 その姿が、またたく間に小さくなっていく。五秒も経たないうちに視界から消える。
 ひとり寒空の下に残されたフェイトは、アリサとすずかの冥福を心の底から祈った。
「神の御加護を」

 

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イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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