イヒダリの魔導書
ヤガミケ!? その2
恒例の適当SSの時間がやってまいりました。
その2と題していますが、その1との前後関係はありません。
一話完結ものの短編SSです。
内容はギャグ。ていうか、ただの悪ふざけです。
先に進む場合は気を引きしめてかからないと心臓発作を起こすかも。(苦笑)
なんか言いたいことがあったんだけど、Janne Da Arcの『振り向けば』をノリノリで聴いてたら忘れてしまった……
なので代わりに。
鋼の錬金術師はどんどんおもしろくなっていきますね。
テレビの演出も各キャラの心理描写もわかりやすいし。
なによりストーリーに無駄がない。
あらためて「これは人気が出るよなぁ」と思った。
羨ましい構成力だ。
イヒダリも痴呆症ぶりを露呈している場合じゃないな。
もっと精進せねば。
新暦65年。海鳴市を舞台に繰り広げられた『闇の書事件』が終結。
その後に管理局から保護観察を受けた『八神はやて』と『ヴォルケンリッター』たち。
多くの罪を犯してしまった彼女たちは、その償いのために『あること』を決意する。
それは世のため人のため、社会に対して『無償奉公』をすることであった。
そして今ここに――八神家の面々による粉骨砕身のボランティア活動がはじまる。
第二話(?)『鉄壁の八神家』
「ておあぁぁぁぁッ!」
とある日曜の昼すぎ。
唐突にザフィーラが咆哮した。たいへん近所迷惑な奇声である。
その叫びにビックリしたヴィータは、庭先に訝しげな視線を送りつけた。
「ザフィーラの奴、今度はなにしてんだ?」
「なんでも
ヴィータの疑問に答えたのは、ダウンジャケットを着込んだシグナムである。
まだ9月の初頭であるにもかかわらずだ。もはやバカとしか言いようがない。
「ザフィーラ、調子はどうだ?」
「シグナムか。見てのとおりだ。おまえの協力のおかげで、なんとかなりそうだ」
着膨れて力士のようになったシグナムに、フンドシ一丁のザフィーラが微笑みかけた。
奇妙な対比である。ふたりの身に、いったいなにが起こったのだろうか?
シグナムに続いて庭先に出たヴィータは、ザフィーラの正面にあるものを見て驚く。
「うおッ! そこにあるのはレヴァンティンじゃねえか。どうしてこんなところに?」
レヴァンティンは
しかも刀身には紅蓮の炎が燃えている。まるで松明の風情だ。
それを認めて呆気にとられるヴィータに、ザフィーラは誇らしげに笑って解説する。
「狼牙風風拳をマスターするためにシグナムから借り受けたのだ。騎士の魂である剣を私に……シグナムの愛情には感謝してもしきれない。結婚してくれ」
「ザフィーラが訓練に失敗して丸焼けになることを期待していたんだが……なかなかうまく事は運ばないようだ。もうすこし火力を強くしてみよう」
はにかむザフィーラを尻目に、シグナムはレヴァンティンの火勢をさらに強くする。
「よしザフィーラ。私たちに練習の成果を見せてくれ」
「よかろう。これが盾の守護獣ザフィーラさまの狼牙風風拳だ!」
あたたたたたた……
ザフィーラは拳の連打を繰り出した。勢いよく燃えさかるレヴァンティンに。
