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ヤガミケ!?

ひさしぶりにSSを更新します。
内容はギャグ。
というか、ただの悪ふざけです。
そしてタイトルは、いつものごとく適当。

と、話は変わって。
昨日から、女子バレーのワールドグランプリが始まりましたね。
全日本には、難しいだろうけど優勝してほしいです。
応援しています。


 新暦65年。海鳴市を舞台に繰り広げられた『闇の書事件』が終結。
 その後に管理局から保護観察を受けた『八神はやて』と『ヴォルケンリッター』たち。
 多くの罪を犯してしまった彼女たちは、その償いのために『あること』を決意する。
 それは世のため人のため、社会に対して『無償奉公』をすることであった。
 そして今ここに――八神家の面々による粉骨砕身のボランティア活動がはじまる。


 第一話(?)『はじけとぶ八神家』


「夏やッ!」

 はやてがハイテンションになって叫ぶ。

「暑いですぅ~」

 リインフォースⅡが扇風機の前でうめく。

「というわけで今夜は花火大会だな」

 シグナムが唐突に結びをつけた。

「なんだそりゃ? はやてとリインの会話のどこから花火なんて答えが導かれたんだよ」

 即座にツッコミを入れたのはヴィータである。
 屋内はただでさえ暑いのに、妙なことを言って興奮させないでほしい。
 もっとも、そんなヴィータの心の声は、烈火の将には届かない様子だった。

「……おいおいヴィータよ。その三つ編みは飾りか? 心を無にして受信してみろ」
「さっきからなに言ってんだよ? だいたいおまえ、そんなキャラじゃないだろ?」
「いいから目をつぶって受信してみろ!」

 シグナムがヒステリーを起こして喚いた。
 なんだこいつ。

「わ、わかったよ。目をつぶればいいんだな」

 なにひとつ納得していないヴィータだったが、とりあえず言われたとおりにしてみる。
 するとキッチンのほうから声が聞こえてきた。

「かき氷やッ!」

 はやての声だった。そしてなぜかテンションは異様に高い。

「うむ。つまりはそういうことだ。わかったか? ヴィータ」
「いや、ぜんぜんわかんねぇよ。ていうか、さっきと言ってること違うし」

 満足そうに腕組みをするシグナムに、ヴィータは瞼を開けながら溜息をつく。
 と、いきなりヴィータの眼前に、ガラスの器に盛られた粉雪の山が置かれる。

「かき氷やッ!」

 はやてだった。その動作は無駄にきびきびしている。

「ああ、サンキュ――って、なんだよこれ?」

 ヴィータの口があんぐりと開かれた。かき氷にはシロップがかかっていなかったのだ。
 もしかして生で食べろということだろうか。
 冗談じゃない。
 それでは雪を食べるのと同じではないか。
 ヴィータは目尻を吊りあげた。続いてクレームをつけようと身を乗りだす。
 ――そのとき。

「どうしたのヴィータちゃん? そんなに血相を変えて?」
「おおシャマルか。いいところに来た――って、なんだよその手に持ってるものは!」

 はやてに続いてキッチンから出てきたシャマルを見て、ヴィータは気色ばむ。
 シャマルの手には百円ショップで買ってきたとおぼしき「墨汁」が握られてたのだ。
 どうしてこのタイミングで、しかもこんな場違いなアイテムが登場したのだろう。
 最悪だ。嫌な予感しかしない。
 ヴィータの背中に側溝からあふれる水のごとく冷や汗が流れる。
 と、シャマルが優しく微笑みながら口を開いた。

「ザフィーラ。3時のおやつの時間ですよ~」

 シャマルが中庭にいるザフィーラを呼んだ。
 しかしヴィータの視線は、シャマルの手に釘付けだった。
 シャマルは、なんのためらいもなく墨汁を使用していたのである。
 ……かき氷に。
 たちまち黒く染まっていく粉雪の山。
 マジかよ。
 ヴィータは声もなく戦慄した。
 そんな彼女の背後から、野太い声が響きわたる。