あち、あちちちちちち……
ザフィーラは拳を火傷した。彼は30のダメージを受けた。
その奇行を見ていたヴィータは、あんぐりと開いた口が塞がらない。
「ば、ちょっとなにしてんだよ。そんなの熱いに決まってんだろ!」
「取り乱すな。あれはザフィーラの研鑽が足りなかったせいだ。拳を突き出してから手元に戻すさいのスピードを0コンマ1秒にすれば防げたはずの弊害だ」
気色ばむヴィータとは対照的に、シグナムは冷静そのものだった。
「おい獣。突きのスピードが落ちてるぞ。今朝、私の部屋に来るやいなや『オレに狼牙風風拳を教えてくれ!』と直訴してきたときの迫力はどうした? 気合を入れろ!」
「そうだ。オレはなんとしても狼牙風風拳をマスターしなければならんのだァァァァ!」
途端にザフィーラの手数が増えたように見えた。言うまでもなく錯覚だろうが。
ところがシグナムは満足げな様子。腕組みをして何度も頷いている。
「どうやら完璧に『北斗百裂拳』を体得したようだな。私も師匠として鼻が高い」
「はい。このご恩は決して忘れません。オレの子供を産んでください」
はっはっはっは~、と胸を反らせて笑い合うシグナムとザフィーラ。
おいおい……練習してたのは狼牙風風拳じゃなかったのかよ。
と、ヴィータは心の中でツッコミを入れた。
「ていうかさ、なんで狼牙風風拳を覚えようとしたんだよ」
おもむろにヴィータが訊ねた。
するとザフィーラが真顔になった。フンドシ一丁のまま言葉を繋げる。
「必殺技があると主役になれるからだ」
「……はあ?」
わけのわからないことを言い出した。
どうして必殺技があると主役になれるのだろうか。
ヴィータは目で問いかけてみる。
ザフィーラは狼牙風風拳の練習をしながら呟いた。
「高町なのはにはスターライトブレイカーが、フェイト・T・ハラオウンにはホームランが、そしてシグナムには紫電一閃がある。しかし私には『ておあぁぁぁぁ』しかない」
そもそも、ておあぁぁぁぁ、は必殺技じゃねえし。
ヴィータはそう思ったが、めんどくさかったので訂正しなかった。
ザフィーラは話を続ける。
「鋼の軛は、のちにシャマルも使えることが判明した。だから私は新しい必殺技を渇望したのだ。誰にも真似されない無二無双の奥義をな」
「狼牙風風拳だって他人の技じゃねぇか。ぜんぜん無二無双じゃねぇぞ」
「そして私は見事に狼牙風風拳を会得した。これで私がリリカルなのはの主役だ!」
ヴィータの言葉は右から左に流された。
ザフィーラは練習をやめて気炎を吐いている。
この犬は、こんなに頭がおめでたいやつだったろうか。
――と、
「それは聞き捨てならないな。どこの馬の骨がリリカルなのはの主役だと?」
挑戦的に言い放ったのはシグナムである。
彼女はダウンジャケットからスキーウェアに着替えていた。……なんで?
「リリカルなのはの主役は、このシグナムと最初から決まっている。獣の出る幕はない」
「黙れ巨乳。狼牙風風拳の実験台にするぞ」
ザフィーラが即座に言いかえす。
彼はフンドシから葉っぱ一枚になっていた。……だからなんで?
「おもしろい。烈火の将にケンカを売ったことを死ぬほど後悔させてやる」
「そっちこそ。盾の守護獣あらため『ザ・ヒーロー』となった私の実力に平伏すがいい」
睨み合うバカ二人。
ヴィータは頭を抱えた。
どうしてこんなことになったのか理解が及ばない。
ああ、誰か助けてくれ。
ヴィータは敬虔な修道女のように心の中で祈った。
そのとき。
「シグナムもザフィーラも、ちょっと待て。真の主役ならここにいる」
背後から声が聞えてきた。
驚いて振り向いたヴィータは、そこに八神はやての姿を見いだした。……が。
「は、はやて? いったいぜんたいどうしたんだ? そんなにげっそりとやつれて」
縁側に佇む少女の顔色は目に見えて悪かった。
さながら幽鬼の様相である。指先でつついただけで倒れそうだ。
はやては力なく、ふっ、と笑った。
「おつうじが止まらなくてな。それで今朝からずっと個室にこもってたんや」
「マジかよ。なんか悪いもんでも食ったんじゃねえのか」
ヴィータは眉をひそめて心配する。
「とにかく具合が悪いなら無理しちゃダメだろ。ベットで横になってろよ」
「い、いや。でも真の主役を決める対決に参加しないわけには……」
いまにも死にそうな顔をした夜天の王がためらう。
癇性なヴィータは額に青筋を浮かべた。
「おまえもかよ! まさかシグナムとザフィーラのバカがうつったんじゃないだろうな」
「言うに事欠いて失礼なことを。私たちはバカではないぞ。極めてマジメだ」
ヴィータの眼前にまわりこんだシグナムが不機嫌そうに反論する。
「そういえば主はやて。あなたは昨日の夜、なにか食されていましたよね?」
「寝る前にな。たしか……」
「ポイントカードで購入した定価126円のカップアイスです。バニラ味の」
はやての言葉を引きとったのはザフィーラだ。
彼もまた、ヴィータの目の前にまわりこんでいる。
はやては得心がいったように頷いた。
「お風呂あがりにヴィータと一緒に食べたんや。ヴィータはイチゴ味だったけど」
その途端、シグナム、ザフィーラ、はやての視線が一箇所に収束する。
その対象者であるヴィータは慌てた。なんだこのピリピリした空気は。
「おいおい冗談じゃねえぞ。まさかあたしを疑ってんじゃねぇだろうな」
「疑うもなにも、おまえが犯人だろう」
シグナムが光の速さで結論した。
考えるのめんどくさい、だからおまえでいいや、そんな投げやりな言い方で。
「アイスに毒物を混入するなんて……ああヴィータ、なんてひどい子!」
はやてが腹を押さえてしゃがみこむ。
と、ふたたびトイレに駆けこんでいってしまう。そうとう具合が悪そうだ。
「主はやてはオレの子供を身篭ってしまったらしい。色男とは罪深いものだ」
ザフィーラが、やにさがった表情で自己陶酔している。
こいつの思考回路は別次元のおぞましさだ。
ヴィータは呆れた。だが今は誤解を解くほうに尽力すべきだろう。
「あたしはやってねえ。無実だ。だいいち証拠でもあるのかよ」
「ない。が、それはべつにどうでもいいことだ。私がおまえを犯人と断定した以上、おまえは犯人以外のなにものでもない。これは天地がひっくりかえっても覆らない不条理だ」
シグナムの理屈は最低だった。
脳が正常に機能しているかどうかも怪しい。
このヒトデナシめ! とヴィータは胸中でシグナムを罵った。
「ふたりの女子がオレをめぐって言い争っている。モテすぎるのも考えものだな」
凄まじい幻想力を発揮したザフィーラがひとりで苦悩している。
……こいつのことは、もう放っておこう。
ヴィータは頭の中からザフィーラの存在を締めだした。
「あたしよりも犯人っぽい奴なら他にいるだろ。たとえばシャマルとかさ」
「仲間に罪をかぶせようとするとは……ヴィータよ、おまえはそこまで堕ちたのか!」
溜息まじりに抗弁するヴィータに、シグナムが目を吊りあげて激語を放つ。
すると今度はヴィータの眉が危険な角度に吊りあがっていく。
「とくに理由もなくあたしを犯人だと決めつけてるおまえが言うなよ!」
「とうとう逆ギレしたか。よかろう。相手になってやる」
そうして互いのデバイスを鍔迫り合うヴィータとシグナム。
当然、この日もボランティア活動などできるはずがなかった。
ちなみに。
八神家のキッチンでは――
「ふふ、リリカルなのはの主役は、湖の騎士シャマルよ。邪魔者は同士討ちすればいい」
右手に怪しげな薬品の入った注射器を持つシャマルと、
「お、恐ろしい。シャマルが恐ろしいですぅ~」
ガクガク震えながら傍観するリインフォースⅡの姿があったという。
第二話(?)『混迷する八神家』
終わり。
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プロフィール
イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。
《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん
《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。
《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
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