「お、もうそんな時間か。なにかに熱中していると時が経つのは早いものだな」

 上半身裸のザフィーラ(人間形態)がリビングに戻ってきた。
 こいつは、朝鳥が鳴くよりも早くに起きてからずっと、庭で乾布摩擦(かんぷまさつ)をしていたのだ。
 バカである。
 だが、そんな愛すべからざるバカ野郎の前に、いま最大の試練が待ちうけていた。

「はい、これ。ザフィーラの分。はやてちゃんが手ずから削って制作した、かき氷よ」
「主はやて自ら? それは残すわけにはいかないな。で、このシロップは何味だ?」

 シャマルから黒い塊を受け取ったザフィーラが質問する。
 ――来た。
 ヴィータは固唾を呑んで事のなりゆきを見守る。
 間を置かずシャマルがにっこりと微笑んだ。

「味は『イカスミ』よ。あのフレンチの鉄人も推奨する極上の逸品なんだから」

 えっへんと得意そうに胸を張るシャマル。
 それを見たヴィータの顔色が真っ青になる。
 シャマルの奴、平然とウソつきやがった。
 あわあわと口を動かすヴィータを尻目に、ザフィーラが感心の吐息をこぼす。

「ほう、イカスミとな? それは美味そうだ。……いただこう」

 礼を言いながら『イカスミかき氷もどき』を食べはじめるザフィーラ。
 やめてくれぇぇぇぇぇぇ――。
 ヴィータは心の中で絶叫する。同時に、自分の分のかき氷を猛然と食べはじめた。
 墨汁を食べさせられるくらいなら、味がなくても氷のまま食べた方がマシだ。

「どうしたヴィータ? シロップはかけなくていいのか?」

 シグナムの声。
 彼女もまた、かき氷を食べていた。……イチゴのシロップをかけて。
 ヴィータの目がこぼれんばかりに見開かれる。

「なッ――なんでイチゴのシロップ? 墨汁じゃねえの?」
「なにを言ってるんだ? かき氷に墨汁をかけて食べる奴がどこにいる」

 ザフィーラを見てください。
 ほら、黒いものを食べているでしょう。
 そう視線でうながすヴィータ。
 しかしアイコンタクトによる意思疎通など、シグナムには望むべくもなかった。
 シグナムは一心不乱に、かき氷を食べ進めている。
 騎士の魂であるレヴァンティンをスプーンのように使って。
 烈火の将も、暑さのせいで頭が沸いたのだろうか。
 あきらかに尋常な挙措ではない。
 呆気にとられるヴィータを意にも介さず、シグナムは口をもぐもぐ動かしながら喋る。

「いいかげん話を元に戻そう。たしか花火大会についてだったな。リイン、説明を」
「は、ははは、はいですぅ~」

 応じたリインの声は震えていた。
 いや、小さな体すべてを震わせている。
 あいにく武者震いの類ではない。
 かき氷の食いすぎであった。
 その原因は以下のとおり。
 リインが食べ終わった矢先に、新たな氷が次から次へと投入されていったからだ。
 ほくそ笑みを浮かべるシャマルの手によって。
 ザフィーラをあざむき、リインをたぶらかす、その恐るべきITAZURAGOKORO。
 極楽トンボみたいな顔をしているくせに、その心は悪魔のような女であった。
 ていうか、リインも無理して食べなくていいのに……

「わたしたちは世界の平和のために働かないといけないのです。
 だから夏は、みんなに喜んでもらうために花火大会を開かないといけないのです。
 それがわたしたちの使命。ボランティア戦士の闘争なのです!」

 ぎゅっと拳を握りしめて力説するリイン。
 かわいい仕草だ。台詞の内容のバカさ加減に目をつぶれば。
 これがザフィーラなら、ただ犬臭いだけだったろう。
 シグナムもダメだ。烈火の将には萌えが足りない。
 シャマルは笑顔でなにをするかわからない魔女だ。論ずるにあたいしない。
 はやては……まあ、べつにどうでもいい。
 リインの話を適当に聞き流しながら、ヴィータはかき氷を食べ終わる。
 結局、シロップもなにもかけないまま完食してしまった。
 ううぅ、無味はツライ……

「でも花火大会を開くなんて無理だろ。たぶん申請書を出しても受理されないぞ」
「そんなものは必要ない。家庭用の花火を打ち上げるのに、いちいち許可など取るか?」

 ヴィータの言葉に、シグナムが淡々と応じる。
 その途端、ヴィータは拍子抜けした。
 なるほど。つまり家族で花火がしたいだけだったのか。
 真剣に考えて損した気分。

「なんだ。家庭でする花火かよ。大会なんていうから仰々しく考えちまったじゃねぇか」
「そう、家庭でする花火だ。我々が自力で火花を散らしたり爆発させたりするのだ」

 ……ん。
 いま聞き捨てならない台詞を耳にした。
 ひたひたと足音をたてて忍び寄ってくる不穏な気配。
 ああ。目の前の気取ったポニーテールを、KOFの紅丸みたいな髪型にしてやりたい。
 ヴィータはおそるおそる確認する。

「自力でって……もしかして魔法を使うつもりか?」
「むろんだ。ガチンコでやるぞ」
「なにをだよ」
「私の紫電一閃を、おまえが真正面から受け止めるのだ。
 それで火花を散らしたり爆発させたりする。
 どうだ。我々にしかできない花火だろう?」

 ヴィータの脳裏に狂気じみた考えが浮かぶ。
 つまりこういうことか。

「……おまえの必殺技をまともに喰らえってことか?」
「心配するな。私たちには名医がついている。――シャマル」
「は~い。湖の騎士シャマルさんにおまかせよ。なんでも治してあげるわ」

 シグナムに呼ばれてシャマルが登場する。
 すこぶる機嫌がよさそうだ。
 赤毛を逆立てるヴィータとは対照的に。

「ふざけんな! その手に持ってるのは『キンカン』じゃねえか!」
「あら? キンカンじゃ不服?」
「たりめぇだ……いや違う。花火の仕方そのものに異議ありだ!」

 当然の答えだった。
 なぜなら命がいくつあっても足りないからだ。
 間違ったことは言っていないはず。
 だというのに……
 なんだ、この微妙にしらけた空気は。
 そんなふうにヴィータが戸惑っていると、シグナムがさも呆れたように溜息をつく。

「やれやれ。鉄槌の騎士がそんな腰抜けだったとは……見損なったぞ」
「ほんとうに。だからヴィータちゃんの目はアーモンド形なのよ」
「背は小さいけど器量は大きい人だと思っていたのに……幻滅したです」
「胸は断崖絶壁だしな。――ハッ! まさか火スペに出演するつもりか? 断崖役で」

 シグナムに続き、シャマル、リイン、ザフィーラが口々に文句をぶつけてくる。
 なんだかよくわからんが、とにかく悪口を言われていることだけは確からしい。
 次の瞬間、ヴィータの沸点は限界を超えた。

「て、てめぇら……みんなまとめて叩き潰してやる!
 とくにザフィーラ! てめえの頭は絶対にぶっ飛ばす!」
「ふふ。この私と『つかまえてごらんなさ~い』をやるつもりかね?
 いいだろう。ならさっそく海岸に移動だ。――カモン!」

 ばたばたと駆け出すザフィーラ。
 それを猛然と追いかけるヴィータ。
 当然、魔力を使い切った二人のせいで、花火大会うんぬんは画餅に帰すことになる。
 この日の結論。
 ボランティア活動も楽ではないらしい。
 まあ、それらしいことは微塵もしなかったが……

 

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HN:
イヒダリ彰人
性別:
男性
趣味:
立ち読み、小説を書くこと
自己紹介:

イヒダリ彰人(あきひと)。
北海道に棲息する素人もの書き。
逃げ足はメタルスライムよりも速い。
でも執筆速度はカメのように遅い。
筆力が上がる魔法があればいいと常々思ってる。
目標は『見える、聞こえる、触れられる』小説を描くこと。

《尊敬する作家》
吉田直さん、久美沙織さん、冲方丁さん、渡瀬草一郎さん

《なのは属性》
知らないうちに『アリすず』に染まっていました。
でも最近は『八神家の人たち』も気になっています。
なにげにザフィーラの書きやすさは異常。
『燃え』と『萌え』をこよなく愛してます。

《ブログについて》
魔法少女リリカルなのはの二次創作小説を中心に掲載するサイト。
イヒダリ彰人の妄想をただひたすらに書きつらねていきます。
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